桜井の選択
桜井は二回に羽柴からソロホームランを浴びたものの、その他の打者に対してはいたって落ち着いていた。言ってしまえば、羽柴が超メジャー級なだけであり、桜井の経験からは、その他の打者は取るに足らないほどの存在だった。
それでも桜井は気を抜かない。どんな打者に対しても丁寧に投げた。
その隙のなさこそが桜井をメジャーでも通用させた一番の要因かもしれない。
レッドスターズは三回、二死三塁とチャンスを作り、鮫島のレフト前タイムリーで同点に追いついた。
迎えた四回。
桜井の前に再び羽柴が立った。
悠然と構える羽柴に対し、桜井は一つの選択を迫られていた。
勝負か、敬遠か。
おもむろに立ち上がったのはキャッチャーの蔵前だった。
桜井は表情を変えずに、蔵前のサインに同意する。
そして、羽柴を歩かせたのだった。
だが、この選択こそ正解だった。
桜井はこの日、四度打席に立った羽柴に対し、二打席目以降は全て敬遠を選択した。
そして、羽柴以外の全ての打者を三振か凡打に打ち取ったのだった。
結果的には、許したのは羽柴のソロ本塁打と敬遠の走者だけ。ダイヤモンズ打線を1得点に抑え、完投でチームの勝利に貢献したのだった。




