祈術 『古神祷技・水霊』
「俺の魔術、『グラスロープ』を力づくで解くとはな」
「こう見えて武闘派なんだよ。あんたと同じでね」
(ホワイトキンググリズリー。
こいつの圧は並みのA級レベルじゃない。
それに、大地の魔術以外に、まだ何か切り札を隠しているな)
「ずいぶん楽しそうだな」
テディに指摘され、マヒロは自分の頬がいつの間にかゆるんでいたことに気が付いた。
「ああ、ばれたか?わけ合って3年ほど封印されてたんでね。
久々に本気の喧嘩ができると思ったら少々気持ちが昂ってる」
「そうか、こちらも退屈しのぎにはなりそうだ。
おい、お前ら!この男は俺がサシでやる。お前たちはその女を食っていいぞ」
テディは周囲のギャングウルフたちに声をかけた。
マヒロはイチカの方に視線を向けると、イチカも力づくで自身の身体を拘束する蔦をほどこうとしていた。
「イチカ!動けるか?」
「団長みたいに馬鹿力じゃないんで無理です!」
獰猛なウルフたちがイチカのもとににじりよる。
皆体中に紫色の血管が走り、最初に遭遇した時よりもはるかに筋肉量がましていた。
「力が無理なら頭を使うんだ。イチカ、冷静になれ。お前ならできるはずだ」
「冷静にって言われても…」
マヒロは落ち着いて諭すように、混乱するイチカの瞳を見つめ返す。
「狼たちに食い殺されるぞ。諦めるなら、神にでも祈ってみたらどうだ?」
「祈り…」
マヒロの言葉にイチカは冷静さを取り戻す。
そして、静かに深呼吸をする。
「団長、ありがとうございます。ちょっとぱにくってましたが何とかなりそうです」
ウルフたちがイチカのすぐ目の前にまで迫っていた。
イチカはゆっくりと瞳を閉じる。
次の瞬間、イチカの身体を拘束してた蔦が急激に膨張しはじめ、大量の水分と共に弾け飛んだ。
ギャングウルフたちは、目を丸くして足を止める。
イチカの周囲を透明な水のような闘気が覆っていた。
「なんだ?あの女、水の魔術の使い手だったか」
テディは訝しげにその光景を眺めていた。
「いや、あれは魔術とは少々異なる。東国に伝わる祈術と言われるものだ」
「祈術だと?」
「使える術氏はかなり限られているがな。やはりあいつも使えたか」
イチカはゆっくりと刀の束に手をかける。
水の闘気が今度は刀を覆った。
『古神祷技・水霊』
本能的に生命の危機を感じたウルフたちが、一斉にイチカにとびかかる。
『精霊流し』
イチカは流れるような足さばきでウルフたちの攻撃をかわす。
それと同時に、抜刀のあとをまるで川のような水流が生じていた。
水の勢いと闘気をまとい鋭さを増した斬撃は、ギャングウルフたちの分厚い筋肉の鎧を容易く切り伏せていた。
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