エピローグ
◇登場人物紹介◇(※主要人物以外を略称にしております)
◆セシリア・フィリス・リル・マースデン
……クレイモント大公令嬢
◆ジョージ・マースデン……クレイモント大公
◆フランチェスカ・マースデン……クレイモント大公夫人
◆アレックス・セイム・インダム……士爵位授与の元軍人
◆エリス・スミス……16歳になったばかりの貴族令嬢
◆マイケル・ダント……アレックスと暮らす孤児。9歳
◆ミカエル・ダント…… アレックスと暮らす孤児。9歳
◆マリー・ダント…… アレックスと暮らす孤児。6歳
◆フィン・ヴェルハイム…… アレックスと暮らす孤児。5歳
◆ソフィア・モントレー…… アレックスと暮らす孤児。4歳
◆シャビリエラ・トルドー…アレックスの部下の子供。3歳
◆カーク・ソーフォーン……ラトリッジ伯爵。元中佐。
◆ロゼッタ・マドウィック
……ダリントン子爵夫人。カークの妹。セシリアの友人
◆ヴィンセント・マドウィック……ダリントン子爵。
◆ティナ・ロッド……セシリアの側仕えの1人。
◆メリー・デニー……アレックスのマナーハウスの使用人。
アレックスとセシリアはその後数日だけ王都にいたが、子供達のことが気になって、マナーハウスに戻ることにした。
まず驚いたことに、マナーハウスにはセシリアの大公別邸の私物がほとんど運び込まれていた。ミスター・ラントや使用人達が、セシリアの勘当を聞いて、館の主人が戻る前にと必死に動いてくれたようだ。ミスター・ポルテからのミンスパイとチーズケーキもあったらしくて、その話を聞いてセシリアは涙してしまった。そして、いち早く子供達が食べてしまったと聞いて、それに笑顔になった。
マナーハウスで、ラトリッジ伯爵の叔母とセシリアは顔を合わせたが、見知った人だった。彼女はフレイア男爵夫人で、子供の頃伯爵邸でロゼッタ達と一緒に可愛がってもらった人だ。
子供達とエリスの喜びようは大変なものだった。
「やったね!サーインダムおめでとうございます!」
「これでもう僕らのものですね!ミス・マースデン?いや、永遠のマイプリンセス!」
「これからはずっと一緒なのね!良かったぁ!」
「インダムとけっこんするのよね?シャビー……かわいそうかも……ちょっぴりだけ」
そこにフィンも来て言った。
「そうでもないだろ。シャビーの けっこんするせんげんて、デルぼくしの むすこにも だし、はなやのサムにもだぞ。どれだけ けっこんするきなんだか」
みんなは笑い出していた。
セシリアが戻った頃には、エリスは以前よりも顔色も肉づきも良くなっていた。女性らしい丸みが出てきて、明るい笑顔は輝きを増している。元気になったのには理由もあったようで、
「おめでとうございます先生。私の父ももうすぐ帰国できそうだと連絡が来ました!でもまだ一緒にいられますから、もっといろいろなことを教えて下さいね」
と教えてくれて、セシリアと抱き合った。
メリーはアレックスに言った。
「サー・インダムがなかなか動かないので やきもきしてしまいましたよ。慎重なのも良いですが、速さも大切でしょう?ですから、いない間に勝手にお呼びしてしまいましたよ」
そして、メリーは隣りの続き部屋の扉を開けた。
入ってきたのは────
「母さん……!!」
「ティナ!」
アレックスとセシリアはそれぞれの大切な人と再会を存分に喜び、それから 互いに紹介し合った。
◆
ダリントン子爵から、祝いだと婚姻の特別許可証が送られて来て、アレックスとセシリアは入籍は早く済ませることが出来た。
マースデンを名乗れなくなったセシリアには、できるだけ早く夫の姓があった方が良いというロゼッタの配慮だった。もう一緒に暮らしているのだから、その方が世間からの印象も良い。
マナーハウスは庭と一部分が開放され、領地の子供達が誰でも遊具で遊べて、そして、アレックスとセシリアから勉強やマナー、体の鍛え方を教わることができるようになった。
2人は領主・領主夫人であると共に教師となり、多くの人々に"先生"と呼ばれて慕われた。
村の教会で挙式し、領民や、足を運んだ親しい貴族達、軍関係者から沢山の祝福を受けた。
セシリアはアレックスとの間に生涯で6人の実子をもうけたが、彼らは孤児の養子も取り、最終的に2人の子供は15人にまでのぼる。
マナーハウスは、いつも子供達の明るい声が響いていた。
年齢を重ねるごとに教え子や名付け子は増え、2人は領地では知らない者のいない存在となっていく。
