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Take On Me 3  作者: マン太
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1.穏やかな日々

「Take On Me 3」新作投稿致しました!


もう少し、早く更新したかったのですが、手直しを繰り返すうち、終わらなくなり…。

いつまで経ってもアップ出来ないなぁと、思い、思い立っての投稿です。


相変わらず、拙いですし、穴だらけではありますが、僅かでも楽しんでいただければ、幸いです!


更新は不定期となります

よろしくお願い致します!


 

✢ 登場人物 ✢


宮本(みやもと)大和(やまと)…主人公。二十歳。紆余曲折あって、今はパートナーの岳とその家族、友人と暮らす。


鷗澤(おうさわ)(たける)…三十歳。大和のパートナー。元鷗澤組の若頭。今はヤクザを辞め写真家をしている。


鷗澤(おうさわ)亜貴(あき)…岳の異母兄弟。十七歳。高校三年生。


洲崎(すざき)真琴(まこと)…元鴎澤組、弁護士兼岳の秘書。岳とは小学校からの付き合きあい。今は弁護士事務所に務める。


(もり)七生(ななお)…岳らの家でハウスキーパーとして働くことに。二十歳。母方の祖父がフランス人。


・ラルフ海斗(かいと)・エナンデル…モデル。フィンランド人とのハーフ。アッシュブロンド。緑の目。


久我(くが)隆一(りゅういち)…ヤクザ。元古山の部下。


(くす)正嗣(まさつぐ)…元鴎澤組、若頭補佐。三十八歳。今は元鷗澤組を引継ぎ、組長となる。


(まき)牧田(まきた)亮一(りょういち)、岳の元部下。今は家系ラーメン店の店主。


(ふじ)藤巻(ふじまき)彰吾(しょうご)、岳の元部下。今はジムのトレーナーをしている。


※ここに表記のない登場人物は、「Take On Me」、「2」をご参照下さい。


※アルファポリス、エブリスタには挿絵が挿入されております。

大和(やまと)、まだ起きてたのか?」


 俺が階下へ降りていくと、(たける)は驚いた様にそれまで向かっていたモニター画面から顔を上げた。

 青白い光が、岳の顔を照らし出している。

 手元のスタンドだけ灯し、撮り終えた写真や動画と格闘していたのだ。もう深夜を回る。


「…いや。ほら、隣いなかったし、まだやってんのかなって…」


 頭をかきながら答える。

 ふと目を覚ますとベッドの隣がガラ空きで。時刻は深夜を回る。俺は心配になって様子を見に来たのだ。

 岳が仕事場を自宅に移したその後、帰りの遅い岳をひとり待つ日々はなくなった。

 作業に時間がかかっても、そこは自宅。階下に降りれば岳はいて。

 モニター相手に撮った画像と格闘していたり、写真選びに悶々としていたり。とにかく、そこにいるのだ。

 俺はピョンピョンと、好き勝手跳ねる寝癖のついた髪を撫でつけながら、タシタシと岳の元へ向う。裸足の足に床がひんやり冷たい。

 ピンと立ったアンテナの如く跳ねるのは、しっかり乾かさずに寝た結果だ。クセがあるため、気を抜くと抜いたなりに、半端なく跳ねる。岳はその様に笑いながら、手を差し出して来た。


「もう、これを保存したら終わりだ。…大和、ここ」


「ここ?」


 岳がデスクと自分との間をあけて、膝をぽんぽん叩いた。


 んん?


