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第3話:アマテラ襲来

 

 ボリボリと ベッドでむさぼる ポテト菓子

 せめてお手々は ティッシュで拭いて?

 ―――大地心の俳句。

 偉大なる女神と自称するアマテラは連日、オレのベッドに寝ころびながらお菓子を召し上がっておられるわけで。食べクズとか気になさらないわけで。

 てかそのシーツ、十五万くらいするんだけど? 高級シルクは神様的にはちょうどいい手拭き感覚なわけ?

 いや、違うかも。

 多分、掃除するって発想がないんだろうな……。きっといつも、お世話してくれる誰かがいたんだろう。もしくは、タオルとか全部、使い捨ててた?

 いやそもそも、神様ってタオルとか使うの?

 寝転がってポテチバリバリ食べるの?

 いやそもそも、物を食べるの?

 タオル必要な行動って、神様に必要なの?

 なんかイメージ湧かないっていうか……。とりあえずこのアマテラの姿を、神の平均的な行動だと思わないようにしよっと……。

 まぁ、そんなことよりも、だ。

 今は確認しなきゃいけない問題が山積みなのであるからして。

「……なぁアマテラ」

「なんだい?」

「オレのクローゼットってさぁ……こんなにデカかった?」

 デカい……。

 甲子園球場十個分くらいの巨大空間が発生してる……。

 なんなの? どんな仕組みなの? ひょっとしてクローゼットを四次元なポケット的な感じになっちゃったの?

「僕の神権で拡張したのさ! 君と僕、あとは神々や眷属にしか見えないから気にしないでくれ給え!」

「……そうですか」

 いや、気になるから。

 オレの服とかアレとかどうしたの? 健全なDKのクローゼットには秘密がいっぱいなんだよ? 勝手に開けたり見たりしちゃダメな空間なんだよ?

「お? 桜餅ができたみたいだね!」 

「ソウデスネ」

 巨大な空間に、デカデカと桜餅工場が建ってる件については、不問にしとこう。アマテラは桜餅が絡むとめんどくさい系女神だから。

 でも、あの工場で桜餅を大量生産してるなら……オレ別に小遣いで桜餅大量定期購入しなくてもよくね?

 読モとかで稼いだ金がどんどん餅代になってるんですけど?

「……なぁアマテラ」

「なんだい?」

「あそこにある城みたいなのは何?」

「僕の居城さ! 超快適だよ!」

「……ソウデスカ」

 なら、毎日オレの部屋でゴロゴロしなくてもよくね?

 てか俺にもプライベート空間くれよ……。DKの悶々なめんなよ?

「……なぁアマテラ」

「なんだい?」

「あそこのプールでセレブ感出してる皆様は誰?」

「僕の眷属たちさ。週に三日は休暇をとって、ああして寛いでるのさ」

 え、なにそれ。

 超優良企業じゃん。

 オレもそこで働きたいんだけど?

「……ちなみに報酬はいかほどで?」

「報酬? あぁ、お金ってやつかい? 無償だよ!」

 オッケー超ブラックね。悪魔と労使契約するとこだった。

 はっ⁉ ま、待てよ? 

 オレいつの間にかアマテラの召使いっぽく扱われてるんだけど? それってオレ、いつの間にか眷属にされちゃってるってこと?

「違うよ~」

「ならばよし!」

 てか善処お願いします! ごくごく自然に心の中を読まないで……くれないか……。

 しかし、眷属じゃないとなると……なんだろ?

 ひょっとしてオレ、うっかり契約しちゃったわけ? ほら、漫画とかであるじゃん? エッチぃ本にたまたまはさまってた魔方陣に鼻血を垂らしちゃったてさぁ。かわいい小悪魔と契約しちゃいました? 的な? そんな感じでいつの間にか無自覚にアマテラとうっかり契約しちゃった?

「なぁアマテラ」

「なんだい?」

「なんで家に来たわけ? てかなんで、オレが選ばれたの?」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

「うん。全然。まったく聞いてない」

「そっか。えっと……君の遠縁にあたる人が僕の友だちでね! それで君が選ばれたのさ!」

「遠縁?」

「そうさ! カイトって言ってね。ま、僕が色々面倒見てやってるんだけどね? そのおかげで彼も立派になったわけなのさ! だからカイトは僕に頭が上がらなくてね!」

「ふ~ん」

 カイトさん、か。

 聞いたことあるような、ないような……。

「ま、彼を世話したやった恩を、君に返してもらうことにしたのさ!」

「え? なにその超論理」

 超迷惑なんですけど?