2人が出会ったばかりの頃にいた子供達の方は成長し、それぞれに農場主や印刷会社、服飾職人や料理人、それから軍人────さまざまな仕事につき、結婚もしている。中には恋多き女となり、3回目の結婚を考えている者もいるようだ。
また、とある侯爵令嬢は大恋愛をして貿易商人と結婚した。貴族の非嫡子と噂のあったその貿易商人は爵位はなかった。が、彼女は最愛の夫と共に外国を周り、セシリアに各地のお土産を贈ってくれるのだった。それと共に届く葉書が、かつての痩せっぽちの女の子の今の幸せを語っていた。
◾️
セシリア・インダムが70回目の誕生日を迎えた日、多くの人々が集まってお祝いがされた。広いマナーハウスにもそこかしこに人の姿がある。400名以上が来ているかもしれない。
息子達が楽団を手配してくれて、娘達がもてなしを執り行ってくれる。
セシリアはティナに
「すっかり私達やることが無くなったわねぇ」
と言った。共に老いた親友は、
「あなたは今日の主役だもの。もっと踊るという仕事があるわ」
とまだハッパをかけてくれる。セシリアは苦笑した。
音楽が奏でられ始める。
その曲に、ふと私は椅子から立ち上がった。年はとったけれども、まだ足腰はちゃんとしている。
知り合いの何人かが、ワルツの相手にと声をかけてくれたが、断る。
とても魅力的な若い男性もいたけれど、彼にも断った。
「ノア、あなたのことは心から愛しているけど これはお断りするわ。『春の声』は予約があるの」
「分かったよ おばあちゃん」
あの人の若い頃によく似ているから惜しいけれど。
ここは本物とでなければね。
背の高い白い髪の人物を見つけて手を振る。
もう良い年なのに、頑強な彼は髪を なびかせて 駆け足で来てくれた。
アレックスは立ち止まると、片手を差し出した。
その振る舞いは記憶にある通りで、思わず笑みが浮かぶ。
「ミセス・インダム」
彼は声をかけてきた。
「この50年の結婚生活が、あの時 この手を取ったことを、あなたに後悔させない日々だったならいいが」
私は眉だけ上げて、素早くその手を取った。それが返事。
彼に誘われてフロアに出て行く。
互いに向き合い、見つめ合う
もう言葉はいらなかった
互いの その瞳には 愛が みえるから
ー完ー
後記
誰かが立ち寄って読んでくれた時に、誰もが、ちょっと幸せになれるような恋の話を書こうと思いました。
令嬢、王族、社交界、舞踏会、ワルツ、正装軍服、その世界が好きな方なら、楽しんでいただける内容を詰めました。
アレックスには、正に漫画のような愛の台詞を言ってもらい、それが偽りに響かないほどの人物にしようと思いましたところ、まぁ……強い強い。
破格に強くなってしまいまして、私はラ○ボー(大変強い退役軍人の戦いを描いた有名映画です)を書いていたんだなと、1人失笑しておりました。顔は皆様、お好きな2枚目を入れてください。(スタローンファンの方申し訳ありません。しかしながら顔はスタローンと思って書いておらず、何卒御了承下さい。)
2025年11月8日より、完結祝いにかぐつち・マナぱ様から頂いておりましたファンアートを、最後に挿絵として載せることに致しました。
ここではもうヒーロー、ヒロイン共に大変美しい世界にして頂いております♡皆様もこちらのイラストで想像して下さりましても嬉しい限りです。
かぐつち・マナぱ様本当にどうもありがとうございました。
連載開始時には12エピソードをためてスタートし、楽勝!と思って投稿していましたら、怪奇現象かと言うほどにストックは無くなっていき、でも話は予定以上に伸び、前日書いて出す!
の連載に結局なっておりました。_| ̄|○
やはり1日1投稿連載はハードではありました……
が、とにもかくにも、無事にゴール出来まして、セシリア、アレックス、子供達(エリスを含む)みんなで喜んでおります。
11月14日には、今作のスピンオフ作、シリーズ作と言える『堕天使の素顔を知っているから〜令嬢と麗しの子爵〜』を短編にて出すことが出来ております。ロゼッタとダリントン子爵がメインで、婚約までのドタバタ劇が明るく切なく書かれております。セシリアも出ております。そちらもどうぞよろしくお願い致します。
お読み頂きまして誠にありがとうございます。
また、連載中のお声がけもとてもありがとうございました。
ブクマ、評価、感想等して頂けますと、大変嬉しいです。
これからの励みになります。
今作と共にこれからもよろしくお願い致します。
11月6日 完結 シロクマシロウ子




