マヒロ VS テディ (2) ―素手喧嘩(すてごろ)―
「どんなトリックを使った?」
「何も使っていやしないさ、気合で耐えた。あんたとは拳で語り合いたい。
だから、刀も、祈術も、厄災の力も使わない」
マヒロは、自らの拳を握り、ぽきぽきと骨を鳴らした。
「この俺相手に素手喧嘩か。上等じゃねえか」
テディもその巨大な拳を握り、マヒロと同じく骨を鳴らした。
「今度は俺の番な」
直後、テディの視界からマヒロの姿が消えた。
(早い)
次の瞬間、テディの分厚い毛皮で筋肉で覆われた腹部に、マヒロの拳がめり込んでいた。
周囲に衝撃波が巻き起こり遅れて、爆音にも似た激しい轟音が鳴り響く。
『正拳突き!!』
テディは口から大量の胃液を吐き出した。
3トンはあるはずのテディの巨体は、背後の森林の方向にすさまじい速度で吹き飛んでいった。
「俺も格闘技おたくでね。一通りの体術はマスターしてるんだ」
マヒロは突き出していた拳を腰もとに引きながら言った。
「東国の体術・カラテ。
正拳突きは熊殺しの拳とも言われるらしいが、本物のクマに使ったのは初めてだ」
イチカは、その光景を目を丸くしながら眺めていた。
(これが、元第一師団団長の力。すっかり忘れてた…この人は疫病神の力がなかったとしても、十分怪物なんだ)
「2、3kmは吹き飛んだか?」
マヒロは目の上に手を当てて、テディが飛んで行った方向を見ていた。
「やっつけたんですかね?」
「いや、あいつはそんなやわじゃないさ」
ズシン― ズシン―
しばらくすると、大地が揺れるほどの足音が森の向こうから聞こえてくる。
「ほらな」
テディは進路にある、倒れた大木を空中高く放り投げ、ゆっくりとマヒロのもとまで戻ってきた。
「効いただろ?俺の拳」
尋ねるマヒロに、テディは口元の土汚れをぬぐうと苦々しく頬を緩めた。
「まあまあだな」
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