「それに君、キングなんだろ? つまり王じゃないか! 王なら当然、この星の民を救う役目を担ってしかるべきだ!」

「や、オレ確かにキングって呼ばれてるけど。別に王じゃないよ? 平々凡々ごくごく一般的な普通の家柄なんだけど?」

 まぁ、そこそこ金持ちの家柄だけど。

「そうなのかい?」

「うん」

「ま、だったらこれから王になればいいさ! この僕の目に間違いはないからね!」

「……そうですか」

 ダメだ。

 コミュニケーション成立しない。

「なぁアマテラ」

「なんだい?」

 だ・か・ら! 人の布団の上に寝そべって、謎のゲームを楽しみながらポテチをバリバリ食べるのは止めて頂きたい! てか心読んでるよな? 都合が悪いことはスルーかよっ!

「何か質問があるんじゃないのかい?」

「あ、そうそう! あのさ、天災ゲージなんだけど……どういう仕組みなの?」

 解除条件って誰が決めてるわけ?

 災害と解除条件の間に、どんな法則が成立してるわけ?

 オレ的にはそこんとこハッキリして欲しいんだけど。

 毎回、すっげモヤるから。

 それにターゲットだよ、ターゲット。

 アレ、どんな基準で選ばれてるわけ?

 見ず知らずの女子大生とか、親友とか。

 それに一番最初のターゲット……アレはなんだったんだ?





 ――――――第3話:アマテラ襲来




 そう。

 あれは目覚めたら美女―――アマテラがベッドの上にいた日。

 そしてオレがパン(いち)で土下座を放ってから、だいたい二時間後のこと。

 わけもわからず外に出たオレに、テレパシーでガンガン命令と説明を繰り広げるアマテラの指示に従って。

 オレは全力ダッシュで近くの神社―――といっても自宅から三キロほど離れたところにある、くたびれた小さな鳥居の前にいた。

 すると、目の前にふわりと美女が―――アマテラが降臨したんだ。

 この世のものとは思えない美しさに……オレは息を飲んだ。

 真っ黒な長い髪にハッキリとした目鼻立ち。まるで太陽の焔のような羽衣と、深い闇の帯を妖艶にたなびかせた姿は、圧倒的な美の化身。

 まさに……絶世の美女降臨って感じだった。

 オレの部屋に居たときは、だいたいタメくらいの雰囲気だったのに……。神社に降臨したアマテラは、成人した女性の姿で……。凛とした美しさに、意志の強さを感じさせる印象的な瞳を携えた超絶お姉さんオーラのアマテラは……見とれてるオレに満足そうに微笑んだ。

