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その瞳を知れたなら〜令嬢と孤高の騎士〜  作者: シロクマシロウ子


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21/43

明日に向けて

 



 翌日は休みだった。最近はすっかり午前中から起きる日々だったけれども、今日は昼が過ぎてもベッドの中にいて ため息ばかりついていた。



 よりにもよって、あんな場面を見られるなんて────

 パン屋に愛嬌を振り撒いて安価で買えたことに歓喜する女

 ……馬鹿みたいだと思われた?(いや)しいとか?

 礼儀作法を教えにきているのに、礼儀も何もなかった。 本当にみっともなかった。



 もう、何も考えたくはない。また毛布の中に潜り込む。



 あの時 サー・インダムは追ってきてくれた。なのに 何

も言ってはくれなかった。

 ────どうして?

 あのスカイブルーの瞳に問いかけたけれど、彼はその瞳をそらしてしまった……



 セシリアはベッドから身を起こしたけれど、しばしその姿勢のままでボゥっとし、そして、また ため息をつく。



 わからない。結局……言おうとする言葉は無かったの ね。伝えたかった気持ちも。

 そんなもの、彼の中にあるわけが無いんだ。

 私への気持ち なんか。



 涙が滲んできて、慌てておさえる。

この前まで、ただ瞳の色が知れたらそれでいいと、それでいいんだと言っていたのに。


 

 いつの間に欲張りになったんだろう


 もっと話せたら

 もっと知ることができたら

 もっと近くにいれたなら


 際限なく彼に望むことばかりが増えていく

 気持ちが大きく膨らんでいく


 一体なんの気持ちが?





 …………その答えを、出してはいけない気がしていた。






           ◇◇◆◆






 午後、やっと起きてから少量の食事をとった。

 食べ物を胃に流し込んでも、活力は湧いてこない。

 明日はマナーレッスンの日だけれど、休ませてもらおうと思った。どうしても……いく気になれない。

 2階にあがり、自室で手紙を書きだした。



 エリスへ


 本当にごめんなさい。

 体調が優れなくて、明日はレッスンをお休みしたいの

 です。私が行かなくても、これまでやったことを繰り

 返しておけば、あなたならきっと乗り越えられます。

 宮廷で使う礼儀作法は、あとはダンスくらいですが、

 ダンスは強制参加ではない上に、男性からの申し入

 れが必要なものも多いのです。

 例え申し込まれても

『社交界デビューをしておらず、ほとんど分かりません

 ので、今日は皆様のお姿を拝見して勉強していきます』

 と、丁寧にお断りしてお父様の隣りにいれば問題ない

 はずです。

 この先私が────




 コンコン


 とノックの音がして、私は振り返った。


「はい?」


 返事をすると、ティナが入ってきた。


「失礼致します。お嬢様、先程エリス様が玄関先にいらっしゃいまして、こちらを渡してほしいと」


「エリスが?」


 エリスに手紙を書いていたのに、エリスから先に手紙をもらってしまった……。

 戸惑いながらも、差し出された封筒を受け取る。

 白い封筒の背には、確かにエリスの字で


 " ピクニックへの招待状 "


 とあった。


 "レディ・マースデン様


 明日、私達はピクニックを計画しております。

 メリーも、美味しいサンドイッチやマフィンを

 作ってくれると約束してくれています。

 あなたを招待したいです。是非、お越しください。

 シャビリエラも呼ぶ予定でおります。

 来て 会って頂けたら、私達も嬉しいです。


 

  エリス・マイケル・ミカエル

        マリー・フィン・そふぃ  より"



 最後の署名は1人1人の自筆のようだった。その字に思わず顔がほころぶ。だけれど、参加を迷った。

 手紙を書いていたのだ。明日は休むと伝える手紙を。

あれに手を加えて、ピクニックも断ることはすぐにでもできる。


 もう一度招待状を読み返す私を、固唾(かたず)を飲んでティナが見ていた。


 文面の中の " シャビリエラ "に目が留まる。

 きっと、これが "シャビー" ね。


 招待状から目を上げてティナに伝える。


「明日は朝から起こして。サー・インダムのところの子供達とピクニックに行きます!」


「はい!!!」


 ティナは私に、力強く返事をしてくれた。








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― 新着の感想 ―
ついに出ました、シャビー。いったい誰なんでしょうか? セシリアはシャビーの出現で、闘志が燃えてきたのでしょうか。 どちらにしても、ピクニック楽しめたらいいですね(^^)
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