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魔獣の細胞

翌朝。

マヒロとイチカ、そしてテディの3人は、旅支度を整えると、涙を流すウルフ達に別れを告げた。


「テディの兄貴、どうかご無事で!!」

「マヒロの旦那!!兄貴のことを頼みます!」

「イチカちゃんー、無事戻ってきたら、またご飯食べにきなね」

涙ながらに見送るウルフ達にマヒロとテディは返事代わりに手を挙げて笑みを返した。


「ありがとう!!みんなも元気でね!!」

イチカは涙と鼻水を流しながら、ウルフ達に大きく手を振った。


「さて、行こうか」

マヒロは、ウルフ達に背を向けて歩き始める。


「マヒロ。お前たちこの森を歩いてぬけるつもりか?」

「ああ。本当は空を飛んできたいんだが、誰かさんが高所恐怖症とかいいだすもんで」

「ううっ。すいません、私のせいで」

「まあ、俺も高いところは苦手だからな。気にするな小娘」

「クマさん…優しい!」

イチカはテディのお腹に抱き着いた。


「…クマさんって呼び方やめてくれるか?なんか恥ずかしい。テディでいい」

「わかりました!よろしくね、テディさん!」

「せめて、移動手段として馬でも調達できれば助かるんだけど」

「馬か…ちょっと待ってろ」

テディはそういうと、静かに目を閉じた。

直後、テディの身体がギシギシと音を立てながら、形を変えていく。

ものの数秒で、テディの身体は白い毛に覆われた、頭部から1本の長い角が生えた馬の姿に形を変えた。

マヒロとイチカは目を丸くしてその光景を見届けた。


「クマさんが、馬になった…」

「『魔獣細胞』俺が軍に捕らえられていた時に、生物実験として魔獣の細胞を注入された。

昨日マヒロに見せた『ハルク』やこの『ユニコーン』もそのうちの一つだ。

軍は、屈強な兵士に魔獣の細胞を投与し、最悪の生物兵器を作り上げる計画だったらしい」

「魔獣細胞。俺がまだ軍にいた3年前にはそんな話聞いたこともなかった。

イチカは何かしってるか?」

「あくまでも噂ですが、うちの第三師団の団長から聞いたことがあります。

前に団長が酔っぱらった時に、『超極秘情報だけど』って話してくれました」

「…超極秘情報を平気で一般兵に漏らすとは、ろくでもないなその団長は。

まあいずれにせよ、助かった!」

マヒロとイチカは、テディの背中に飛び乗った。


「わあ!モフモフしてて座り心地最高!」

「よし!それじゃ、頼むよテディ」

「ああ!全力で飛ばすから、しっかりつかまってろよ」

そう言うとテディは猛スピードで走りだした。


「ちょ、ちょっとテディさん!早すぎます!」

「振り落とされたら俺が助けるから心配するな。しかし、風が気持ちいいな」

肌にあたる風を感じながら、マヒロは優しく微笑んだ。

新しいテディという強力な仲間と共に、マヒロ達は森を抜ける道を進んでいく。

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