「さて……行こうか」

「お、おぅ」

 ドカドカと境内に入り……お世辞にも綺麗とは言えない小さな本殿へと突入したアマテラ。

「いるんだろ? 出ておいで?」

 艶やかにアマテラの言葉が響き渡る屋内。

 誰もいない。

 もちろん無人のそこに……アレは突如、現れた。

 静に、音もなく。

 ただかすかな光を携えて。

 アレをどう表現していいのか、オレにはわからない。

 それは、アレを表現する言葉がこの世界から失われたからだ―――そうアマテラが教えてくれた。

「大地、見えるかい?」

「あぁ、見える」

 アレの隣に。

 ゲージと、解除条件が一つ……オレには見えた。

 残り三時間。カウントダウンが進む先に待つ未来は―――火山の大爆発。

 災害レベル五。

 それは、これから数十年に及ぶ大被害の到来を、確かに告げていた。

「大地。君が解除条件を満たさないと―――」

「―――わかった。火山の噴火が起こる。しかも次々と」

「理解が早くて助かる」

 不敵にほほ笑んだアマテラに、唾を飲むのも忘れたオレ。

 ただただ、見とれていたんだと思う。

「さ、解除条件を満たすがいい。それが君の定めさ」

 アマテラがユラリと指さしたそこには……こう記されていた。

 意味を与えよ、と。

「条件を満たせって言われても……そもそもアレ、どういう意味なわけ?」

「悪いが僕にもわからないよ。なぜならそれは、僕の役目じゃないからね」

「……そっか」

 そこでオレは、ようやく考え始めた。

 意味を与える―――その条件の意味を。

 なんとも形容しようのない姿をしたアレと、ずっと向かい合いながら。

 不思議と、焦りはなかった。

 なんとなかる―――そう思えた。

 多分、アマテラが隣にいてくれたから。

 見つめること一時間半……それは起こった。

 どちらが最初だったかは、今でも判然としない。

 ただ、オレは思ったんだ。

 まるで卵のようだと。

 それとほぼ同時に、あるいはそれより前に……アレに変化があった。

 なんとも言えない色が、オレが識別できる色に変わって。

 なんとも言えない形態が、オレが判別できる器官へと変わって。

 それはまるで、母親の胎内で細胞分裂を繰り返す胎児のように……生命の発生を再現し始めた。

「おや? それが望みなのかい?」

 微笑んだアマテラの問いかけに、言葉にならない声をあげて。

 アレは……徐々に姿を変えた。

「なら、僕の神威を与えようじゃないか。遠慮せず役立てるがいいさ!」

 アマテラが何を言ってたのか、今でも意味不明だけど。

 神威の授与―――それがとても荘厳で、名誉ある行為なんだってことは、なんとなくわかった。

 アマテラの神威―――部屋中に溢れた太陽と闇黒が相半(あいなか)ばするオーラがアレに吸収されて……変化は劇的に、そしてあっさりと終焉を迎えた。

「さ、戻ろうか!」

「えっと……もういいの? てかオレ、なんにも……」

 してないけど?

「なに言ってるんだい? ゲージが消失してるじゃないか!」

「あ、マジだ」

「つまり君が、解除条件を満たしたってことさ!」

「そうなの?」

「あぁ。君は今、この国を―――民と数多の生命を救ったのさ。誇りに思うといい」

「えっと……ありがと?」

 そう。

 オレは、アレに意味を与えた……らしい。

 それから気になって、たまにあの本殿を覗きに行く。

 そこには……眠りについた子犬が一匹いるだけ。ただ、その子犬は誰にも見えないらしい。神社の掃除してた人には見えてなかったし。

 もはや幽霊なんじゃないの?

 てかだからアレは一体、なんなの?

 そしてオレは、アレにどんな意味を与えたわけ?




 +++




「おや? 回想は終わったようだね!」

「……お待たせしました。てか、人の心読むの止めてくんない? オレ、繊細なお年頃なんで」

 ちょっとエッチなこととか、反射的かつ無意識に考えちゃう年頃なんで。

「善処しようじゃないか!」

 右から左へと聞き流されてる気がするけど……。

 そもそもオレの話、基本聞いてないよね? ゲームしてらっしゃるし?

「ほぅ? この万能の神である僕が? たかだかゲームをしてるだけで? 君の声を聞けないだと?」

 あ……止めて! その炎的なオーラ、ちょっと熱いんだって!

 あちょっと……ちょっと! マジで止めて!

 プスプス燃えてんじゃんかっ……。

「マジで、マジですいませんっした!」

「まぁ……許してやろう。それに、大地の秘密も知れたからね?」

「秘密?」

 思い当る節ばっかりなんだけど……。

「あぁ! 大地が僕の美しさの虜になってるってことがわかったからね! それで良しとするさ!」

「や、違うから。人のベッドの上でポテチバリバリ食べるチビッ子には興味ないから」

 今のアマテラは、小学生くらいのサイズ感なわけで。

 どうせなら、あの艶やかなお姉さんモードでお過ごしいただきたい……。

「それは無理だね。僕もあのとき、アレに神威を結構与えたからね! しばらくはエコモードでいないといけないのさ!」

「……だから人の心を読むなって」

「善処するよ!」

 ったく。

 善処するっていうのは、なにもしないって意味じゃないんだからな?

