ウィルとフランケル 1
「最近どうしたんだ?調子が優れないじゃないか?」
フランケルが気にかけていたのは、同じ外国人選手のウィルだった。
二人ともにメジャー経験者であり、米国出身。ウィルが加入してからというもの、生活面からチームのことについてまで、フランケルが何かと世話をしていた。
「ああ、フランケル。そんな事はないよ。調子はいいんだ」
「そうは言っても、この前から惜しいところでホームランを打たれたり、フォアボールを出したりして、勝てていないだろう」
確かにそうだった。ウィルはここに試合でいずれも逆転負け。しかも完投目前の終盤で崩れたのだった。
「あれは、その…」
煮え切らない態度にフランケルが「何だよ、はっきり言えよ」と促す。
「実は、食べ物がどうしてもさ、合わないんだ」
外国人選手にとってこれは大きな問題なのだ。フランケルの場合は妻がアメリカでの料理を日本でも作ってくれていたため、影響は無かったが、独身のウィルは料理をすることもほとんどなく、外食で済ませることが多かった。
「オーケー、分かった。それじゃあ、今一番食べたいものを言ってくれ」
フランケルの言葉にウィルは「ミートパイが食べたい」と答えた。おそらく、それがウィルにとってのソウルフードなのだろうと。
フランケルは「来週のオフの日にうちに招待する」とウィルに告げた。そして、ウィルと別れたフランケルは自宅に戻ると、すぐさまある所に電話をしたのだった。




