マヒロ VS テディ
刀を鞘に納めるイチカの後ろには、意識を失ったウルフたちが地面に倒れこんでいる。
「私、祈術が使えるなんて言いましたっけ?」
「いや、なんとなくわかるんだ。一応、俺も、妹のクロエも使えるからな」
祈術・古神祷技。
数千年も昔から、東の皇国・イスタニアでは自然物を神や精霊として崇める、祈りの文化が根付いていた。
そしてそうした祈るものの中には、自然の力を体内に取り込み操作できるものが現れた。
一説では、祈りの力は、細胞に宿り、そして遺伝するとまで言われている。
「そうでしたか、何はともあれ…あとは任せますね」
イチカはそういうと地面に倒れこんだ。
お腹から「ぐ~~」という緊張感のない音が、森に響き渡った。
「すいません、、お腹が空いてもう限界です」
マヒロは、イチカの方を向き苦笑しながら告げる。
「よくやった。後は任せ、」
マヒロが言い終わる直前、激しい衝撃と共にマヒロの姿が消えた。
背後の大木をいくつもなぎ倒しながら、マヒロの身体は一瞬で数キロ先まで吹き飛ばされた。
「団長!!」
イチカの視線の先には、こぶしを突き出したテディの姿があった。
(今の、ただの正拳づき?なんて力)
「祈術だか、疫病神だかしらんが。サシの勝負でよそ見するなよ」
テディは、めんどくさそうに肩を回す。
「一撃でおしまいか。所詮は人間だな。
言い忘れてたが俺の拳は大地をも割る。
真の野獣の力の前じゃ、力自慢も意味をなさない」
テディは、ゆっくりとイチカの方に視線を向ける。
「頼みの団長とやらは、もう原型とどめちゃいねえだろう。
女。お前の肉を食らうとする」
地面に倒れこんだまま身動きの取れないイチカの方に、テディは歩み寄ろうと足を踏み出したときだった。
衝撃でなぎ倒された大木の向こうから、テディは今までに感じたことのない覇気を感じた。
「俺の拳をまともに食らって、なぜ生きてる?」
視線の先。
土煙で顔を汚したマヒロが立っていた。
「いやー、見事な正拳突きだった。
野生の魔獣が、武術まで扱えるなんて反則だろ。
しかし、現役時代でもあんな強力なパンチはうけたことないかも」
マヒロは嬉しそうに頬の土汚れをぬぐいながら、テディのもとに歩み寄る。
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