イチカの寝室にて ―束の間の休息―
自室に戻り、イチカがシャワーを浴びている間、マヒロはウサギ姿のままふかふかのベッドの感触を満喫していた。
「人類最大の発明は、火でも鉄でもなく、快適な寝具なのではないだろうか」
マヒロは至福の表情で目を閉じ、髭をひくひくと揺らしている。
「…なっ!モフモフがフカフカを堪能している。こんな…眼福!!」
湯上りに、パジャマ姿に着替えたイチカは脱衣所からあがると、興奮を抑えきれずにマヒロに飛びつき頬をすりすりした。
「癒し癒し!!」
「お、おい!お前やめろ!」
「たまらんです!!」
「ちょ、、やめろってば!!」
「…はっ!す、すいません団長!私、可愛いものに目がなくて」
我に返ったイチカはベッドの上で、素早い身のこなしで、瞬時に土下座の態勢をとっている。
「ま、、まあいいが。一応、俺もとは人間の男だからな。それに、お前まだ17才だろ。
おっさんが未成年の女子に頬をすりすりするされるなんて、国民法32条に触れる。大罪だ」
「団長…頭良いのは知ってましたけど、頭固くもあるんですね。そもそもあなた死刑囚じゃないですか」
「いや、法律云々の話ではなく、俺の気持ちを考えてくれ。
お前、何ていうかちょっとクロエに雰囲気に似ているから、兄としては、こういうことされるのすごい複雑なんだよ」
マヒロは、気まずそうに頬を赤く染めそっぽを向いた。
「えっ!クロエさんに似てます?嬉しい!
…あれ、そういえば私の年齢何で知っているんですか?言いましたっけ?」
「あっ、ああ。これも疫病神の能力だ。体組成と細胞から相手を見ただけで実年齢がわかる」
「…女の敵みたいな能力ですね。団長は23才でしたよね?」
「三年前はな。今は一応26か。
もっとも、疫病神の細胞を取り込んで人外になった俺に、もはや人の年齢が当てはまるのかはわからんが」
切なげにつぶやくマヒロに、イチカはいたたまれなくなり深く頭を下げた。
「団長、変な質問してすみませんでした」
「いいんだ。気にするな!そんなことより早く寝よう」
「はい!団長はその姿のままですか?」
「ああ、一応アストンたちのことも警戒しないといかんしな」
「わかりました。団長、おやすみなさい」
そういうとイチカは、マヒロのおでこに手を添えてすぐに寝息を立てた。
(鎧を脱いだら、普通の少女なんだな)
マヒロは、幸せそうに眠るイチカを見て、心が癒されるのを感じた。
(クロエは無事だろうか…。
待っててくれ、まずお前に、兄さんが生きているってことを知らせなきゃ)
マヒロは強い誓いを立てた後で、溶けるように眠った。
貴重なお時間を割いて頂きありがとうございます。
本作に少しでも興味を持って頂けたら、下記2点より作品の評価いただけると幸いです。
執筆の励みになります。
・「ブックマークに追加」
・下部の☆☆☆☆☆をクリック




