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珍獣最強 《チンジュウサイツヨ》~クソ強伝説~  作者: あそあいやあ
第一章 爆誕
5/5

サイちゃん、教祖と出会う

今日は村を探索しようと思う。


昨日パパから言われたことも理由の一つだが、やっぱり余りにも一つのことに拘りすぎて、それ以外のことがよく分かりませんってなったら良くない気がするから


午前は稽古があってできなかったが、午後からは自由だし、早速行くか。


「テンション上がってきたー!!」




───────────────




「さーーて、まずはどこから行こうかなー?」


朝早くにランニングをしていたせいか、お爺ちゃん、お婆ちゃんとかの大人たちにはよく会ってるんだけど、子供たちにはほとんど会ったことがないんだよな


「かわいい子はいるかなー?ぐへへへへ」


しまった、レイナの性癖が移ってしまったようだ。


...........おや?あの娘は....。


「何してんのーー?」


「えっ......あっ、シリカ様!?」


「おう、シリちゃんやでー」


「あ、あの.........あう」


うーむ、どうやら緊張しているみたいだな。一応、俺も偉い人?ではあるからな。.....ん?この子なんでこんなに雑草を集めてるんだろう......いや、これはもしかして──


「やーい!雑草女ー!」


「いーっひっひっひ!」


「今日も遊びに来てやったぜ~!」


おっ、見るからにワルそうなガキどもが来たな。

ぶちのめしてやる。


「舐めとんとちゃうぞーー!!!」


「えっ、誰この人?」


「知らねぇ...」


「いや、待て!コイツ、あの領主様の息子だ!」


「何ぃぃー!?」


「まずいじゃねぇか!」



「こっちは日の丸背負っとんのやぞーー!!!」


「な、何を言ってるんだ.......?」


「とりあえずデカイ声出しときゃいいって思ってるよ、この人......」


「ヤベー奴じゃん.........」



「俺のデカイ声に怯まないとは.......やるな」


「困惑していただけです」


なんとかこの子を守ってやりたいんだが、どうしたもんかな


「あ、あの...........シリカ様、あの人達....悪い人じゃない...」


「えっ」



「まぁでも、リリィを庇ってくれてるし、悪い人ではなさそうだな!」


「リリィ、良かったな!凄い人に認めてもらえて!」


「ああ、ヤベー奴であることは目を瞑るとして、本当に良かった.........!」


ええ.....最初あんなにいじめっこムーブかましてたのに....?



────────────



どうやら、いじめっ子っぽい行動をした理由は、このリリィって娘を助けるためらしい。

リリィは周囲からは「雑草を集める変な奴」として認識されていて、他の子から嫌がらせを受けることも少なくなかったそうだ。

そこで、リリィ信者たちはわざとリリィをいじめ、事を大きくして大人たちを介入させ、事態の沈静化を試みたのだ。........いや、なんだそれ


......が、そう上手くはいかなかった。大人たちはまるでそれを黙認するかのように無視したのだ。

『雑草を集めるなんて、面白い趣味をしているな!えっ、雑草じゃない?でも見た目は完全に雑草だぞ?』

『ちょっと汚いから、家に持って上がるのはやめてね?お外だったら全然大丈夫だから』

などと好き放題言って、そもそもリリィたちに関心すら持たなかったのだ。


信者はブチギレた。端から見れば完全に逆ギレだ。

必ずや、彼の邪知暴虐な畜生どもを駆逐すると決意した。

そこから、大人対リリィとその信者たちとの全面戦争が始まったのだ。結果はリリィたちの惨敗。信者のみ1週間外出禁止の罰を受けることとなったのだ。


「なんか、コイツらが思ってた以上にヤベー奴らなのはわかった」


「わ、悪い人たちではないのですが........」


って言うか、痛い目みてるのにまだ続けてるのかよ....


それよりもこのリリィの持っている草は.......


