監視棟にて ―うさぎに化けた疫病神と不良兵たち―
「ただいまー…」
イチカが監視棟に戻った頃には、夜中の0時を過ぎていた。
声を殺しながら正面玄関の扉を開けて建物の中にはいる。
「おかえり!イチカちゃん」
「ひぇっ!!」
突然声をかけられ、イチカは悲鳴をあげる。
二人とももう寝ているかも、というイチカの期待は外れ、建物に入ってすぐの広間にアストンとバップが待ち構えていた。
「てめえ!今までどこに行ってやがった」
「えっ、、えーっとそのー、く、くま!白くまの咆哮が聞こえたんで!
退治しに行かなきゃと思って」
「白くま?」
アストンは疑いの眼差しを向ける。
「まあいい。で、そのモフモフは何だ?」
イチカは胸元に大事そうに雪うさぎを抱えていた。
「わ、私ぬいぐるみ抱かないと眠れない習性でして。これ本当ですよ!小さい頃からずっと!」
「別にお前の習性知らねえよ」
(…この子は嘘をついたことがないのか。芝居が下手すぎる)
胸元に抱えられた雪うさぎ、、に細胞変容の能力で姿を変えたマヒロは呆れながら心の中でため息をついた。
「外で見つけたのでつい捕まえて来てしまいました。私の部屋でペットとして飼わせてください!」「ふーん、、ペットねー」
アストンがマヒロに顔を近づけた。
(…しかし、駐留兵がよりによってこの二人とはな)
マヒロは十字軍の兵のことは、一般兵のことでさえよく知っていた。
アストンとバップ。
悪い噂の多い、素行不良で有名な二人だ。
特にアストンにいたっては、かつて自身が属する第一師団直属の部下であった。
自身の身を守るためではなく、ただ楽しむために魔物を殺す姿に、何度も厳しく叱責したことをよく覚えている。
「まあ、いいんじゃない。イチカちゃんもこんな場所じゃ癒しが必要だろうしね。なっ、アストン」「好きにしろ」
バップが、マヒロの頭部を撫でる。
その邪悪な笑みにマヒロはおぞましさを覚えた。
(こいつら…何か企んでるな)
「ありがとうございます!では、おやすみなさい」
そう言うとイチカはマヒロを抱えて急いで自室に戻った。
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