旅立ちの前に
「出発は明日の明け方だな」
「えっ、、なんでですか?今すぐ行きましょうよ」
「いや…自分で言うのもなんだけど、お前さっきまで俺のせいで死にかけてたんだぞ。
暖かい部屋で一晩しっかり身体を休めるんだ」
「でも、もう結構元気です!」
「駄目だ。エビアスの町までは、魔物の住む森を抜けて何日もかかる。 暗いうちは危険だ。
それに、他の駐留兵に別れぐらい告げたいだろ?」
イチカは、アストンとバップのことを思い出し、顔をしかめた。
「あー…あの人たちは別に。でも、そこまで言うなら分かりました!
それなら団長も一緒に部屋で休みましょう!」
「いや、俺は外で待ってるよ」
「そんな!だって無実の罪着せられて3年間もあんな処刑場に封印されてたんですよ!
ふかふかのベットで休みたいと思わないんですか!?」
「ふかふかのベッド…」
マヒロは、その響きの強烈な誘惑に気持ちが揺らいだ。
3年間燃え滾るマグマの中で怒りに燃えていたマヒロに、「ふかふか」という強大な誘惑の言葉に抗うすべなどあるはずがなかった。
「ま…まあ、お前がそこまで言うなら」
「よかった!じゃあ戻りましょ。あっ!!」
「騒がしいな。今度は何だ?」
「いや…、よく考えたらちょっと問題が」
「問題?」
「団長って…その、色んな意味でとんでもない有名人じゃないですか。
監視棟にいる先輩の兵達ももちろん団長の姿知っていると思うんですけど、
3年前の真実話して、団長の無実を訴えても多分聞き入れてくれる人たちじゃなさそうな気がして。そもそも団長が生きてるってこと自体とんでもない大ごとですから」
「…あぁ、なるほど。たしかにまだ存在を知られるのは面倒だな」
マヒロはじっと考え込んだ後で、イチカに尋ねる。
「この辺りに動物はでるか?」
「動物ですか?昨日森で雪うさぎなら見かけましたよ。すごいモフモフして可愛いかったなー」
「うむ…うさぎか。試してみよう」
「試すって、何をですか?」
首を傾げながら尋ねるイチカにマヒロはイタズラっぽく微笑みを返した。
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