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1イニングのエース  作者: 冬野俊
シーズン開幕
119/171

魔球の分析

 丁度その頃、ダイヤモンズ側では主要メンバーが集まっての会議が開かれていた。

「どうだ、分析班はある程度予測がついたのか?」

 監督である灯明寺が質問したのは、データ分析係のリーダー、横山だった。

「いえ、ある程度、どのようなものかという仮説は立てられたのですが…」


 灯明寺が指摘したのは、レッドスターズの相沢が持つあの『魔球』についてである。シーズンはまだ序盤で時間はあるが、少しでも早くその正体について真相を突き止めたかった。


 それも、ダイヤモンズだけではなく、他のチームも同じようにデータ分析を進めていたが、その謎を解き明かしたとの情報はまだ入ってきてはいなかった。


「その仮説というのは?」


 横山は納得のいかない表情で答える。


「これは、あくまで仮説です。ビデオを分析しても直球と同じ軌道にしか見えませんし、うちのチームの打者からの情報だけに基づいて考えて居ますので…」


 灯明寺が、その回りくどい言い方に苛立ちを見せる。


「そんな事よりも、早く仮説を言ってくれないか」


 声は冷静な響きだが、その裏側に隠れている不機嫌さは周囲から見てもすぐに分かった。


「わ、分かりました。それでは説明しますと、端的に言えばあのボールは『真っ直ぐに見えるフォーク』ではないかと。さらに分かりやすく言えば、直線フォークとでも言いますか」

「と、言うと?」

 灯明寺は眉間にしわを寄せて、横山へとさらなる説明を促す。


「軌道は真っ直ぐですが、ボールに急激なブレーキがかかるのではと。本来のフォークであれば回転がほとんどないため、ブレーキがかかった瞬間に空気抵抗を受けて急激に落下します。ただ、直線フォークの場合はスピードが落ちても真っ直ぐに進んでいるのか、それとも減速がバッターに限りなく近い場所で起きるため、落下する前にバットに当たってしまうのか、それは不明です」


「なるほど。面白い仮説だ。打者のタイミングがずれている理由も納得できる。ただ、『落ちないフォーク』なんてものはどうすれば投げられるんだ?」


 灯明寺の問いかけに横山は「そこまでは分かりません」と答えるのが精一杯だった。


「なるほど。もう少し仮説の検証が必要かもな」


 灯明寺は何かを含んだような言い方で微笑みを浮かべた。

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