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1イニングのエース  作者: 冬野俊
シーズン開幕
129/171

ワンポイント

森国の選手復帰はレッドスターズの選手たちにも大きな驚きを与えた。

その時、相沢や栃谷、鮫島、藤堂ら何人かの選手は球団事務所のミーティングルームでその中継を見守り、様子を伺っていた。


「選手として復帰って事は、監督兼選手って事かな?」


栃谷の言葉には少し喜びが滲んでいるように感じられた。何故なら、昨シーズンまで森国と共にプレーしていた選手たちは、その打撃や守備に対する信頼感を肌で経験しているからだった。


「まあ、そういうことになるんじゃないかな?ただ、監督の言う選手復帰は相当に大変なことだと思う」


相沢は栃谷の疑問にそう答えた。


一言に監督兼選手と言っても形は様々だ。チームのことを考えながら、自分のプレーのことも考えなければならない。


そして恐らく、森国の目指すべき監督兼選手とは、試合にフル出場し、結果をきっちり残した上で、監督業もパーフェクトに行うという事だと相沢は判断した。


だからこそ、森国は悩んだ。最早、背に腹はかえられぬというギリギリまでタイミングを待っていたのだ。


だが、森国が復帰するとなれば打線は確実に厚みが出る。昨年まで森国とフランケルの三、四番コンビは不動のもので、やはり現在の順位から優勝を狙うとなると、森国の勝負強さと打撃力はどうしても欲しい。


「これで今シーズン不調な打撃はいくらか希望が見えてきましたけど、投手陣についてはやっぱり厳しいですよね。何より少ない人数でやりくりしてる感じがぬぐえませんけど。相沢さんはどう考えてます?」


鮫島がそういうのは最もだった。藤堂とウィル、桜井と力のある投手はいるがローテーションの感覚はかなりみっちりと詰まっており、疲労の蓄積は否めない。しかもまだシーズン序盤なのだから、ここから秋までのシーズンを戦い抜くために不安は否めなかった。


「監督もそれにはかなり悩んでいると思う。僕も先発をしてくれと頼まれたぐらいだから」


「先発ですか。いいじゃないですか。チームのことを考えても、それはかなりプラスに作用すると思いますよ。でも、その場合リリーフをどうするのかが問題だと思いますが」


藤堂はそう言ったが、相沢は「あ、違うんだ」と思いついたように言った。


「確かにこれまではリードしている最終回に投げる事が多かったけど、僕は、リリーフじゃないんだよ。そうだな…分かりやすく言えばワンポイントかな」


「ワンポイント、ですか?」


「うん、細かく言うとややこしくなるから説明は省くけど、契約ではそういう事になってるからさ。もし、僕が先発なんてしたら、それこそ滅多打ちに合うよ。プロでの経験も今シーズンまでなかったんだし。その点から言えば、森国監督のワンポイントという提案は、間違っていなかったと僕は思っている」


「そうなんですか。でも、そうなると今シーズンは、ローテーションの問題は解決しないんですかね?」


「今いる人材で、ローテーションを埋めるとしたら…かなり厳しいだろうね」


相沢はテレビで会見する森国を眺めながら、そう呟いた。




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