「いや、そうじゃなかった。だからアレ、なんなんだよ?」

「そうだねぇ……君は知らないものの名前を知っているかい?」

「え?」

「だから、君はまだ自分が知らない何かの名前を、知ることができるかい?」

「や、無理だろ。だって知らないんだから」

 論理的に成立しない。

 なにせ知らないことを知った時点で、それはもう知っていることになるのであるからして。

「まぁね。でもアレは……そういうものだよ」

「は?」

「君たちの星―――地球の住民が忘れてしまったがゆえにその名を失ったアレは……今や君らの見知らぬものになった。つまり、君らにアレの名を知ることはできないよ。今のところね」

「なにそれ? アレに名前はないってこと?」

「あるには、ある。でも今僕がその名を教えることに意味はないのさ。なぜならそれは、アレの本質と重ならない、単なる文字の羅列でしかないからね!」

「なるほどわからん」

「そうなのかい?」

「いや。意味を与えるって意味が、ようやくわかった気はする。忘れられて無意味になったアレに、オレがなにかしらの意味を与えて―――アレは再生を始めたってとこか?」

 完全に再生された結果、アレが何になるのかはわからないけど。

 つまりアレが何かになるまで、アレに名前を付けても意味はないってことか。

「いいね! 大地は理解が早くて助かるよ!」

「ど~も」

 褒められると照れるんだけど?

「ま、そういうことだから。たまに会いに行ってやるがいいさ!」

 ん?

 待てよ?

 オレが気になってるのは解除条件なんだってば。

「それでさぁ、あの解除条件を設定してるのは誰なわけ? てか解除条件と災害の間にどんな関係があるのさ?」

 アマテラじゃないとしたら……誰が設定してるわけ?

「あれは僕の神権だよ? その名もフラグクラッシャー!」

「は?」

「とある出来事―――この場合は天災の発生フラグを強制的にへし折るわけさ」

「フラグをへし折る? 強制的に?」

「解説しようじゃないか! 明日雨が降るって言い続けた結果、実際に雨が降る。これは見事にフラグが回収されたパターンだね?」

「うん。多分そう」

「僕の神権はね! 天災が起こる予兆……いわゆるフラグを察知して、それをへし折る―――つまり様々な災害の発生を防いでるってわけさ! どうだい? すごいだろ?」

「それって、地球がフラグを回収するのを邪魔してるってこと?」

「そう言っていいよ! すごいだろ?」

「すごすぎます……」

 マジか。

 女神様なんでもアリかよ。

「じゃあ、解除条件っていうのは、フラグをへし折るために必要なことなわけ?」

「そうさ!」

「じゃあ……解除条件と天災との間に、関係はないわけ?」

「大地は理解が早い」

「え?」

「君は以前、言ってたじゃないか。超論理ってね」

「……マジで?」

 あれのこと、だよな。

 確か、翔が脱童貞したら……翔がハッピーになる。翔がハッピーになると、社会全体が幸福になる。その幸福が神様の力になって、その力で地震を解消してくれる……つまり神権の効果でフラグをへし折ってくれてるってこと?

 マジで?

「そうだよ?」

「嘘だろ?」

「信仰心はね、神の力になるのさ!」

「それで?」

「でも、この星から神への信仰が途絶えて久しい。現状、信仰心を得ることは困難なんだよね」

「確かに。神の存在は科学的に否定されたからな。数年前に」

「そこで信仰心に近い力―――人々の幸福を糧にして、この神権は発動されてるってわけさ!」

「……なるほど」

 まぁ、アマテラが言うならそうなんだろうな。

「ま、それだけじゃないんだけどね。けど、だいたいは大地が理解した通りの仕組みで発動してるこの神権は、大地の身近な人の幸福欲求に反応する」

「なるほど。その人の願いが、あるいはその人が幸福感を味わえる状態を提供できれば、その分だけ、地球のフラグ回収を邪魔できるってことか」

「そういうこと」

 なるほど。

 つまり翔が脱DTで得られた幸福感は災害レベルⅢを相殺するレベルだったってことか。

 ……クソっ。

 なんなの?

 脱DTってそんなに素敵体験なの?

 だとしたらクッソ羨ましいんだけど?

