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愛について

作者: ところてん

 思うに、人の気持ちとは水のように流されやすく、岩のようにその場にしんと留まる二面性を持つものなのだ。君も聞いた事位はあるだろう?吊り橋効果。知らないのかい?例えば僕と君がジェットコースターに乗ったとしよう。そのジェットコースターはとても迫力満点のアトラクションとして有名で、恐怖しない人間はいないとまで言われているんだ。その速さったら。高低差で耳がキーンとなる程に緩急の強い乗り物。君は今までにない位心臓が跳ね上がり、所謂「ドキドキしている」…、そう、興奮している状態に陥っている。そんな時に、僕が告白したとしよう。すると君は今、ジェットコースターに乗った事による鼓動の激しさを、僕といる事、僕から愛を告げられた事による「ドキドキ」と勘違いしてしまうそうだ。面白いよな。普段何とも思っていない人間を、ただジェットコースターに乗った事で得られた高揚感だけであっという間に愛しい人のように思えてしまうのだから。例えそれが一時的な錯覚だったとしても、君の一時的な感情を僕に向けられたのだとしたら、とても素敵な事だと思うのだ。

 、とまぁ。ここまでネットで得た知識をさも自らが編み出した事のように捲し上げた後、僕は自分の顔がかっかと体温を上げた事に気付いた。そんな頬を冷たい風が無表情で駆け抜けていく11月の初旬。何やら雨の匂いがした。

 ほけ、と僕の顔を見つめた後、君は静かに笑い始めた。何がおかしかったのか、いや、ここまでの10分、おかしくなかった所がないように思えたので、僕は慌てて弁明の言葉を述べる。しかし君は尚も笑い声も上げていたから、ばつが悪くて買っておいたホットカフェオレを一口飲んだ。

 静寂。すっかり辺りは暗くなり、街の明かりが空を覆う時、僕は再び口を開けて詭弁を垂れる。言っている途中、何を言っているのか分からなくなりながら、手先の感覚が鈍ってきている中、口だけは動かし続けた。

 静寂が怖いのではない。言葉が途切れた後の君の反応が怖いのだ。

 一通り自分なりの「先輩・後輩の正しい距離感の在り方」を語りつくした後に、僕は君の顔を見る事が出来なかった。君も僕と同じようで、顔を伏せたままだ。それはそうだ。自分でも意味が分からない。何故、今いもしない先輩の、持ちもしない後輩について考えを巡らせねばならんのか。どうせなら明日の授業内容について語った方がいくらか生産的であっただろうに。ず、と鼻を啜ると、君も真似て鼻を触って見せた。

 風邪をひいてはいけないので君を家まで送っていこうとベンチより立ち上がって見せた時、少し笑って見えたので鼻が垂れているのかと擦ってみた。君は小さく首を振り、また笑って見せるから。頭の中がグルグルと混乱してきてしまって、僕は、

「好きです」

 と言ってしまった。しかし、何の脈略もない、不格好な告白に君は笑って頷いたもんだから、益々分からなくなって僕は思わず頬を赤く染めてしまうのであった。

 愛って本当分からない。

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