表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その瞳を知れたなら〜令嬢と孤高の騎士〜  作者: シロクマシロウ子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/43

王都社交シーズン

 




 ────3週間後



 王都に来てから、すでに母様と私は多くの晩餐会や舞踏会、庭園会や劇場、音楽会と言った催しものに参加していた。

 一つ救いだったのは 昨年までのように殿方への振る舞いを、母様に こと細やかに注意されないことだった。

 これまではよく、爵位継承者以外の紳士とは話す必要もないとか、男性の前では知性は決してひけらかしてはならず、自分の意見を言ってはいけないと注意をされてきた。

 だが、今年は母様のお目付け役(シャペロン)としての監視が(ゆる)かった。

 何しろもう、結婚が決まっているのだ。それも、両親の最も望んだ王室の相手と。悪評がたつ程のこと以外には、2人共目をつぶってくれているようだった。




 王都に来て間もない頃は、何か……連絡があるのではないかと……期待している自分がいた。

 目が覚めるといつも、手紙が届いていないかと確認してしまった。

 エリスからはすぐに返信が来て、みんな寂しがっているが、元気だと書いてあった。……サー・インダムも元気だと。




 晴れの日には空を見上げて、アレックスを想った。

 今の自分は────やっぱまだ彼が好きで、距離が離れたぐらいでは、簡単には気持ちを消せなかった。


 まもなくヘラルド王太子との顔合わせもありそうだが、きちんと話すつもりでいた。自分は恋に落ちて、まだ未練がある と。

 挙式を先延ばしにしてくれるかもしれないし、もしかしたら……もしかしたら 王太子にだって意中の方がいるのかもしれない。話し合いでの破談になることに、私はまだ一縷(いちる)の望みをかけていた。





           ◆◇◆◇◆





 ある夜の晩餐会では、メイルトン侯爵と席が隣同士になった。彼とは、父親同士が懇意(こんい)にしていてずっと交流があり、私達は婚約の噂があった。


「お父上の方から話は聞いてるよ。おめでとうセシリア」


 彼はこっそりとお祝いの言葉を述べてくれた。


「ありがとうデイル。でも、まだ正式ではないの。どうなるか……わからないわ」


 私はあえて言葉を(にご)した。できるだけ、広まってほしくない話だからだ。


「君なら大丈夫さ。こうなると、僕はトレイア伯爵の長女と結婚しそうだよ。なかなか気持ちの良い()なんだ。最近話しているけれど、気が合っているよ」


 以前からの友人でもあるデイルの幸せに、私は喜びと共に安堵(あんど)した。


「良いお相手がいるのなら、素敵なことよ。それなら、私達の婚約は、どうせ どうあっても噂だけの運命だったのね」


 すると、デイルは不思議そうな顔をした。


「いや、本当に君があの方と破談になるようなことがあれば、僕らは結婚するだろうよ」


 当たり前のようにあっけらかんと彼は言う。私は聞いた。


「どうして?あなたと私が?お互い好きでもないのに?」


「君にとって、1番条件の良い貴族は僕だろう?僕にとって君はトレイア伯爵令嬢よりも条件が良い。────結婚ってそういうものだろう?」


 私は頭が痛くなった。仮に王太子から逃れられても、結婚からは逃れられないの?


 とりあえずその夜、晩餐会が終わって別れる時に、私はデイルに告げた。


「デイル、トレイア伯爵のご令嬢をちゃんと好きになってあげて。それまでは結婚しないで。そうでなければ彼女が気の毒だわ」


 彼は 私の言葉にキョトンとしていた。


「いい?私と結婚したくないほどちゃんと好きになるの。()()()()()()()()()()()()


 言った後は 彼の顔を見ずに帰った。






           ◇◆◇◆◇






 それは、大公邸宅(タウンハウス)で催される招待制舞踏会(プライベートボール)の前日のことだった。

 毎年一度開かれているこの舞踏会は、社交界の中でも最大規模で とり行われる──クレイモント大公夫妻が主催のものだ。

 400名以上が招待されるので、ダンスホールとなる大広間や受け入れる屋敷そのもの、楽団員の保持、料理・飲み物や対応する料理人・使用人の数からして、さばけるのはクレイモント大公夫妻くらいしかいないのだ。


 私も明日に向けてのチェックを、母様に言われて(おこな)っていた。

 花やテーブルの配置、椅子の数、メニューの確認、そして、招待状返信の見直し。

 男女の比率や、若い人の割合を全体的に見る。年配の方が多いと、メニューやダンスの曲目の変更も検討しなければならない。でも 今年は大丈夫そうだ。



 招待状返信を見ていて、何気なく1通に()が止まった。


 ダリントン子爵ヴィンセント・メイル・モーロ・マドウィック────ロゼッタのご主人だ。


 返信カードに走り書きがしてあった。


 " 妻が身重なため自分は欠席しますが、頂いた招待状にて代わりにサー・アレックス・セイム・インダムが出席致します "



 え? アレックスが来る? ────舞踏会に?



 思わず二度見して、瞳を(またた)かせる。



 嘘… だって 彼は踊れないのに









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まさかのまさかのアレックスが舞踏会に! これは波乱の予感がしますね〜♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