戦いの後の宴、新たな仲間
ぱちぱちと静かになる焚き火の音で目を覚ましたテディ。
仰向けの体勢で、随分長い間眠っていたらしい。
視界には、満点の星空が広がっていた。
「夜か。俺は一体」
腹部の辺りに違和感を感じ、寝たままの体勢で視線だけをうつすと、イチカがテディの腹を枕替わりに気持ちよさそうに眠っていた。
「うへへ、モフモフ最高」
寝言を放つイチカに、テディは困惑の表情を浮かべる。
(…小娘。身動きがとれない)
「おっ。起きたかテディ。身体の調子はどうだい?」
焚き火の方から、果物を片手にマヒロがやってきた。
見ると、そこかしこに貯蔵していた木の実や酒樽が散らばっており、ギャングウルフやディアーたちが皆ほろ酔い顔で幸せそうに眠っている。
「宴でもしてたのか?」
「ああ、テディが寝てる間に色々あってね」
マヒロが大雪崩を食い止めたあと、倒れていたウルフ達やディアー、そしてテディのボロボロの身体を治癒した。
「ありがとう!あんたは命の恩人だ!」
義理堅い、ウルフ達は涙ながらに感謝を告げると、食料庫から大量の食物と酒を持ち出し、マヒロとイチカの歓迎の宴が始まった、というわけだ。
それから数時間が経ち、マヒロ以外のみんなは幸せな眠りについている。
「みんな、人間の言葉喋れたんだな」
「ああ。人語が喋れる魔獣は希少性が高く、研究材料にもなる。
高値で取り引きされるために、人間に狩られるリスクが高い。
だから、あいつらには人間の前では決して喋らないように忠告してたんだが」
「みんなベラベラ愉しそうに喋ってたぞ。
唄ったり、酔っ払ってくだまいたり、飲み比べの対決始めたり」
「そうか、それだけお前達に心を開いたってことだな」
「テディ。あんたはいいファミリーを持ったな。『どうか兄貴を救ってくれ!!』って、みんなで頭下げて頼んできたよ」
「…ああ、馬鹿だが。俺の自慢の家族だ」
テディは嬉しそうにほほ笑む。
「なあマヒロ。お前は一体何者なんだ?
雪崩をとめたり、大怪我を簡単に直したり。ただの人間じゃないってことはわかるんだが」
「…テディは疫病神ってしってるか?」
「噂はな。伝説上の神だろ。実在するのか?」
「ああ。3年前にそいつを討伐したんだ。そのときに、呪われて神の力をもらってしまったってわけ。
で、その後軍に裏切られてね…」
マヒロは、これまでの顛末をゆっくりと語り始めた。
「…そうだったのか。それで、小娘と一緒に王国への復讐を果たそうってわけか」
マヒロは、静かにうなずき返した。
「なあ、マヒロ。勝手なお願いだが、聞いてもらえるか。
…俺もお前たちと行動を共にさせてほしい」
テディはまっすぐにマヒロに視線をむけた。
「俺はかつて軍に捕らえられ、兄を殺された。
いつか必ず復讐を果たす。
そう胸に刻みながら今日まで生きてきた。
だが、同時に軍の恐ろしさも身に染みていた。
ただ一人で戦ったところで、殺されるのがオチだと。
復讐心と恐怖心の両方の気持ちに葛藤しながらの毎日だった。
そんなとき、お前と出会った。
マヒロ、お前は俺の知る誰よりも強い。
そして、俺や俺のファミリーにとっての恩人だ。
救われたこの命をお前に預けたい」
テディの力強い眼差しに、マヒロは静かに空を見上げた。
「あんたがついてきてくれるなら、俺も頼もしいよ。
それにどうせ断ってもきかないんだろう?」
「ああ、もちろんだ」
マヒロの差し出した手に、テディもその手を合わせた。
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