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天音マヒロ VS 疫病神 (2) ―決着―

マヒロはまたしても瞬時に間合いを詰める。

「早いのは認める。だが、ワンパターンだな」

トキシカントの左腕は剣の形に再生し、マヒロの首元めがけ振るう。

刀を振るう素振りをしたマヒロは、身を屈め力強く地面を足で踏み抜いた。

その衝撃で巨大な砂煙がトキシカントのしかいをうばう。

「なるほど」

「お前の心臓もらうぞ」

マヒロは昂る気持ちを抑えるように、瞬時に呼吸を整える。


古神祷技(こしんとうぎ)八百万(やおよろず)風霊(かざだま)

空間を切り裂くほどの猛烈な風のような闘気がその刀に纏りつく。


神月(かんづき)!!』

狂風のごとき懇親の突きがトキシカントの胸元に突き刺さった。


砂埃が晴れる。

マヒロの刀はトキシカントの胸元に当たっていた。

しかし...黒い鎧のように硬化した皮膚が、マヒロの渾身の一突きがトキシカントの体内に侵入するのを阻止していた。


「...細胞硬化が少し遅れていたら心臓に届いていたかもな。

八百万、、東国に伝わる祈術の使い手とは、肝を冷やした。

おかげで、つい反撃してしまったではないか」

トキシカントの右腕がマヒロの片肺を貫いていた。


「目覚めの運動にしては楽しかったぞ、小僧。

もう楽になれ。私は外に出るとする」

「...行かせるかよ」

トキシカントは驚いた。

「倒れないのか」

肺を損傷しているはずのマヒロは燃えるような瞳でトキシカントを睨みつけていた。

震える両の手に力を込めて鞘を支える。

「称賛するよ人間。苦しいだろうからすぐ楽にしてやるが、最後に聞かせてくれ。

...なぜ、そこまでして私を殺したいんだ」

トキシカントは貫いていた右腕を引き抜き、今度は鎌の形に変形させ、マヒロの首元にあてながら聞いた。

「...お前が外に出たら。罪なき人々が平和に眠れないから」

「なぜだ?」

「とぼけるな!!...お前は今までに何万人もの人を病で殺した。

人の命を奪うだけの神なら、俺が殺してやる」

トキシカントは振り上げていた右腕を力なくおろした。

「...そうか、私は人を殺したのか」

トキシカントの気が揺らいだ一瞬をマヒロは見逃さなかった。


「うぉー!!」

マヒロは力を振り絞り、両手に一層力を込める。

刀先がトキシカントの心臓を貫いた。

貫いた自身の血のついた刀身を掴みながらトキシカントは呟いた。


「...感謝する。これで終われる」


トキシカントの身体が灰のように崩れていく。

その顔が崩れる前にトキシカントは言った。

「最後に忠告だ。死にたくなかったら、しっかり息をしろ」

トキシカントの身体は崩れ去った。

刀の先にはまるで石のようなトキシカントの心臓が刺さっていた。

その心臓も灰になって風に舞った。


(...倒した)

マヒロは地面に倒れ込む。

この日のために幼少期から激しい訓練に耐え続けてきた。

いつしか、王国で比肩なき兵士となり、ついには疫病神を討った。

...しかし、その心には達成感はなかった。

その脳内にはトキシカントの最後の表情が焼き付いていた。

悲しげな笑み。


(...なんであいつはあんな悲しい顔をしたんだ)

マヒロは立ち上がれないまま考えていた。

(まあいい。俺は疫病神を倒したんだ。...苦しいな。多分死ぬな。でも皆を守れた)

「ゴホゴホッ」

マヒロは力なく咳払いをする。

(人の肺つぶしといて、息をしろ、とかわけわかんねえよ..)

ヒュー…ヒュー…

(まだ俺は死ねない、クロエを一人にする訳には..)

消えゆく笛の音のような呼吸をしながら、マヒロは意識を失った。

貴重なお時間を割いて頂きありがとうございます。

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