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死闘の果て

「マヒロ!!」

「兄さん!!」


自分を呼ぶ声に目を開ける。

そこはいつの間にか、元いた洞の中だった。


(トキシカントの結界が解けたのか…)


上体を起こし、声の方に視線を向けるとクロエとブラッドの姿があった。

「隊律違反だぞ、、お前ら」

何とか生きている。

呼吸もさっきよりは楽だ。

何とか立ち上がりマヒロは、クロエ達に笑みを返す。


「化け物なみの生命力だな。団長」

疫病の巣窟。

ブラッドは、感染対策のため防疫魔素を染み込ませた特殊な防護布で口元を覆っているが、安堵の表情を浮かべていることは明白だった。


隣で泣き顔を堪えるクロエが、こちらにむかって駆け寄ってくる。


そのときだった。


マヒロの右腕に急激な寒気がおそい、黒いアザのような紋様が右半身を覆った。


「ブラッド!!結界を!」

苦しみを抑えながらマヒロは叫んだ。


状況を察したブラッドは瞬時に印を結ぶ。

空間遮布(フォルテシールド)


マヒロとクロエたちの間を透明な壁が遮った。

「ブラッドさん!何を!」

ブラッドは俯いたまま悲しげに呟く。

「すまないクロエ兵長。だが、おそらくマヒロは…」

言葉につまるブラッドに代わりマヒロは応える。

「ああ、最悪の疫病に感染したらしい」


あの時だ。


倒れたこんだまま呼吸をしたマヒロの肺は、呼吸をしたことで、石灰となったトキシカントの心臓を吸い込んでしまった。


いくらあらゆる毒や病に耐性があるとされる耐性者のマヒロでも、あらゆる病を生み出す元凶。

疫病神の心臓という猛毒に耐えられるはずはない。

「『息をしろ』ってそういうことかよ、くそ、疫病神」


透明な壁を隔てて、クロエは涙を流す。

「兄さん!必ず助けます!すぐに、軍の科学部隊がワクチンを」

「いいんだ、クロエ」

その言葉を遮るように笑顔でマヒロは返す。

「ごめんな。

俺みたいな兄がいるせいで、お前まで闘いに巻き込んで」

「違う!私は兄さんみたいなヒーローに憧れて自分で兵士に志願したの!」

「変な影響を与えたのは事実だ。

これからは、残酷な疫病も争いもない世界で平和に生きてほしい。

お前は大事な妹だから」


多分そう長くない。

体の自由も効かなくなってきた。


泣きじゃくるクロエに、透明な壁越しに手をかざす。

クロエは涙をとめ、その手に自分の手を合わせた。

「私は兄さんの妹だから。

これからも、この国を守り続けます」

マヒロは苦笑し頷く。


もう喋ることもできず、ブラッドに視線で合図をおくる。

ブラッドは頷き返すとクロエの方に手を当て、マヒロに背を向け出口へと歩き出した。


マヒロは倒れ込み天井を見上げる。


(ブラッドの防護魔法のおかげで、感染拡大は防げただろうか。

この防護壁の効果がどれほど続くか分からない。

けど、もうすぐで俺の心臓もとまる。

そうすれば、より強力な死後の結界術が発動し俺の身体と周囲を覆う。

外に感染が広がることは防げるはずだ)


「あとは任せたぞ、、ブラッド、クロエ」


マヒロはもう一度目を閉じた。

貴重なお時間を割いて頂きありがとうございます。

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