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1イニングのエース  作者: 冬野俊
シーズン開幕
117/171

先発提案

相沢と栃谷、鮫島の三人は球団事務所にいた森国にある訴えを行なった。


「まあ、ここまで説明した通り、何かがうまく噛み合ってないような気がするんですよ。だから、その辺をですね、分析していただけるように頼んでもらえないかと」


相沢の提案はこうだった。試合の中で違和感はあるが、何が上手くいっていないのかは今の所、分からない。だからこそ、その専門家にこれまでの試合のデータ分析をしてもらえないかと。


「頼むって誰にだ?」


森国はまだピンときていないようだった。


「開幕の時にデータ分析のノートを作ってくれた田中さんにですよ」


森国はようやく納得のいく表情を浮かべ、三人が自身のところに来た理由が分かった。


「そういう事か。ああ、分かったよ。あいつも忙しいだろうが、一度頼んでみよう」


「ありがとうございます」と頭を下げた三人はそのまま部屋を出ようとしたが、森国は相沢だけ残るようにと言った。


栃谷と鮫島が部屋を出たところで、森国は相沢に対して口を開いた。


「すまない。ちょっと別件で話したいことがあってな」


「どうかしたんですか?」


「一つ頼みたいことがあるんだが…」


「何ですか?私にできることならやれるだけの事はやりますが」


森国は胸の前で両掌を組み合わせながら考えを相沢に伝える。



「明日の三連戦最終戦だが、先発してもらうわけにはいかないか?明日だけでいい!」



森国は深く悩んだようだった。

相変わらずレッドスターズのローテーション事情は苦しく、もう一人先発投手が欲しい内情なのは間違いなかった。

本当にその考えが正しいのかは、森国には分からなかったが、そんなことは一切関係なく、相沢の答えはすでに決まっていた。



「もし自分が先発してしまえば、長い回を投げなければならず、あのボールの秘密が他チームに分析される可能性も高まります。それでも良いんですか?」


森国は押し黙ってしまった。


先々のことを考えれば相沢を先発に使うべきではない。それは明白だ。


ならばどうする?二軍から投手をもう一人引き上げるか。それとも…。


向かい合ったまま、二人はお互いに考え事を始めてしまい、しばらくその場から動くことはなかった。

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