「なぁリリィ、これって多分薬草だよな?」


「えっあっ、わかるのですか....?」


やはりそうか。薬草って言うのは魔力を大量に含んだ草のことで、食べると魔力が回復するのはもちろん、自身の受ける回復魔法の効果が向上する。


見た目はただの雑草.......というか、実際ただの雑草なのだ。魔力を大量に含んでいるだけで。


存在として似ているのは四つ葉のクローバーだな

四つ葉のクローバーの、見た目じゃ判別できなくなったバージョンだ。


「すげぇな、こんないっぱい集めるなんて」


「い、いえ全然.........スキルのお陰なので...」


「『鑑定』か?」


「えっ!な、なんでそれを........?」


「本で見たんだ。面白いスキル持ってるんだな」


「あ、あはは.............あ、あの....これ!」


...........ん?

なぜ薬草を差し出すんだ?俺は徴税しに来た訳じゃないよ?


「ど、どうかお納めください.......!」


「いや、そんな受け取れないよ...........ん、待てよ....」


いいこと思い付いたかも。


「あっあの!本当に山ほどあるので、お気になさらず!」


「ふーむ.......ヨシ!じゃあ、その薬草を定期的にもらいに来てもいいか?」


「え、あっ、はい!」


「決まりだな。じゃあ、ちょっと待っていてくれ」


「え.............?」



─────────────────


「はい、これ」


「い、いえ、こんな沢山の本受け取れませよ!」


「まぁまぁ、よいではないか.........それとも俺が頑張って取りに行った苦労を徒労に終わらすつもりか?」


「そ、そそそのようなことでは無くて.......!」


「取り引きなんだから、申し訳なく思う必要はないよ。それに、この本は誰も使ってなくて埃被ってたやつだから。ゴミ押し付けてるようなもんだ。むしろ俺の方が申し訳ないよ」


「そ、そんな............本当にありがたいです........これは、薬草の本ですか?」


「うん、他にも色々あるけど」


喜んでもらえたようでなによりだ。稽古の後は魔力が減っていて自由に魔法が使えないからな。それを補充できるのは、俺としてはありがたい限りだ。


「それじゃあリリィ、これからよろしく」


「あぁぁ、はいぃ!よ、よろしくお願いします!」


「あと、次から「様」はつけなくていいから」


「は、はいぃ!」



─────────────



さて、早速薬草を頂くとするか


「モグモグムシャムシャ」


うん、雑草の味



ガサガサッッ!!



ん?何の音?

..............あれは.....確か、水流鹿か?

水が流れるような模様をしてるから間違いないと思う。


そういえば、毎年いまくらいの季節になると食卓にコイツの肉がたまーに出てくるんだよなぁ

それがまたウマイんだぁ......


「く、食いたい......!」


今こそ俺の水魔法の出番だ!

..........でも、当てても倒せるのかなぁ?レイナにはアッサリ受け止められてるし。まぁでも殺るしかないか!



魔力を指先に集中させる



ザザッ!ヒヒーン!パカラッパカラッ!


「おい!?動くと当たらないだろ!!」


くっ、追うしかないか!



────────────


うーん、どこ行ったんだろう.........


もうかなり森の奥の方まで来てしまったから、早いところ引き返さないと.....。



ガサガサッッ!



おっ!あそこにいるのか?


...........いや、待てよ......?


森の奥.....不気味なガサガサ音.........

はっ!これはまさか───



接敵イベントだ!!逃げるしかねぇ!!



「孔明の罠だったか!!」


なんとか引き返して逃げきれるか?!


ん?....................


な、何ぃぃぃーーー!!?

先回りされていただとぉぉぉーーー!?


もと来た道に3匹の狼のような魔獣

そして.....ガサガサ音がしたところから、さらに3匹出てきた。


くっ!挟まれたか.....孔明めぇ...なんと小癪な!


「アタシを食べてどうするつもりなのよ!!」


いや、食べるつもりなのか。


だめだ、冷静になれ!COOL!COOL!COOL!!


