ミチちゃん
「みんながね、ミチちゃんは頭がおかしいんだって言うんだよ」
晩御飯を食べているとおもむろに女の子が向かいに座る母親を見て首を傾げました。「どうしてかな」
女の子の母親は「先生はなんて言っているの?」と聞きました。
「全部は聞こえなかったんだけど、前にね、ミチちゃんが先生に呼ばれて会議室に行ったの。その前を偶然通ったらちょっとだけ聞いちゃったのよ、『病気かもしれないからお母さんに連絡しましょう』って……みんなと違うことを言ったら病気なの?」
女の子は箸を置いて真っ直ぐ母親を見つめました。
母親は一瞬だけ目を反らし、息を吐いて言いました。
「そうね、おかしなことだわ」
「どうして?」
「まともじゃないからよ」
「どうして?」
「普通じゃないからよ」
「どうして?」
「みんなと違うからよ」
女の子はさっぱりわかりませんでした。俯いてどうやって聞いたら母親が答えをくれるのだろうかと考えましたが何も思い浮かばず、仕方がないので食事を再開しようとしました。
「……お母さん、どうしたの?」
箸を持って顔を上げると、母親がいつの間にか女の子の座る隣から見下ろしていました。
そして、一言告げたのでした。
「病院へ行きましょうね」