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魔王様の災難

魔王様面接ですよ

作者: 三堂いつち

「魔王様、これからお仕事ですか?」

「ええ、まぁ」


 ここは魔王城の執務室。魔王に問いかけたのは人間の国の姫。


 なぜこんなところに姫がいるのか。それは魔王が姫をさらった、からではなく人間の国が戦争の理由に送ったからである。ふざけた理由で送られた姫だが、姫はそんな自分の置かれた状況をつゆほど知らない。そんな国に姫を返すことも如何いかがかということで、城で暮らしてもらっているのが現状である。ちなみに姫は旅行だと思っている(魔王がそう吹き込んだ訳ではない)。


「けど今日は書類じゃないんですね?」

「ええ、今日は採用面接のや面接官をやるんです。今いる人より真面目な人が欲しくて」


 魔王は溜息をきながら言う。現在、魔王城に勤めている人員の大半は、隙あらば魔王に仕事を押し付けるような者ばかりなのだ。それでもやるべき時はやってくれる者達なのでそれ程困ってはいない。


 だが魔王が新しい人員を求めるのは、


「彼らを見張る人が欲しいんですよ」


 これが理由だ。魔王は自分の仕事(押し付けられた分も)で忙しい。故に彼らがサボらないように見張る人物が必要なのだ。


「魔王様は大変なのですね」

「そう……ですかね?」


 魔王は自分の置かれている現状に不満はない。魔王は仕事が好きで、いい仲間達にも恵まれていると思っているからだ。強いて言うならもう少し真面目さが欲しい、それ位である。


「だって魔王様は何時いつもお仕事をしているではないですか」

「そんなに仕事してるつもりはないのですが……」

「いーえ、魔王様は働き過ぎですよ」


 いくら天然な姫でも、今言っていることは正しい。魔王は部下の分の仕事も難なくこなす。ただ魔王のキャパシティが計り知れないだけで、はたから見れば働き過ぎなのだ。


「そうだ!」

「?」


 姫は何か良いことを思いついたように手を合わせた。


「私も面接官と言うのをやれば魔王様への負担も少なくなるのではないですか?」

「いや……姫、それはさすがに……」


 名案とは言えない。が、姫の笑顔が純粋で眩しくて指摘ができない。しかし、この天然姫を面接官にしたら、と思うと不安しかでない。


「あの、姫?さっきの言いようだと面接官がなんなのか分かってらっしゃらない、ですよね?」


 心を鬼にして魔王は姫を止めることにした。


「ええ。でも説明していただけたら大丈夫です(ドヤァ)」


 姫は得意気に言う。それに魔王は頭を抱える。“なんか説得しても無理な気がする”と。




 その時ノックの音が魔王の執務室に転がった。


「入ってくれ」


 魔王がそう声をかけると、執務室のドアが開き「失礼します」と言いながら1人の少年が入ってきた。


「そろそろ面接の時間ですよ」


 彼は宰相。魔王の右腕と称えられる程に有能な人物、などと言われているが実態はサボリ魔だ。しかしこの様に魔王への言伝や呼び出しなどは進んでやるという不思議な少年でもある。


「分かった、今い……」

「すぐ行きますね」


 宰相の呼び出しに魔王が応える、がそれを遮って姫が応える。


「おや、姫様も面接に参加されるので?」

「ええ、少しでも魔王様のお役にと思って」

「そうですか(笑)。いやー、魔王様は幸せ者ですね」


 魔王を置いてけぼりに、姫と宰相は話し始める。どうやらこの2人は気が合うらしい、と前々から魔王は思っていた。そして姫の面接参加が決まってしまった。


「じゃあ行きましょうか。魔王様、いつまで座ってるんです?姫様はもう立っているのに」

「え?ああ、すまん。……ん?」


 魔王は一抹の疑問を感じながら立ち上がった。




 ▽面接室


「本当に姫様も参加するんですね……」

「ええ、もちろん!」


 魔王と姫、そして宰相は面接室で横長の机を前にに座っていた。そして、少し距離を置いたところに一脚の椅子。まさしく面接そのものである。


「で、宰相はなにを?」

「オーディションといえばサングラスは当たり前でしょ」

「いやこれ面接……」


 今は魔王を真ん中に右隣りに姫、左隣に宰相という並びで座っている。そして何故か宰相はサングラスをしているので魔王が指摘したら、明後日の回答が返ってきたので、ツッコミながらも魔王は諦めた。


