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第二話 忘れぬ過去

忘れていたかった。だけど、今この瞬間、その記憶が蘇ってくるようだった・・・

まるで彼女に忘れるなと言われているように・・・


ーーーーー時は(さかのぼ)り、中学二年の夏の頃だった。


「光輝~・・・ねぇ、光輝ったら!!」

「なんだよ朝からうるs・・・」

「ん?何か言った?」

「あ、いや・・・何でもねぇよ・・・」


朝っぱらから教室で俺に話しかけてくるのは野島遥華(のじまはるか)。俺と同じ2-C組のクラスメイトであり、俺の幼馴染であり、唯一の親友でもあった。


「全く・・・また夜遅くまで起きてたんでしょ」

「おい、お前が言うな!俺が寝てる時に『寝れないから話付き合ってよ・・・』って電話してきた奴は誰だよ!」

「テヘッ☆」

「テヘッじゃねぇよ馬鹿・・・」


俺は掌で遥華の頭を軽く叩いた。


「痛った・・・叩かなくても良いじゃん・・・」

「悪かったよ・・・」

「はぁ仕方ないな・・・帰りにジュース奢ってくれるなら許してあげる!!」

「お前な・・・分かったよ・・・」


こんな日々を繰り返していたが、それが何より俺にとっては幸せだった。

だけど、ある日を境にそんな幸せな日々は変わってしまった・・・


ーーーーーそれは思い出したくもない夏休み、塾帰りの時だった。

帰り道の周りには畑が広がっており、案山子(かかし)も立っていた。畑には雑草が多く生えているが、それ以外には遮蔽物は無く見通しが良い。ただ田舎のせいか、夕方には人通りが少なくなる。勿論、塾帰りの俺達が帰る時には既に外は薄暗かった。


「はぁ~やっと終わった・・・」


ここぞとばかり大きく背伸びをする遥華。


「お疲れ、今日も相変わらず長かったよな・・・」


そんな感じで遥華と話しながらいつもの帰宅路を歩く。

今日は俺も勉強で頭をフルに使った為、かなり疲労が溜まっていた。

そんな時にいきなり遥華が俺に話してくる。


「ねぇ光輝、久しぶりにかくれんぼしない?」

「はぁ!?何でいきなりかくれんぼなんだよ」

「良いじゃん!ここなら広そうだし」

「確かに広いけどさ、もう日が暮れるし明日にしたらいいだろ」

(本当は疲れてるから早く家に帰りたいだけなんだけど・・・)

「えぇ・・・一回だけで良いからさ!お願い!」

「お前な・・・てか何でそんなにかくれんぼがしたいんだよ」

「え!?それは・・・こ、この場所、何か広そうでしょ!だからやりたくなっただけ!!」

「なんだよそれ・・・」

「と、とにかく理由なんて無いの!ただやりたくなっただけ!」

「理由ないのかよ・・・」


俺は遥華のわがままに仕方なく付きあい、二人でかくれんぼを始めた。


「で、鬼は誰がやるんだ?」

「じゃあジャンケンで決めよ!」


俺と遥華はお互いにじゃんけんをした。

その結果、俺がパーを出し遥華がチョキを出し、俺が鬼になった。


「負けた・・・」

「光輝が鬼だね!隠れる所は大体畑がある周辺にしよっか!じゃあ私隠れるから10秒だったら探しに来てね!」


そう言いつつ遥華は俺を後ろに向かせ行ってしまった。


(勝って休みたかったな・・・)


そう思いながら俺は10秒数え遥華を探しに向かった。


「・・・8、9、10、よし行くか!」


俺は早く帰りたかった為、遥華を全力で探した。

しかし、木の裏や小屋の周りなど、遥華が隠れそうな場所を(しらみ)潰しに探したが、遥華は見つからなかった。


「アイツ何処隠れたんだよ・・・」


こんなに探しても遥華の影一つすら見つからない。


「見つからないな・・・何か疲れたし、一旦休憩するか」


疲れきった俺は近くにある大きな樹木の傍にあるベンチに座って休憩をする事にした。


「はぁ・・・遥華には悪いが暫く休ませてもらうか・・・」


そして俺は休憩を始めて暫く、眠りに落ちてしまった。


(・・・ん、寝てたのか俺・・・)


時間としてはほんの数十分だっただろう、

俺は夕方の肌寒さに目を覚ました。


「うぅ寒いな・・・あ、かくれんぼ!」


完全に目が覚めた俺は、遥華とかくれんぼをしていた事を思い出し畑に戻ろうとした、その時だった。


「きゃあっ!?やめて!!」


突然畑の方から女の子と思われる声が聞こえてきた。


(ッ!?この声は・・・遥華!?)


俺は遥華の身に何かが起こっていると確信し、畑の方に全力で走った。


「はぁはぁ・・・遥華・・・くそっ!!」


暫く全力で走っていると目の前に畑が見えてきた。そこには黒いワゴン車のような車があり、その側には黒い服装の男が二人、そして、その男達は遥華を無理矢理車に入れようとしている所だった。


「遥華!?・・・ぁぁぁ!!」


俺は怒りや悔しさなどの感情が入り混じりながら遥華の元に走った。


「おい、来たぞ」

「あぁ、分かってる」


俺の声に気付いた男達は遥華に何かを嗅がせ、遥華を素早くワゴン車に入れた。


「クソッ!間に合え!!」


俺は遥華が乗せられたワゴン車に向かって走る。だが、ワゴン車は待つわけもなく、走り出してしまった。


「待てよ!!・・・待ってくれよ・・・遥華・・・」


俺は走り出したワゴン車をただ、後ろから見る事しか出来なかった。


「はぁ・・・はぁ・・・遥華・・・」


俺は遥華が連れ去られた場所で膝から倒れ落ち、泣いていた。その声は虚しくも鴉の声に掻き消されてしまった。

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