札幌駅の改札
五話目、書くのに時間がかかりました。
後の話の構想は進むのですが、、、
最後まで読んでいただけたら幸いです。
弥生はキャスケットに縁の太い伊達メガネ、ベージュのマスク、ダウンコートを身にまとっていた。通勤途中にも旅行中にも見える。
昨日旭川でようやく、自分に合った服装に変えることができて、少し心に余裕が生まれた。
靴が変わり、歩きやすいことはありがたい。
霞もまた、アクティブな少年服に身を包んでいる。色使いが自然で駅構内でも浮かない装い。
札幌駅の改札に向かって歩く中、霞は20メートル先に、ネイビー色のロングコート姿の長身の男が改札を通ろうとしている。
男の洗練された隙がない動きに、霞の直感が警鐘を鳴らす。
霞は男に悟られぬよう、ごく自然に切符が使える一番左の改札機に視線を向け極めて落ち着いた声で言った。
「義姉さん、あの切符が使える一番左の改札機を使おう。」
弥生はその意図を察し、小さく「わかった」と返した。
ふたりは改札を抜け、北口へ向かった。
30歩ほど進んで、弥生に訊ねた。
「さっきの長身のコートの男に、見覚えある?」
弥生は小声で「研究所で二度ほど見たわ。本当に、気づかれなくてよかった」
その男――クロウは、いつもよりやや早足だった。
昨夜、稚内沖の無人島で破壊された研究所の情報を得て、今朝4時に札幌支部で資料、ハードコピーを確認した。
指示は、数十年前にサービスが終了したポケットベルに届く。
なぜそれが機能するのか、クロウ自身にもわからない。
命令には従うだけ。
ハードコピーを鞄に入れ、稚内へ行くため大通公園の近く雑居ビルからタクシーに乗り札幌駅へ。
札幌駅で彼は“姉弟らしき”ふたりとすれ違う。
違和感を覚えた。しかし、確信には至らず、男は足を止めなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
読んで少しでも面白いと感じてもらったら幸いです。
六話、がんばります。