魔獣の怒り
(いや、そんなことよりこの状況絶体絶命のピンチなのでは)
イチカは今の自分が置かれた危機的状況に気がついた。自分の身体を拘束するように何重にも絡まる蔦。
力任せに抜け出すことは出来そうにない。
ましてや、空腹で力の入らない今の状況なら尚更だ。
「団長!どうしましょう!このままじゃ二人とも食べられちゃいますよ」
「…団長?」
イチカの発した言葉に、それまで落ち着いたトーンで話していたテディの目の色が変わった。
明らかに怒りに満ちている。
「おい、女。その刀、軍の支給品か?」
テディは、イチカが腰に下げた刀を指さしながら尋ねた。
「えっ、ええそうよ!私たちは十字軍の兵士」
「…そうか、お前ら腐った十字軍の兵隊だったか」
そう言うと、片足を頭上に高くあげ、まるで四股を踏むように、上げた足を地面に踏み下ろした。
衝撃で地面が割れ、周囲の大地が地震のように激しく揺れる。
フヴアー!!
テディは獣のような息を吐き、マヒロとイチカを睨みつけた。
「団長、私何か地雷踏みましたかね?」
「みたいだな」
テディは肩を廻し、ゴキゴキと骨をならしながら言った。
「俺は人間が好きじゃねえが憎んじゃねえ。
狩られる分、俺たちも人間を狩ってきた。
だが、お前らは十字軍は別だ。
さっきの言葉は撤回する。今生の言葉を残す暇なく、殺してやる」
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