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旭川にて(前半)

三話投稿しました。

最後まで読んでいただけたら幸いです。

車窓の外、舞い落ちる雪が静かに流れていく。それは、遠い夢の断片のようだった。


「はい、これ」


霞が差し出したコンビニのお茶とおにぎりを、弥生は受け取る。

車内は暖房でぬくもりに満ちていて、冷えきった身体がじんわりとほどけていく。

ジャケットに残っていた雪が解け、じわりと染みを作っていた。


おにぎりの包みをはぎながら、弥生が言う。


「ツナマヨ、わたしが好きなの知ってたの?」


「いや、なんとなく。……っていうか、ツナマヨ好きなんだ」


ツナマヨにかぶりついた弥生の横顔を見て、霞は小さく笑う。

むぐむぐと食べている弥生。

何をしても品がある人だなあ、と霞は感心する。

それにしても、おいしそうに食べる。ツナマヨ、そんなに好きなんだな……。


霞も、ほっこりした気分で昆布のおにぎりにかぶりついた。

弥生はすでに二個食べ終え、お茶を一口飲んで、ふうと小さな息を吐く。


ふたりともお腹がほどよく満たされ、車内の暖かさに包まれて、自然とうとうとし始めた。

旭川に着くまでには、まだ三時間ほどある。じゅうぶんに眠れる。


「眠い」


その言葉と同時に、弥生が霞の肩にもたれかかってくる。

霞は少し驚いたが、起こさないようにそっと目を閉じた。

まぶたを閉じるその瞬間、弥生の長い睫毛がふるえているのが見えた。


霞は静かに呼吸を整え、深い眠りに身をゆだねていく。



旭川の手前、和寒を過ぎたころ、霞は目を覚ました。


「義姉さん、もうすぐ着くよ」


「ん……」


「あと二十分くらい」


「ん、起きた」


弥生は軽く口を抑えて伸びをし、小さくあくびをする。


「早く服、着替えたいわ」


「だね」


ふたりは自然に笑い合う。


そのとき、車内に旭川到着のアナウンスが流れた。

窓の外には、白く煙るような街の風景が近づいてくる。


霞と弥生は、目を見合わせ、小さくうなずいた。

旅の続きを確かめるように。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

読んで少しでも面白いと感じてもらったら幸いです。

三話の後半、がんばります。

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