A級魔獣・ホワイトキンググリズリー
二足歩行で口元に葉巻を加え、片目に眼帯をした体長3メートルを越える筋骨隆々のシロクマ。
北の大地の支配者の異名を持つ、アイシーウッズ最強のA級魔獣・ホワイトキンググリズリー。
「あんたか?この地の魔術を使ったのは」
蔦で拘束されながら尋ねるマヒロの質問に、グリズリーは静かにうなづくと、落ち着いた仕草で加えた葉巻の煙を吐き出した。
その仕草はまるでマフィアのドンのようだ。
「俺には親がくれた誇り高いテディという名がある」
「悪かったよテディ。で、俺たちをどうする気だ」
「わかり切ったことをきくな、人間」
テディという名のシロクマは、魔術で土製の即席ポケット灰皿を作ると、葉巻をその中に捨てた。
「久々の人間なんでな。我らファミリーでありがたくご馳走させてもらう」
テディは指笛を鳴らすと、背後の木々をかき分け、今度は巨大な鹿の魔獣が姿を現した。
ディアボロディアー。
同じくA級の魔獣だ。
テディよりも巨大な身体は、体高だけでも5mはある。
「俺の相棒・ディアー。
見た目は巨大なヘラジカだが、こいつの牙は竜のうろこさえも容易に貫通する」
「なるほど、森の魔獣オールスター勢揃いってわけか」
マヒロは周囲を取り囲むおよそ20体のウルフたちと、正面のテディ達を見ながら呟いた。
「しかしなぜわざわざ姿を現してくれたんだ?
俺達はこの蔦のせいで身動きが取れないんだから、とっととこの狼共にとどめをささせれば良かったものを」
マヒロは、落ち着いた口調で尋ねる。
「俺なりの流儀さ。今生の別れの言葉を聞いてから、とどめをさすようにしてる」
「クマの割に、義理堅いんだな」
「別に。ただ生への執着や後悔を残した人間ってのは…苦いもんでな。
後悔の言葉をはきださせてから息の根をとめる。…死んだ兄貴が決めた殺生の掟に従ったまでだ」
イチカは、2人のやり取りを緊張した面持ちで眺めながら心の中で思った。
(…なんだこのハードボイルドなクマさんは)
貴重なお時間を割いて頂きありがとうございます。
本作に少しでも興味を持って頂けたら、下記2点より作品の評価いただけると幸いです。
執筆の励みになります。
・「ブックマークに追加」
・下部の☆☆☆☆☆をクリック