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その瞳を知れたなら〜令嬢と孤高の騎士〜  作者: シロクマシロウ子


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15/43

始まりの日

◇登場人物紹介◇(※主要人物以外を略称にしております)


◆セシリア・フィリス・リル・マースデン

               ……クレイモント大公令嬢

◆ジョージ・マースデン……クレイモント大公


◆アレックス・セイム・インダム……士爵位授与の元軍人


◆エリス・スミス……16歳になったばかりの貴族令嬢

◆マイケル・ダント……アレックスと暮らす孤児。9歳

◆ミカエル・ダント…… アレックスと暮らす孤児。9歳

◆マリー・ダント…… アレックスと暮らす孤児。6歳

◆フィン・ヴェルハイム…… アレックスと暮らす孤児。5歳

◆ソフィア・モントレー…… アレックスと暮らす孤児。4歳

◆シャビリエラ・トルドー…アレックスの部下の子供。3歳


◆カーク・ソーフォーン……ラトリッジ伯爵。元中佐。

◆ロゼッタ・マドウィック

  ……ダリントン子爵夫人。カークの妹。セシリアの友人

◆ヴィンセント・マドウィック……ダリントン子爵。


◆ティナ・ロッド……セシリアの側仕えの1人。

◆メリー・デニー……アレックスのマナーハウスの使用人。

 

 2日後────




 私はちゃんとティナとレモンパイを持って、マナーハウスを訪れた。

 ドアノッカーを鳴らすと、今日はすぐに(にぎ)やかな声が中から聞こえた。

 扉が開かれ、メリーの(しわ)だらけの顔が現れる。その背後から沢山の声が飛んできた。


「やった!本当に来た!」

「お姫様がまた来てくれた!」

「来るに決まってるだろ。オレは分かってた」

「れもんぱい」「れもんぱい」


 私はメリーと顔を見合わせて微笑みあった。

 エリスが小走りに走ってきて、簡単な挨拶を交わすと すぐに 興奮しながら話し出した。


「ありがとうございますレディ・マースデン!サー・インダムから、私のためにあなたが来てくれると聞いてはいたんです。でも、とても信じられませんでした。ああ、だって、あなたが私のために来て下さるなんて…………」


「あたしは信じていましたよ。レモンパイを持ったレディ・マースデンにまた会えるのを」


 ティナからレモンパイを受けとったメリーが、それを掲げながら言ったので、私達はみんなが笑った。子供達も笑っていた。

 そして、中に入ろうとした時────


「レディ・マースデン」


 ()()()()呼び止められた。

 振り返ると、玄関の階段の下にサー・インダムが来ていた。


 修繕作業中なのに、挨拶に来てくれたんだ……!


 私の胸は高鳴った。

 ────分かってる。彼は、ただ子供達への菓子や、エリスのことへの感謝で、そうしているだけなのだと。


 それでも、嬉しかった。とても嬉しい。


「おはようございます」


 彼は一礼して挨拶をしてくれた。

 私も


「おはようございます。サー・インダム」


 と階段の上から返した。上からな分、なんだか偉そうで嫌だけれど。


「エリスのために来て下さって本当にありがとうございます。どうかよろしくお願い致します。」


 彼は、スカイブルーの瞳で真っ直ぐ私を見つめて言った。

 ……これを断われる女性なんているのかしら?いいえ、存在しない!


「心配なさらないで下さい。エリスは基本はできていますから、改善点のアドバイスで すぐ変われると思います。」


 これを聞いて、エリスは明るい顔になって言った。


「最高の先生に教えて頂けるんですもの。私、頑張ります!」


 "最高の先生"────

 "大公令嬢"でも "マイレディ"でもない呼び方だ。私は、胸の奥がほんのりと温まるような気がした。

 振り返ってサー・インダムに言った。


「私も頑張ると約束致します」


 そして、私達はマナーハウスの中に入った。





  ◆◆◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇





 玄関扉が閉まっても その場にたたずんでいるアレックスに、棟梁が声をかけた。


見惚(みと)れて動けなくなってるんじゃないですか?サー・インダム」


 彼は棟梁をジロリと見た。


「そんなんじゃない。ああいう笑顔もするんだと、驚いたんだ」


 棟梁は(ひる)まず、むしろニヤニヤとしている。


「可愛い笑顔だったからでしょうが。レディ・マースデンはサー・インダムと言えど高嶺(たかね)の花ですからね。いやぁ、残念ですよね」


「だから、そう言うんじゃなくて。……いつも作ったような笑い顔をする人だと思っていたから、さっきみたいな顔は……意外だったってだけだ。」


 アレックスは(かたく)なに否定した。


「けど、可愛い笑顔だったんでしょう?」


「……………………」


 否定の言葉は出てこなかった。

 棟梁はガハハハと豪快に笑い出す。

 アレックスはその笑い声に背を向けて、付き合ってられないと歩き出した。作業途中だった、ブランコの支柱部分のカンナがけに戻る。



 ああ、可愛い笑顔 だったとも

 輝かんばかりに 美しくて


 だが、それが一体どうした?


 可愛い子犬

 美しい夕日


 そんなもの達と同じなだけだ


 特別なものは何もない

 特別なものなど あってはいけないのだから──







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― 新着の感想 ―
にゃっにゃっにゃっにゃっ!!! アレックスーーーー!!!! ところでアレックス、多分過去が重い系ですね? 大丈夫です。そういうキャラ大好きです。
お、リクエスト通りのレモンパイを持っていったんですね♪ アレックスの最後の心の声が気になりますね…
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