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1イニングのエース  作者: 冬野俊
シーズン開幕
113/171

ライバルとの戦い 4

投球モーションに入ってから、実際にボールを投げるまでの時間はわずか数秒。


だが、桜井には広島ドームのマウンドの感触を感じる余裕があった。マウンドだけではない。足から腰、胴体、肩、腕、そして最後にリリースするときの指先と、スムーズに力が伝わって行くのを体感していた。


ボールの、指への掛かりも良い。


そこから一瞬でボールは蔵前のミットへと収まった。



しかも、ただ収まっただけではない。



打席に立っていた羽柴のバットは空を切り、羽柴自身も体勢を崩していた。



ここで、桜井の予感は確信へと変わる。



今のボールは羽柴の予想を上回る球だった、という確信だ。


そうでなければ、あの羽柴が空振りであそこまで蹌踉めくはずがない。


「と、なれば」


桜井にある種の自信のようなものが湧いてくる。

確かに羽柴は天才的な打者だ。一方でこちらはメジャーをクビになる、ただそこまでの選手だ。それでも羽柴と対等に戦えるだけの成長はしていたのだと。



2球目。



再びストレートのサインに頷く桜井。



桜井の右腕から放たれたボール。


そして。


桜井には何が起きたのかは分からなかった。



おそらく、そのボールはこの日一番のストレートになるはずだった。


内角低めへと投げ込まれたボールが、気づけば外野スタンドのさらに上を超えていったのだ。


「スイングが見えなかった」



桜井のその言葉に嘘はなかった。


おそらくメジャーで対戦してきたどの打者よりも早いスイングスピードと、内角低めのあの速球をきっちりと捉えるミート力は優れている。



桜井はもう脱帽するしかなかった。

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