人違いにはご注意を!
私は今、偶然入った喫茶店でショートケーキと珈琲を前にして危機に陥っている。
視線を下で彷徨わせながら、もういないかもしれないと、視線をどうにか前に戻してみたら、消えて欲しかった物体AとBがちゃっかり珈琲を頼んでいた。
どうしてこんなことに!!
すぐに視線をまた下げようとしたら、物体Aが長い足を窮屈そうにくみかえながら鼻をならした。
それを物体Bは苦笑しながら物体Aの腕を撫でつつ、こちらを見た。
「タナカさん?」
やばい、なんか、やばいことに巻き込まれてる、え、なんで!?
内心プチパニックの私に、物体Aが鋭く睨んだ。
多分これ死んだ、私眼力で一回死んだ!
「タナカさん?話しても、大丈夫?」
物体Bは優しげな声を出してくれたせいで泣きそうになった。
悪魔と天使がいるよ!
「改めて自己紹介するね?僕が御堂利光。こっちが勝田優人。」
よろしくねっと物体B改め御堂はいい終わると、君は?という感じで即すように首を傾げた。なにこの天使。
やばい、これは、本当になんかやばい、今ここでもう一度言わなければ!
「ひ、ひとち」
「タナカだろ?」
物体Aに発言とられた…
なんか、もう泣けてきた、なにこれ、神様、私が何をした!!
「優人!タナカさんには協力してもらわなきゃならないんだから、黙っててよ!僕たちの未来がかかってるんだからね!僕たちが別れたくないからって、偽装結婚してくれる相手なんだから!労わらなきゃいけないでしょ!」
な、ん、だ、と…
な、ん、だ、と!!???
「わ、私!!!!確かに…確かにタナカですけど、多分それ違うタナカさん…」
「「え」」