出会いは太陽のしたで
いつものように日課のウォーキングに出かけた唯は道すがらハアハアと息を切らしてしんどそうにお散歩している小型犬が心配になった
そんな時、暑さも感じさせず凛として威風堂々と歩いているハスキー犬と出会うのだが…
暑い…口を開けばその言葉しか出てこない…
7時ならイケると思ったんだけどな…
容赦なく肌に照り付ける太陽にじわじわと体力を奪われながら私はウォーキングしたことを悔やんでいた
それにしても まだ6月なのに35℃っておかしいでしょ
ハッハッハ…
道すがら
荒い息でしんどそうにお散歩する小型犬たちが気の毒になってしまう…
この暑さじゃお散歩もしんどいだろうな
テッテッテ…
お…おやおや…
ワン界のイケメン代表 黒と白のハスキー様が酷暑をもろともせず歩いているではないか!
息も乱れず舌も出さずに颯爽と歩いているけ…ど…ん??
リードがない…
もしや野良ちゃん…いやいや、よく手入れされた艶のある毛並みにしっかりとした骨格 凛とした眼差しに漂う品格
どう見ても野良ちゃんに見えない
飼い主さんどこ行ったんだろう…
『なに?』
テッテッテ…
え、え? ハスキー様がお喋りになった?
こっちに歩いてくるし…
とうとう暑さで幻聴まで聞こえちゃったか…もう帰ろうかな
『帰るのか? おい、あんた、聞こえてんだろう?』
イケメンならぬイケワンボイスに振り向くと
何という事でしょう
あきらかにハスキー様は私のあとを追ってきているではないか!!
『決めた。今日からあんたが飼い主だ。光栄に思えよ…』
「ちょ、ちょっと待って。いきなりそんな…」
『ん? 何か問題でも?』
「えと…ルームシェアしてる友人がいるんだけど…」
『ああ、問題ない。彼女は犬好きだろう』
えっ…待って待って
相手が女の子なんて言ってないよ? それに犬好きなんてどうしてわかるの?
だいいち喋るハスキー様をどう紹介すれば…
『俺の言葉はあんたしかわからないから
彼女には普通の犬にしか見えないよ』
……どーゆーこと??
『つまりは…選ばれし者ってことさ』
なにそれ…
テッテッテッテ
彼は戸惑う私にお構いなしで家の方へと歩いていく
「ね、ねぇ、あなた、」
『コジー。ちゃんと名前で呼んでくれ』
「コジー、どうして私の家を知ってるの?」
コジーはため息をつくとめんどくさそうに質問に答える
『運命だから…』
運……命…??
『いつまでも立ってると熱中症になるぞ』
コジーは私のチュニックの裾をパクリと咥えてグイグイ引っ張っる
そういえば…頭が…痛いかも…
『ったく…言わんこっちゃない。そこの自販でポカリ売ってるぞ』
ほ、ほんとだ…
自販のボタンを押すとキンキンに冷えたポカリがゴトリと出てきて渇きを癒してくれる
飲み終える頃には頭痛も和らいできた
『楽になったか? いくぞ』
これ以上外にいると本当にヤバいので私は出逢ったばかりのコジー様と帰るべく友人のいる家に向かった
ハスキー犬が好きすぎて書き始めた長編小説です。