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1イニングのエース  作者: 冬野俊
シーズン開幕
116/171

歯車

対ダイヤモンズ三連戦の初戦翌日。桜井の苦悩を余所目に、各スポーツ紙は桜井の日本球界復活初戦の勝利を取り上げていた。


中には羽柴への連続敬遠について疑問を呈する物もあったが、扱いは極々小さなもので、そのほとんどが鮮烈的な復活劇を一面で取り上げていた。


「相沢さん、桜井さんの投球はどうでした?」


球場での練習を前に、ロッカールームでそう声を上げたのは栃谷だった。桜井をグラウンドで間近に見ていて、その投球のレベルの高さを肌で感じたはずだが、あえて同じ投手の相沢にも感想を聞きたかったのだろう。


「いや、どうでしたって、凄かったよ」


「そんな曖昧な感じじゃなくて、具体的にどう凄かったかって事ですよ」


「うーん、なんというかコントロールが良いのは勿論なんだけど、投球術、と言うか打者との駆け引きが物凄く上手いんだな、とは感じたね」


「これで、ちょっとはチームが勝てるようになりますかね?」


相沢の表情が曇る。


「坂之上さんの抜けた部分は大きいからね」


もしも桜井と坂之上の二人がローテーションに入っていれば、チームは確実に優勝に近づいたはずだ。だが、今は桜井が戻ってきた事に喜ぶ一方で、その坂之上の離脱がチームの精神的な不安に繋がっていた。


ここ10試合でサヨナラ負けが三試合、序盤リードの逆転負けが三試合と、レッドスターズの歯車は噛み合っていなかった。選手たちはこのままではシーズン終盤までこの悪い流れが断ち切れないのではとさえ思えるほどだった。


前日の桜井の勝利は確実にレッドスターズに追い風となったが、桜井一人が結果を残しても、優勝できるとは限らないのが野球だ。



「とりあえず、今のチームの何が噛み合ってないのかを考えるのが大事な気がしますけど」


そう言って二人の会話に入ってきたのは鮫島だった。


「そうなんだよね。誰かが明らかに足を引っ張っているというわけでもないんだけど、流れが良くないような感じだよね」


相沢には、目に見えない引っ掛かりのような違和感が胸の奥にあったのだった。



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