森国の思案
相沢はそのまま、取り立てて何かを話すわけでもなく森国の居た部屋から出て行った。
森国にも相沢が何かを考えていることは分かったが、纏まらなかったのだろう。森国自身も相沢の言葉に考える部分があったが、明確な答えは出なかった。
森国は早速、田中にデータ分析を頼むためにその場で電話を掛けた。
「チームは苦しんでるみたいですね」
そう言った田中は森国のデータ分析の願いを快く引き受けた。
「ただ、ちょっと時間がかかるかもしれませんから、明日、明後日って訳にはいかないと思いますが」
「別に良いさ。なるべく早くお願いしたい気持ちもあるが、田中が仕事で忙しいことも理解している。出来る限りの範囲で良いから」
「分かりました」と答える田中に、森国はふと質問をしてみた。
「なあ、田中…」
「はい? 何ですか?」
「もしも、お前がレッドスターズのコーチだったとして、今のチームに足りないものって、何だと思う?」
田中は考えた。その間、森国はじっと返事を待った。
「何がって言われると難しいですけど、自分としては打線がとにかく弱いと思います。まあ、投手もローテーションが厳しい中で大変だと思いますけどね。打線が大量点を取ることができれば投手も楽になりますから」
その意見は森国が気にかかって居たことと同じだった。
そして、この時、森国はある一つの決断をしたのである。