 でも……待てよ。

 や、違うな。

 それなら別に、翔じゃなくても良かったはず。

 つまり長年寄り添った大好きな恋人と、素敵な思い出をつくれたってポイントも、幸福感マシマシの背景になってる可能性あるなこれ。

「そういうことさ! やっぱりいい! 大地は理解が早くて助かるよ!」

「え? そうかなぁ~」

「そうさ! 君への説明が減った分、僕はその時間を使って桜餅を食べられるわけだからね! この調子で頼むよ!」

「……そうですね」

 なるほど。

 オレの能力を認めてくれたわけじゃないと。

 桜餅を摂取するための時間増に貢献したから褒めてくれたわけね……。

 別に……傷ついてないけど?

「あれ? ちょっと待ってアマテラ。オレはアレの願いを叶えて、アレは幸福感を得たってことで間違いないよな?」

「そうだね!」

「つまりアレは……生命なのか?」

 幸福感を感じるってことは、何かしらの知的生命体だってことだよな

「いや、違うよ。アレは生命体ではない。もっと高次の存在だね」

「ふ~ん」

 高次、ね。

 ま、いずれわかるってことなら、それでいいか。

「ん? 大地―――そろそろ地球がフラグを立てるよ」

「マジで?」

「あぁ!」

 さすが女神。

 変なゲームをしながらポテチと桜餅バクバク中でも危機を察知できるらしい。

「すぐにでも探し始めた方がいいね。この天災フラグをへし折るに足る幸福欲求を持った誰かを見つけるんだ!」

 そいつの居場所も、神権とやらでわかればいいのに。

 ジョギングして街中を探し回るか。それか最悪、電車だな。

 電車に乗って……隣の市まで行って、繁華街で誰か探すことになるかも。

 てか深夜徘徊って校則違反なんだよなぁ。オレ、仕事柄そういうの守りたいんだけどなぁ。

「ほぅ? 何か不満でも?」

「はいはい、わかってますよ」

 今は仕方ないってことくらい。

 ま、万が一補導されたら読モの仕事だったってことにすればいいか……。

「カイト……あれを見てごらん?」

「どうした? テレビでなんか―――」

 ―――嘘、だろ。

「……どうやら地球も本気のようだね」

 や、本気出しすぎだろ……。

 速報―――地球が本気出してまで人類を滅ぼしたい件について……。

 間違いない。

 なにせ巨大な隕石が飛来してる……らしいから。世界各国首脳の共同声明が全チャンネルで生中継されてるし。

 てかそんなの、どうしたらいいわけ?

 逃げる場所なんてないよな?

「ん? 電話かい?」

「いや、警報」

 鳴り響くスマホを手に取って、音を消す。

 多分、日本中―――いや世界中できっと、スマホが叫んでる。

 緊急事態警報を伝えるために。

「なぁアマテラ」

「なんだい?」

「こんな状況で幸福を望む奴なんて……いないだろ」

 仮にいたとして、だ。こんな状況下で、地球のフラグをへし折るくらいの幸福を実感できるヤツなんて……いると思うか?

 いや、いない。

 断言できる。

 明日、自分が死ぬ―――地球が滅ぶと知りながら。

 それでも自分の幸福を心から味わえる人間がいたとしたら、それはサイコさんだと思う。相当なレベルの。

「はぁ~、やれやれ、だよまったく。君は僕を誰だと思ってるんだい?」

「アマテラ、だけど?」

「そうさ! 僕はアマテラ―――最古の神の一柱に数えられし偉大なる女神。太光と闇の境界に立ち、太陽と闇黒を統べるもの」

「そうなんだ」

 ポテチをバリバリ食べてボロボロこぼす桜餅の神だと思ってた。

「つまり偉大なるこの僕の神権に不可能はないのさ! だから探すといい! 汝の望む答えが必ず与えられると知るがいいさ!」

 女神様のドヤ顔、頂きました。

「おっけ! わかった!」

 ここはアマテラを信じよう。

 オレの信仰心がアマテラの力になるんだろうから。

 アマテラが力を増せば、神権の効力が高まる可能性大だし。

 何よりもこの状況で他にできることやいし。

 何よりもオレ、脱DTもなく死にたくないし。

 ………いや待てよ?

 そっか……そうじゃん!

 二十年度のオレを先取りできたってことは……オレ、今回死なないってことだよな?

 よっしゃ!

 希望が見えて来た!





今日もありがとうございました!

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