「おや、最初の人が来たみたいですね」


 宰相が言うように面接室の外から足音が聞こえてきた。


 コンコンコン


「どうぞ」


 ノック。面接の基本の所作であるソレが面接室に転がる。そしてそれを確認した魔王が入室を促す。


「失礼します」


 そう言いながら1匹のスライムがはいってきた。スライムは一礼?し、椅子の近くに移動する。


「スライムです。本日はよろしくお願いします」


 ハキハキとした声で自己紹介をするスライム。ここまでは好印象だ。


 スライムが再び一礼?をしたので、魔王は椅子に座ることを促す。


「じゃあ、とりあえず出来ることや自信のあることがあるなら言ってください」


 宰相は机に肩肘を乗せ、もう一方の手にペンを持ちながらスライムに問う。


「はい。私は形を自由に変えることが出来ます」


 スライムはまたもハキハキした声で言う。しかしそれに宰相が厳しい指摘をいれる。


「それスライムなら出来て当然じゃないの?そういう有り触れたものじゃなくて、個々としての能力を聞いてるんだよ。君は「何が出来るの?」って聞かれて「目が見えます」って言うのかい?言わないだろう?」


 この指摘を受けて目に見えるほどに、スライムはショックを受けた。しかし、ここでめげるようならこの城ではやっていけない。「このスライムはここでは無理だな」、と宰相は心の中で判断した。


 その後は取り留めのない質疑応答をし、スライムの面接を終えた。


 この面接で姫は終始笑顔だったという。



 ・

 ・

 ・


「宰相、ちょっとキツ過ぎないか?」

「そうですかね?あれ位流す様なメンタルでなければこの城では働けませんよ」

「それは……」

「おや、次の人が来たみたいですね」


 魔王の次の言葉を遮り、宰相が言う。その言葉の通り、部屋の外から足音が聞こえる。


 ノックを確認し入室を促すと、煌びやかな剣を携えた青年が面接室に入ってきた。


「失礼する」


 青年はよく通る声で言うと、椅子の隣に移動した。


「勇者だ。よろしく頼む」


 この男は聖剣の勇者。魔王討伐の為に城に乗り込んだは良いが、ニアミスやすれ違い、行き違いで魔王に会えなかった残念な勇者である。


 そんな勇者が何故魔王城の面接に参加しているのか。それを考えながら魔王は焦っていた。下手をすれば殺されるからだ。


「この面接では魔王が面接官をすると聞いたのでな、参加したのだが……」

「あ、魔王様なら僕の右隣りにいるこの人ですよ」

「ちょっ、宰相⁉︎」


 勇者は魔王を知らないらしい、と思いやり過ごそうと思った矢先に宰相がネタバレをした。悪びれもせずに。


 依然姫は笑顔のままだ。


「君が、魔王?」

「え、ああ……まぁ」


 魔王は目を逸らしながら肯定してしまった。勇者は魔王を訝しげに見る。


「君は……」


 勇者が口を開いた。


「魔王じゃないな」

「へ?」

「俺は相手のオーラを見ることが出来る。それで善人か悪人かの判別が出来るんだ。それで君を見ると善人のオーラが見えたんだ。それも凄い強さの」


 呆気にとられる魔王とは対照的に、勇者は淡々と語る。


「そんなオーラの持ち主が魔王な訳がない‼︎」


 勇者は断言した。


「君は替え玉として来たんだろう?魔王め、自分の部下も簡単に切り捨てるとはなんて非道な!」


 勇者の明後日な誤解はまだ続く。


「安心してくれ。俺は魔族全てを討つために来たんじゃない。悪人に鉄槌を下すために来たんだ。見たところ君たちは悪人じゃないし、ここは大丈夫みたいだ。じゃあ俺はもう行くよ」


 勇者はそう言うと、爽やかな笑顔をして面接室を後にした。


「助かった……よな?」


 魔王は腑に落ちない感覚と安心を持ちながら宰相に確認をした。


「そうですね、今のところは」


 宰相はそう応えた。


 依然姫は美しい笑顔のままである。




 ▽面接終了後


「結局いい人材はいなかったですね」

「うん、ほとんど宰相の口撃の所為だと思うけど」


 面接はほぼ失敗に終わった。魔王に喋る隙を与えなかった宰相の所為で。


「あれ位耐えなければやっていけませんからね」

「おかげでフォローが大変だったよ」


 と、そこで魔王はあることに気付いた。


「姫、面接中喋ってなかったですね」


 と、いうことに。そこで姫は少しムスッとした様子で魔王に言った。


「だって面接の説明をしてもらってませんから、どういうものか分からなかったんですもの」


 魔王と宰相はその後姫に頭を下げたという。

魔「姫、機嫌直してくださいよ」

姫「別に怒ってませんよ」

魔「なら、そっぽ向かないでください」

姫「魔王様が今度私とお出かけしてくれるならいいですよ」

魔「はぁ、分かりましたよ」

宰(リア充)




ファンタジーな世界でなにやってんでしょうねw

感想いただけたら嬉しいです。



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