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61部屋がどこにあるかを調べてコソコソと周りを彷徨いたらしい

 妹にとって両親のものは欲しくないのかもしれない。それとも、両親に話しかけることをやめているのかも。話しが通じないからと。


 それはそうだろうな。その立場ならなにか買うたびに欲しいとかちょうだいと言われるんだから。少しして、別々で買い物に行きたいと言い出す長女に親たちは護衛同伴ならと許可していた。

 完全な放置で興味がないから、むしろいない方が楽しめると思ったのだろう。そこで次女が自分も姉と行きたいと駄々をこねるが、姉が拒否。


「いやぁああ!わだじもいぐうううう!」


「うるさいわね。この子を馬車に戻しておいて」


 夫婦は次女にさすがに我慢ならなかったのか、乗ってきた馬車に乗せろと指示。こうして、妹は抱えられながらうぎゃあああ、という奇声を街中で撒き散らしながら使用人らに運ばれていく。姉は見慣れているのか見もせず、さくさく買い物をするために別れる。


 いやあ、慣れに慣れてる。市場に行き色々吟味してからレストランに入る。食べ終わるとプリンを取り出す。


「こっちも、美味しい」


 透明なガラス容器を揺らせば、淡い琥珀色のカラメルソースが内側でゆったりと波打ち、主役であるクリーム色の本体が繊細に震える。

 スプーンを差し込めば抵抗らしい抵抗もなく吸い込まれていく。すくい上げた断面は、気泡一つない鏡面のように滑らか。


 当たりの店だと二人で頷き合う。今度聖女たちにでも教えよう。


 舌の上に乗せた瞬間、体温でふわりと解け、濃厚な卵のコクとバニラビーンズの芳醇な香りが一気に鼻腔を突き抜けていく。

 追いかけるようにほろ苦いカラメルがミルクの甘みをキリリと引き締めて喉を通る間際、飲み物のように消えてなくなる。後味に残るのはひたすらに上品で幸福な余韻。


「プリンも単体での売り上げなかなかいいよね」


「そうだな。パフェよりは軽い」


 アルクレイもパクパク食べて満足そうにしている。


「さーて、どうするか」


「放置しないのか?」


「放置……」


 助けるつもりはないが、どうしても気になる。しかし、動きようがない。暴力を受けているわけでもないし。


「うん。放置しよう」


 元々一択しかないから。というわけで自宅に戻ることにした。パフェ農園の方だ。そっちにいくと相変わらず長閑。

 鍵をかけてあり、農園には誰も入ることがないように魔法でかっちり結界みたいなものを施してある。なので、誰も入れるようになっておらず安心して帰れて寝られて完璧。


「アルクレイ、寝よう」


 うさぎボディをもふもふしたら彼も鼻をひくひくさせて頷く。


「少し……寝てもいい。おれは少し食べたい」


「いやいやいや、さっき屋台でたっぷり食べたような」


 首を傾げたが彼が食べたいと言うのなら、ペコラは出すまで。というわけで部屋に移動してメールを聖騎士たちに送る。

 メールはホログラムで、この世界には存在しない。不便なのでせっかくこちらは知っているものなのだから作って試しにと、聖騎士たち全体に以前レクチャーした。


 そして、メールという画期的過ぎるものを目にした彼らは驚くと共に自分たちもそれを使いたいというものの、どうしたらそれを魔法として作れるのかわからない様子。あらかじめ、そっちが使えるようにする方法を知らないと言っておいた。


 事実以外の何者でもないし。本音だしね。返信方法もしっかり教えておく。メールを送ると返ってきた。かっちり帰ってきた本文。

 相変わらず硬い文章だ。報告書みたい、というよりこれは報告書だ。ただただ報告書の定例文。読みやすいから構わないけれど。


 しかし、周りから見えるのでその他の騎士たちが毎回メールを送るたびに、凄さで毎回目にしては、地味に盛り上がっているのを知っている。電子手紙やメールは男のロマンを擽るみたいだ。確かにわかる。未来感が強くて刺激を受けるのだ。


 スチームパンクっぽいもんね。だからこそペコラもわざわざ彼らの好きなメールの見た目で送っている。


 これを紙のような手紙の電子のものにできるのだが、電子の反応が一番よかったのでそこまで喜ぶというのならばとテンションが上がると、実は内心嬉しがってる評判のよいカスタム設定にしてある。


 それが何故か謎の人気を得ているし、彼らはずっとあれを使いたいという目をしてきた。けれど、やはりこちらのシステムのものなので返信以外は使う方法がない。


「メール送って返ってきた」


「なんと書いてる」


 ひくりと鼻を動かして問いかけてくる。読んでいくと眉根をひそめる内容があって、不愉快感に頭痛がしてきた。


「どうやらマリナサたちが、っていうよりその付近、例の側近男たちが私の部屋を探ったんだって」


 マリナサの側近たちが部屋がどこにあるかを調べて、コソコソと周りを彷徨いたらしい。流石に女子寮なので中を改める真似はしなかったが、それも時間の問題な気がする。


 一人部屋なので他の生徒との相部屋というわけじゃないから、その人に金を握らせて探させることはできないが、寮長に金を握らせることは可能。

 本来、信用問題的にその立場でやってしまうと学園にも影響が出ることは頭になさそう。

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