..........仕方がない、“アレ“をやるしかないか


「7匹以上で来なかったことを後悔するんだな!!」


魔力を気合いで右手、左手それぞれの指の3本ずつに集める


「くらえ!一度思い付いたは良いものの、今回初めて使うことになる必殺技!!」


狼たちは、殺られる前に殺る精神で一斉に飛び掛かってくるが........もう間に合わんよ!



「なんかすごいビィィームッッ!!」



「ガウッ!?」


................



............................



「.......やったか!?」


......うむ、全員倒したっぽいな。


「ふぅ...流石にこの必殺技の名前くらいは変えた方がいいなぁ」



ガサガサッッ!


──ハッ!まだいる!先手必勝だぁー!


「くらえー!」


ガサガサと音がなる茂みに向かって水魔法を打ち込む。


「..........当たった.....かな?」


とりあえず、確認してみるか

............コイツは....鹿さん!?


「無益な殺生をしてしまった!!?」


儚い最期に涙を禁じ得ない........いや、まて。そもそも俺はこの子を追いかけてここに来たんだった

ラッキーだったな。もう夕方だしこれ持って早く帰ろう


この子、なんか処理とかした方がいいのかなぁ?

でもやり方分かんないなぁ..........けど、血抜きくらいはやっておいた方がいいよな。


太い血管があるところってどこだろう?足とか?いや、首か?もういいや、頭切り落としちゃえ!


........ふぅ、後の処理はさっさと持ち帰ってやってもらった方がいいか。帰ろ。



──────────────



「─────っていうことがあってねー」


「もう!危ないことしちゃダメでしょ!」


「ヒィィ!?で、でも危ないことをしたお陰で今こうしてみんな美味しい肉が食べれてる訳で.....」


「言い訳は聞きたくありません!」


「そんなぁ!じゃあ俺はどうやって無罪を主張すればいいんだ!」


「あなたは既に有罪です!」


「ヒギィィ!横暴だ!容疑者の主張も聴かずに判決が下される裁判があってたまるかぁ!」


「いいんです!独裁政治だから!」


「あああぁ!とうとう言いおった!民主制を放棄するとは何事だぁ!!」


「マァマァ、二人トモ落チ着イテ.........」


「サイちゃん、あなたには罰として「外出する際、パパに付き添ってもらう」刑に処します!」


「ヒィィ!思ったよりも刑が軽いぃぃぃーー!?」


「坊っちゃまの取ってきてくれたお肉、とっても美味しいですー!!」


「..........レイナ、お肉は食べ終わったかしら?」


「........?....はい」


「シリカ、あなたのお肉は没収よ」


「アギャャャーース!!???」


「ナルホド、ソレガ本命ダッタカ」


「どっちも本命よ」


「ひどいです、カレン様!坊っちゃまにも少しくらいはあげてくれても良いではないですか!」


「はぁ........ダメったらダメ!もう!みんな今回の事態を楽観視しすぎよ!狼6匹に囲まれるなんて危険すぎるわ!」


「ダガ、シリカハソレヲ撃退スルクライノ実力ハアル。ソレニ、コノ領土内デハ──」


「貴方は黙ってなさい」


「ハ、ハイィ........」


「とにかく!これから危ないことはしないように!

わかった?」


「うん、わかったよ............最期にもう一回だけ叫んでいい?」


「いいわよ」


「ハアアァァァウエ“エ“エ“エェェェェン!!

お肉食べたかったよォォォォーーー!!!」


「好きなだけ、意味もなく叫びなさい」


「ア“ア“アアアァァァァァーー!!

鬼!悪魔!サキュバス!!」


「わ、私はサキュバスではないわ!?」


「ハハハ、マァ似タヨウナ存在デハアルガナ。

ッテ、グボアァァァーー!?」


「貴方は黙ってなさい」



そういえば、ママの本当の姿は見たことないな。まぁ何でもいいか。とりあえず、今日は疲れたからゆっくり休もう。


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