表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1イニングのエース  作者: 冬野俊
シーズン開幕
115/171

苦杯

「敬遠か…お前も変わったな」


試合後、球場の外で桜井を待って居たのは羽柴だった。羽柴が微笑みを浮かべながらそう、声を掛けると、ようやく気付いた桜井は動揺することなく答えた。


「待ってたのか」


「ああ、一言歓迎の挨拶を言おうと思ってな。それにしても、ホームランの後は全打席敬遠とはな。昔のお前なら絶対に全打席とも勝負して居たはずなのにな」


羽柴は腕を組み、桜井の目をじっと見つめながら、嫌味なく、そう伝える。


「これも、アメリカで生き残るために気付いたことだ。自分の勝負より、チームが勝つことを最優先するようになったんだよ」


そう言いながらも、桜井の心中は穏やかではなかった。投手というものは、プライドの塊で出来ている生き物だ。一度ならまだしも、自ら何度も敬遠を選択するということは、その打者に対する実質的な敗北宣言となる。


「だが、そんな投球でこれからもうちのチームに勝てるとは思わない方がいいぜ。四番を打ち取れない投手だと分かれば、それだけでチームは精神的に有利になるもんだ」


桜井には返す言葉が無かった。


「まあ、せいぜい頑張れよ。次の対戦を楽しみにしてるからな」


そう言いながら、羽柴は桜井に背を向けて球場を後にした。


確かに、メジャーでいくら結果を残しても、相手からすれば、こんな投手が怖いわけがない。逆に言えば、ダイヤモンズの精神的な柱は羽柴だ。羽柴を完璧に抑え込められれば、試合はさらに有利に運べる。


「だが、羽柴への対策と言っても…」


桜井はその対処法の事だけを考えながら帰宅の途に着いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