巻き返しに向けて
ダイヤモンズ三連戦は結局、初戦の桜井の勝利のみで、残り2戦はいずれも5点以上の差を付けられての大敗。相沢が登板する機会は無かった。森国は相沢に先発の提案をしたものの、相沢から諌められたことで、冷静さを取り戻し、これまでの方針を変えずに臨んだのだ。
もし、相沢を先発に起用するならば、他のチームのどの監督であってもこのタイミングではないだろう。森国も分かってはいたものの、気が焦っていた部分は少なからずあった。
ただ、相沢と田中の意見で、一つの決心がついたことは間違いない。
現在は五月中旬であり、未だに最下位ではあるものの、巻き返しが不可能な時期ではない。
「それならば一刻も早く手を打たないと」
そう考えた森国は、球団の広報に「記者会見を開きたい」との旨を伝えた。
内容について広報が尋ねたものの、「記者会見まで内容については伏せたい。何故ならもしかすれば、状況が会見までに変わる可能性があるからだ」とだけ答えた。
会見は五月二十一日、広島市内のホテルで開かれることになった。会見までに三日ばかりあるが、その間になんとか現状を打破する策を、森国は見出したかった。
田中の指摘にあった「打線の貧弱さ」。そこを補うことは優勝に向けて必須だった。
「誰か、居ないのか?」
森国は虚空に向かってそう呟いていた。




