雪災の大雪崩 VS 厄災の火砕流拳
マヒロは足元に横たわるテディをかつぐと、イチカの方に放り投げた。
その巨体をイチカはつぶれそうになりながらも受け止める。
「イチカ、みんなと一緒にもう少し下がってろ」
「団長…どうするつもりですか?相手は本物の災害ですよ」
「心配するな。誰も死なせない」
マヒロの背後から眺めていたイチカは、直後マヒロの身体が変化する光景に息を飲んだ。
巨大な津波のように襲いかかる雪崩の眼前に立つマヒロ。
その血管と肌が次第に赤黒く変色していく。
細胞変容による内蔵そして筋線維の硬化。
さらに血流増加による急激な体温上昇は、体内を流れる血液を、火をも焼き尽くす温度にまで変化させた。
その姿は、まるで灼熱の地獄に住む悪魔のようだ。
マヒロは右の拳を力強く握りしめた。
掌から雪の地面に血が滴り落ちる。
その血が触れた雪の地面が瞬く間に蒸発する。
直後掌から、大量のマグマ状の血液がマヒロの右腕を覆った。
マグマの血液を纏い、巨大化した拳。
その拳を全力でぶつけるために、マヒロは右腕を大きく振りかぶった。
「雪の災害と、厄災の力。どっちが上か試してみよう」
マヒロは、巨大なマグマで包まれた右腕を迫りくる大雪崩に向けてはなった。
『火砕流拳!!』
すさまじい勢いで襲い来る大雪とマグマの拳。
それは、巨大な白竜と赤虎が雄たけびをあげながらぶつかりあうほどの光景だった。
その衝突は、天空が割れるほどの衝撃を放っていた。
大量の雪が一瞬で溶ける蒸発音、と煮えたぎるマグマの轟音が広大な森中に響き渡る。
イチカは、衝撃で吹き飛ばされないように、テディの身体を支え地面にうずくまるのが精いっぱいだった。
*
大地を揺らし続けた轟音が収まったとき。
イチカはおそるおそる目を開いた。
あたりは蒸発した雪崩により、大量の白煙に覆いつくされていた。
マヒロの正面には、冷え固まった、赤黒い溶岩石でできた巨大な城壁のような壁がそびえ立っていた。
赤黒く染まっていたマヒロの全身が、徐々にもとの白さにもどっていく。
「なんとか片付いたな」
マヒロは振り返り、イチカに無邪気な笑みを向ける。
「…死ぬかと思いました」
イチカは、安堵のため息とともに腰をぬかし、その場にしゃがみ込んだ。
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