表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殻人界は世継ぎをお求め!  作者: 弧川ふき@ひのかみゆみ
第1章「日常が変わる感じ」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/4

第3話 意思を強めるよ。

 家にはお母さんだけがいた。僕も一人っ子。あとは僕のお父さんを待つだけだ、もし待つならだけど。

 みんなで居間のテーブルの前にいる。それぞれ適当に座っている。


「しかしまあ、そちらの……維都(いと)くんだっけ? 殻態(かくたい)になれたんだって? 殻則(かくそく)に縛られるから気を引き締めないとね」

 ゴニアータさんがそう言ったから、僕は、

「そ、そうですね……」

 って、少しだけ怖くなった。

 それでも僕はやる。蒼空のために。



 ゴニアータさんが言った『殻態(かくたい)』っていうのは、殻人(かくじん)が普段の状態ではなく甲殻に包まれた状態になって、なおかつ筋肉の密度が上がって強化された状態のことだ。


 で、殻則(かくそく)というのは、殻態(かくたい)になれた人を束縛するルール。


 と、僕がいろいろと知っているのは、殻人界(かくじんかい)のことを学校で教わったからだ。人間界の隣人たちの世界のことだ、大事だからなあ。小学校でも中学校でも年に一回はその授業がある。


 おかげで知ってはいるけど――それが目の前にいるなんて。

 というか自分もそうだったなんて。驚きだ。夢なんじゃないかって思うくらいに。


 テーブルを前にして話しているところへ、お父さんが帰ってきた。勢(ぞろ)いだし見知らぬ人もいるかもということで、お父さんは目を丸くさせたけど、そこで、


「ダクティリオ様!?」


 って、リメニアさんがすっごく驚いた声をあげた。


 え? とんでもない関係図が出来上がりそうだけど、どういうこと?



 ……で。色々と打ち明け話をしたワケだけど。


「え、蒼空(そら)を守るために最初に護衛に来たの、お父さんなの?」

「ああ。というか人間界に運んだのがそうだ」

 お父さんは即座にそう返答した。


 マジか。まだ夢の中みたいだよ。想像もつかない。どんな風だったのかさえ。


「お母さんはリオさんを追って。お母さんも殻人(かくじん)なのよ?」


 もう驚きっ放しだ。

 口が開いたままになっていたのを閉じると、そのタイミングでお父さんが「で、蒼空(そら)様だが」と言い出した。様だって。うわ、聞き慣れない。


「蒼空様は現王の孫にあたる。とはいえ王が亡くなったのか」

「ええ、そうです」


 リメニアさんがお父さんにそんな風に。お父さんが偉い人だなんて、なんだかくすぐったい。


「どうしてここがわかった? 正確には二人の居場所がだが」


 お父さんがそう聞いたから、この目をリメニアさんに向けてみた。

 彼女はやっぱり涼やかな声で――

「ダクティリオ様たちは抑えているでしょうが、たまに蒼空様の殻理力(かくりりょく)を感じられますから」

「――ああ、そうか。王の波長と照らし合わせたのか。そこは似てるはずだから」

「ええ。そして『ソラ様』が本当にいた」


 そんなリメニアさんに、聞いてみたくなった。


「蒼空って、元々ソラなの? それとも、違う名前だったの?」

「元々ソラって名付けられてたんだよ。だから、近くまで探知したら――」


 僕にそこまで答えたお父さんの声を、


「名前で確認できましたのでね」


 って、リメニアさんが遮るように、代弁した。


「ったく。あの時からだ。妙なことさせるんだから」

「あの時?」


 僕が聞くと、お父さんとお母さんが、ふたりして、過去の話を始めた。


 その話はとても信じられなかったけど――ドゥビレイという名前の王女が子を産んだ時に、その周辺警護をしていて、もしもの時のことを頼まれていて、我が子と一緒に人間界に来た、ということだった。

 出産時も襲撃があったという話で。


「――っていうことだったんだが。ったく、デスモセス殿下が悪いのか、はたまたデスモセス殿下のせいにしようとしているのか」

「その調査を仲間に頼みますよ」


 お父さんにそう伝えたのはゴニアータさんだ。

 本当に現実的じゃない。あまりにも信じ(がた)い状況だ。


 だから、僕は、蒼空を守るために、殻理力(かくりりょく)をどうにかしないといけない。


 殻理力っていうのは殻態(かくたい)になるための力だ。ファンタジーゲームで言うと魔法のために消費する魔力。まあ別のことにも使うはずだけど。


 その殻理力の波長を王様と照らし合わせて、蒼空(そら)を見つけ出した? そんなこともできるんだなぁ……。



 話して、全員がこの状況を理解した。


 蒼空のお母さんを、リメニアさんとゴニアータさんが護衛することになった。

 蒼空のことはうちの両親が護衛する。


 僕はその人員から除外されてるけど、僕だって守るよ、蒼空のことをね。絶対だ。


 というか。

 殻人界(かくじんかい)と人間界で色んなやり取りがあるし、お金の工面もできるんだろうけど、仕事そのものが本当は護衛だったなんて。知らなかったよ。


 そして。

 僕には、「守る」と言った手前やらなきゃならないことがある。

 殻態(かくたい)での体の動かし方の勉強や、そもそもの完全な殻態(かくたい)になる練習、殻理技(かくりぎ)というものの習得、それらだ。


 蒼空を守るんだ、絶対強くなってやる!


 殻理技(かくりぎ)っていうのは人によって違う技のはず。

 あの赤い甲殻の男は(とげ)を飛ばした。アレは多分、殻理力(かくりりょく)を形にして飛ばしたんだ。色は殻色(かくしょく)に左右されるんだろうな。


 殻色(かくしょく)は僕の場合、虹色だ。事態を把握するって時に、リメニアさんにそのことを言われた。そういえば、リメニアさんの甲殻は青かった。蒼空のは何色なんだろう。


 というか、リメニアさんの殻理技(かくりぎ)って何だったんだろう。


 まあともかく。

 強くなるために、殻理技(かくりぎ)を習得して、殻態(かくたい)殻理力(かくりりょく)を向上させないとな。



 ……これと同じことを蒼空(そら)も考えると思ったから、うちのソファーに座っているその横に座って、話し合ってみた。

 実際、蒼空も考えてた。まあそれはそうだ、殻人(かくじん)の常識を蒼空も知っているはずだからね。小学校も中学校も一緒だったし、殻人界についての特別授業も一緒に受けたし。


「あたしも、頑張る……!」


 そう言った蒼空の真剣な顔。本当は怖くないわけないよね、そうだよね。僕もだよ、でもだからこそ僕も――。


 そんな今、蒼空の首元に、紫の小さな甲殻が現れた。思わず二度見した。そのくらい綺麗な甲殻と肌のコントラストが、そこにあったんだ。


「蒼空様! それです!」


 リメニアさんが気付いた。僕の方が先だったけどね。……ねえ、蒼空、僕も、守るからね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