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第二話 出会いとのじゃショタ

五歳になった。

俺が物心ついたのが三歳の時だったので、大体二年の月日が経っていることになる。

すっかりあの日から胸がつっかえが取れ、心が晴れた俺は異世界生活を楽しもうと意気込んでいた。

これでもなろう系でもなんでもござれなガチヲタは伊達じゃない。

この世界は魔物も、魔術もある超ファンタジー異世界だ。

しかし、文明レベルは近代のようで、何と車や電話のようなものも存在する。

貴族も王族もいるが、魔術は貴族オンリーみたいなこともなく、貴族は政治家、王族は国家元首のような意味合いが強いらしい。

ただ、開拓がとびきり進んでいるか、と言われるとそういう訳では無い。

街を出れば魔物はいるし、なんなら、管理がきちんと行き届いているので、興味本位でこっそり街の外にも行けやしない。

ゲームのような世界では無いので、レベルとかの概念は無いが、魔物を狩りまくるぞ!みたいなことも出来ないため、少しガッカリ。

だが、ヲタクみんなのあこがれのあの職業は存在する。

『冒険者』だ。

かくいうおじいちゃんも、今でこそ子供の玩具の人形を作る人形師だったり、人形劇を近所の子に披露する傀儡師だったりするけど、昔は名のある冒険者の魔術師だったらしい。

おじいちゃんに詳しく話を聞くと、魔物のランクはSからF。冒険者のランクもSからFランクあるみたいだ。

おじいちゃんのランクはどれくらいだったのか、聞いてみると

「秘密じゃ」

人差し指を口元に当てるというサービス付きだ。


大体話せたので、この世界の話はさておき。

この世界で俺TUEEEEしたいのは山々なので、この間おじいちゃんに魔術を教えて欲しいとお願いしてみた。

すると、教材を揃えてくれると言ってたので、魔術修行編はまた後日らしい。


魔術の修行という期待を胸に抱きながら、今日も今日とて新しい朝がやってくる。

目覚ましがわりの古時計の音をきっかけに、幼い身体のせいか二度寝に大した魅力を感じないので、異世界では珍しいふかふかなベットから起き上がる。

リビングに行くと、早起きなおじいちゃんがいつものロッキングチェアにマグカップで優雅になにか飲んでいるので、挨拶をした。

何を飲んでいるか尋ねると、どうやらオレンジジュースらしい。

うちのおじいちゃん、超可愛い。

朝ごはんはできていると言うので、キッチンからパンと目玉焼きを持ってきて食べ始める。

白米が恋しいね、とほほ。

朝ごはんを食べ終えたら、パジャマから普段着に着替える。


「パペパペ!あーそーぼっ!」


すると、家の外から可愛い声が聞こえてくる。


「パペパペ!」

「そんな何回も呼ばなくても聞こえているのじゃ」

「パペパペが遅いのがいけないんだもんだもん!」

「すまんすまん、ちょうど着替えているところだったんじゃ」

「もう!もう!」

プリプリなんて効果音が付いてきそうに怒っている彼女は、近所の家の同世代の女の子、リカ・フレグランスだ。

少しピンク色が混じっている金髪を指先でくるくると弄り、不満を露わにする。

「今日は何して遊ぶのじゃ?」

俺がそういうとぱあ、と表情を変えて嬉しそうにする。

ころころと表情を変える姿を見るのは何とも楽しい。

「うーん、どうしよかな、どうしよかな?」

「なんじゃ?そんな悩んでるんじゃったら、ぜんぶやればいいじゃろうて」

「だねだね!えへへへ」

「じゃあ、最初に何して遊ぶのじゃ?」

「まずはぁ、まずはぁ!かけっこ!」

「よし来た!じゃあ、どこからどこまでにするのじゃ?」

「ここから焼き鳥屋さんまで!よーいどんどん!」

「あ、はやいのじゃ!」

「パペが準備してないのがいけないないだよー!」

走るだけで何がそんなに楽しいのか、あははは!と大笑いしながらリカは走り出す。

くそぉ、とリカに追いつこうと速く走ろうとするが、一向に追いつかない。

俺のお転婆幼馴染は、運動神経抜群なのだ。

「とう!ちゃくちゃく!」

負けた…………………。

いいもん。俺には身体能力重視の剣士は向いてないかもだけど、大魔術師になる道がまだ残っているもん。

ってなに、五歳児相手にムキになっているんだ、おれは。

「えへへへ。私の勝ち勝ちぃ!」

彼女は満面の笑みを浮かべて、俺に「ピスピス!」と言ってピースを向けてくる。

こんな可愛い幼馴染の笑顔が見れるならいいじゃないか、うんそれでいい。

決して、「煽り性能高いなこいつ」なんて思ってなんかいない。



***



かけっこの次は、公園に行くことになった。

あらゆる遊具に付き合わされて、結局満身創痍となった。

「体力ないないよぉー?」

俺がぜはぁぜはぁ言っている横で好き勝手言ってやがる。

普通はどうか知らないが、こいつ体力ありすぎないか?

それとも俺が少ないだけ?

「なんかぁなんかぁ、パペはおじいちゃんみたいだね!」

「なんっ、なんじゃと!?」

「だってねだってね、のじゃ、とかお年寄りが使うような言葉遣いだしぃ、体力ないないだしぃ、おんなじ五歳じゃないみたい!」

「普通は、のじゃ、って言わないのかのぉ?」

「あははは!かのぉも言わないんだよぉ!あははは!」

「うぅ、ワシにはおじいちゃんしか居ないからno……………」

「ぶふぅっ!『僕』で、『居ないからなぁ』だよ!」

「………僕にはおじいちゃんしか居ないからなぁ」

「ふふふっ」


彼女にとって相当ツボにハマったらしく、一応申し訳ないとは思っているのか、両手を顔に当ててコソコソ笑っている。


それにしても、盲点だった。

おじいちゃんの見様見真似で異世界語、いや、大陸共通語を使っていたのだが、口調にはおじいちゃん臭い部分があったらしい。

それで言うと、日本語の場合は【のじゃ】なのだろうか。

まてよ、そうなってくると、俺のしゃべり方は今まで『のじゃロリ』、ならぬ『のじゃショタ』だったわけか。

そう考えるとすごいイタイやつじゃないか


「少し直してみるかn………、なぁ」



***



夕方になって家に帰ってくる。

「ねぇ、おじいちゃんや。」

「なにかのぉ」

「………………うぅ」

おじいちゃんの口調を聞いて、思い出すだけで顔が真っ赤になりそうなくらい恥ずかしくなる。

「わ、僕の喋り方ってものすごいおじいさん臭かったんだね。」

「のほほ、その喋り方が可愛かったんでつい放置しておったが、いよいよ気づいてしまったんじゃな」


あんたお茶目が過ぎるよ、おじいちゃん……………。




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