疫病神の目覚め ―氷湖上の決闘―
周囲を防壁で囲まれた、広大な氷の湖。
その氷の平原の中心部に立つドーム状の建造物=アイスマグナ。
その頑強な建物の壁が内側から雷鳴の如き轟音を発する、黒い爆炎と共に消し飛んだ。
蒸発した扉の周囲には、黒い炎のように『邪気』の破片がメラメラと揺れている。
「…3年振りか」
背中まで伸びた白い髪に白い肌、そして氷のように冷たい瞳を携えマヒロは3年振りに外の空気を浴びた。
「少々冷える」
マヒロは自身の髪の毛を1本抜く。
『 細胞変容・繊化』
瞬く間に髪の毛が白い布状に代わり、マヒロの身体を着物のように覆った。
「すこしはましだな」
マヒロは氷の湖の上を歩き、周囲を覆う外壁に向かって歩き出した。
外壁の巨大な扉まで100メートルほど近づいたとき。
一太刀の斬撃とともに扉が外側から切り落とされた。
「…なんだ、お前は」
冷たく睨みつけるマヒロの視線の先には息を切らしたイチカの姿があった。
「やはり、蘇ったのね」
イチカは呪布で覆われた刀を、真っ直ぐにマヒロに向けている。
「十字軍第三師団・イチカ=シオン!疫病神、天音マヒロ!…お前を討伐する」
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