未成熟
プールも楽しいけど料理まで用意してくれるなんて至れり尽くせりで感激~♪」
「ゆいちん、見かけによらず肉食系女子でしょ(笑)
お肉っていうと目の色が変わるもんね~だから沢田に焼肉をしこんでもらったの」
※ 山下はまいまい家に仕えている秘書兼、執事である
「コジー様もお好きでしょうから3キロほどご用意してありますのでご安心を…
ご希望とあらばステーキもお焼きしますよ」
「きゃ~ん♪ 山下さんのタレ絶品なんだよね~♪
ステーキも焼けるの?? わ、私、ニンニクたっぷりのミディアムレアで…ん~焼肉があるかから400gにしておこうかなぁ、まいまいもミディアムレアでそ
?コジーは焼き具合どうする?」
『俺もミディアムレアで…600ほど頂こう』
まいまいにはわわんわん♪としか聞こえていない
「OK、みんなミディアムレアでコジーは600、まいまいは?」
山下は黒ぶちのメガネをツイっとあげると鋭い瞳をやわらげ応えた
「まい様は500ですね」
「ああ、うん。焼肉メインだかんね~でもどうしよっかな…山ちゃんのステーキはそんじょそこらのステーキハウス屋より美味しいからね~650で♪」
「え~、じゃあ私も600にする~お肉を前にすると胃袋宇宙になるからねっ。うふっ」
「備え付けの野菜も自慢ですよ。ジャガイモとほうれん草はバターでソテーして、ホタテも焼きましょうね」
「わぁい♪わぁい♪ホタテのバター焼きも食べられるなんて最高~」
唯からハッピーオーラがパアァァァっと出ているのを見てコジーは微笑んだ
(案外、食い意地はってんな…こいつは食べることが好きなのか…)
『ふたりともちっこい身体でよく入るな』
「え…コジー様、もしかして呆れてる?」
途端に唯の顔色が青ざめる
「山下さん、私、ステーキ200でいい…」
「はぁ? ちょっとちょっと大食いのあんたがな~に言ってんの? 200で足りるわけないっしょ」
(こいつ…急にハッピーオーラからブルーな憂鬱オーラになってる…どうしたんだよ…そんな悲しそうな顔して…あ、俺のせいか…)
『唯、いっぱい食えよ。俺はたくさん食べる奴が好きだぜ』
「ほ、ほんと?」
今にも泣きそうな瞳でコジーに聞く唯にコジーはチクリと胸が痛んだ
(傷つきやすいんだな…俺の態度と言葉で子供みたいに笑ったり落ち込んだり…何でそんなに素直なんだ…
未成熟で危なっかしくて…)
コジーは唯の頬をペロリと舐めると…
『俺は肉が大好きなんだ、小食の女は嫌いだぜ』と耳元で囁いた
途端に唯の顔色がぱあぁぁっと明るくなる
「よかった~私とお揃いだねっ♪ 山下さん、やっぱり唯も600g食べま~す」
「承知いたしました」
クスリと微笑みながら焼肉とステーキを華麗な手つきで焼く山下を全員、尊敬の眼差しで見ている
「すごいでしょ(笑) 山ちゃんに出来ない料理はないもんね」
「いえ、苦手な分野もございます。台湾料理とジビエ料理はイマイチ…」
(おいおい…すげえな…それ以外はプロ級ってことか…
器用な人間もいるもんだ…人間って想像していたのと違う…
唯は傷つきやすくてちよっしたことでパリンとヒビが入って心が壊れるが俺のひと言でたちまちテンションあがるし…
もっと言葉に気をつけてやらないとな…こいつを幸せにしてやらないと…魔界に戻れないし…
魔界に…戻る?
唯は…俺がいなくなって大丈夫なんだろうか…
俺の態度に一喜一憂しているこいつが俺がいなくなって幸せになれるのか?
いや、待て待て! 何を考えている?
俺は魔界に1日でも早く帰りたいはずだ…)
「お待たせいたしました。では…ステーキと野菜のソテーからお召し上がりください」
「コジー様、ねえねえ、お肉が焼けたよ~ステーキ美味しそうだよ~。ねえってば~」
唯に呼ばれてハっと我に返ったコジーは黙って焼きたてのステーキに食らいついた
※
「お腹いっぱぁい、もう何にも食べられないよ~」
「チゲやピビンパ、冷麺まで出てきたらそりゃ食べちゃうでしょ♪」
「だねだね~もう太るの覚悟でここではいっぱい食べちゃお」
「そうそう♪では山ちゃん特製のフルーツパフェもらってくるね~」
『唯、嬉しいか?』
「うん、嬉しいし楽しいよ…あ、あの…でも…」
『心配するな。お前を幸せにしたのはまいさんと山下さんの料理だから』
「コジー様…ごめんね…」
『何故謝る?』
「…コジー様は早く魔界に帰りたいのに…その為に私を幸せにして帰りたいのに…私、私…さびしいって…」
続きを言いかけた唇が塞がれた
え…え、ええっ?
コジーが背の高い男性の姿で漆黒の長い髪をなびかせながら憂いのある瞳で唯を見つめて唇を奪っている
な…に…これ…
どーゆーことっ!!!
『ごめん…』
コジーはひと言謝るとハスキーの姿に戻る
『魔性犬はたまに姿が変わるんだ…驚かせて悪かった…』
え…あ…
唯の瞳からポロポロと涙が零れるのを見て焦るコジー
『おいっ、どうした! 何で泣く? 俺が何か言ったか?』
「ううう…」
「違う…違うの…ごめんね…私、キス…初めてだったから…」
(唯……男の人と付き合ったことなかったのか)
「うん、私、男嫌いだもん、あ、だからってレズってわけじゃないよっ」
『レズ?? なんだレズって…』
「あ、うんとね、ようするに女の子を好きってわけじゃないよってこと」
『ああ、なるほど…まいさんとか?』
「違う違う! まいまいはそんなんじゃなくて本当に大事な親友なのっ」
『くっくっく…冗談だよ…すぐムキになる(笑)』
冗談…いうんだ…
『なに、俺が冗談言っちゃおかしいかい?』
「ううんうん、違う違うよっ。ちよっと意外だっただけ」
必死に首をぶんすか振って否定する唯の顔をコジーはペロリと舐めた
え…あ…の…
「おまたせ~♪パフェ持って来たよ~」
呑気にビックパフェを運んできたまいまいは二人に何が起こっているか知る由もなかった