 俺は首をかしげて覗き込む。


「ここ、座れよ。保存が終わるまで、話そう」


「…なんでそこで」


 心配して来たのに、一気に脱力した。


「いいから。俺のエネルギー補給」


「エネルギーって…」


 岳の役に立つなら何だってやるつもりだ。


 けど、流石に膝の上には、ちょっとな──。


 だって、もう二十歳だし。どう考えたって、成人男子がそこへ座る理由はないし。

 けれど、岳にはあったらしい。是が非でもと譲らない。


「いいから。誰もいないし。──頼む!」


 顔の前で手なんか合わせて頼み込んで来る。


「んな、それくらい、頼まなくったって、やるって…」


 岳にそこまでされて、やらない訳にはいかない。

 渋々、猿山の人工岩の尖端に座る猿の如く、岳のしっかりと筋肉の張った膝の上にちょこんと座った。しかも、岳に背を向けて。

 だって、正面同士はあり得ない。

 座った途端、気恥ずかしさが増す。


 恥ずかしい。恥ずかしい。子どもじゃないんだってば。


 しかし岳は。


「大和…。そうじゃなくてさ、こっち向いて座れよ」


「ええ? って、それじゃなんか──」


 言う間に腰を掴まれ、ぐるんと無理やり身体を反転させられ、岳と向き合う形で座らされる。岳の顔が見下ろす角度で迫った。

 正面で跨ると身体は密着するし、もっと恥ずかしい。──それに。


 なんか、これって。これって。


 すると、俺の気持ちを察した岳が意地悪くニヤリと笑い。


「…やってる最中みたいで恥ずかしい、か?」


「っ?!」


 俺が思っていることなどお見通しで。

 思わず岳の頭をガシッと捉え、後ろ脚蹴りを喰らわす猫の如く、髪をくしゃくしゃに掻き回す。


「って、やめろって! コラッ、大和!」


「そーゆ―ことを言うなっ! そう言うつもりじゃなくったって、そう思えるだろっ」


「へー、そういうつもりじゃないって?」


 岳はぐいと背中に回した腕に力をこめ、引き寄せる。


「のわっ」


 岳が俺の胸に頬を埋めてきた。まるでぬいぐるみにでもなった気分だ。


「ん—…。大和、いい匂いする…」


 言われても思い当たらない。


「んだよ? もしや──夕飯の唐揚げか?」


 今日の夕飯は唐揚げで。生姜と醤油、少々のカレー粉で味付けした鶏モモ肉に、片栗粉を大量にまぶした奴だ。衣がパリパリザクザクになる。カロリー高めだから、時々だ。

 で、作ると皆の大好物だから、直に無くなる。結果、大量に揚げる事になり。

 お陰でシャワーを浴びたのに、体中に染みついた油の匂いが落ちた気がしない。


「…違う」


 ムスッとした岳の声が答える。


「んだよ。他になんの匂いだよ」


 岳は頬を埋めたまま。


「日向の匂い…。ボディクリームの香りに、洗濯洗剤の香りも混じってるな…。後は──コーヒーが微かに。…でも、大和の匂いだ。甘い」


 クンクンした岳はようやく満足したのか、もう一度だけぎゅっと抱きしめた後、ようやく腕の力を緩めてくれた。

 日向の匂いは外干しだからだろう。ボディクリームは岳と共用しているから、香りとしては同じ。洗濯洗剤はなるべく無香料の物を使っているが、それでも微かな香りはつく。コーヒーはいつも飲むからか。俺の匂いは──良くわからない。

 俺は岳を見下ろすと。


「っかんねぇ…」


 すると、岳は笑って。


「甘いのは大和自身の匂いだ。大和はわからないだろうな…、多分。大和──」


 岳は名前を呼ぶと、首筋に手を滑らせ引き寄せ、キスを仕掛けてくる。触れるだけじゃない。ガッツリ濃い奴だ。

 こうなると、ちょっと休憩で終わらない。岳はデスクのライトを落とすと。


「保存は終わった。…大和、上に行こう」


「ん」


 ギュッとその首筋に抱きついた。


 もう、帰りの遅い岳を心配をする必要はない。階下に覗きに行けば、そこに岳はいる。

 そっとしておくこともあれば、コーヒーを差し入れることもある。そんな時は、そこで少し話したり、手伝うことも。

 岳とのそんな囁かな時間が俺にとってはかけがえのないもので。二人の大切な時間だった。


+++


 けれど、それから暫くして。

 日増しに仕事は忙しくなり。俺は六月から十月中旬まで山小屋の手伝いに入っていた。

 今は九月下旬。あと少しで山小屋の仕事も終わる。

 その間は、岳の異母兄弟、高校三年生の亜貴(あき)の母方の祖母、倖江(さちえ)が住み込みで手伝いに来ていたのだが、何と腰を痛めてしまったのだ。

 こうなると当然のごとく、家事をやるものがいない。

 岳や、今は一緒に住む弁護士事務所に務めている真琴(まこと)も食事は作れる。掃除だって出来る。

 俺が休みで帰ってきた日以外は──山小屋管理人の祐二(ゆうじ)が気を利かせて、月火の週休二日制にしてくれた──真琴がメインでこなしてくれたが、それも限界にきていて。

 真琴も在宅の仕事ばかりではない。一旦難しい案件が入れば遅くなることもしばしば。

 岳も岳で自宅兼事務所にいるのも不定期だし、途中で仕事が入ると放り出すことになる。

 となると、亜貴の出番か? となるが、亜貴はまだ高校生だ。しかも受験を控えている。

 その亜貴に、たとえ出来たとしても俺がいない間の家事全てを任せられない。

 実際は卵一個割れないが。いつか割らせてみたが、見事、粉砕された殻ごとボウルに投入され、暫し、呆然とした。

 受験が終わったらしごくつもりだ。最低でも、米を洗えて、ゆで卵くらい作れれば、生きていけるだろう。

 ともかく、亜貴に任せれば、間違えればヤングケアラーとなってしまう。

 俺のいない間、成人男性二人の世話などさせられない。まあ、ちょっとはアワアワと苦戦する亜貴も見てみたい気はするが。

 これでは家の中が荒れ放題になってしまう。誰か専属に手伝ってもらえる人が欲しい。

 それは皆の一致した見解だった。


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