戦闘は勢いで
ようやく南側へ到着した。南側は木が生い茂っているみたいだ。マップを開いてみると【朱の森林】と書かれている。クエスト内容的に【サウスバード】と【サマービー】が生息しているらしい。どちらも名前的に飛行するモンスターだろう。今回の目的は、連携の確認とレベル上げ、そしてクエストのクリアである。
「まずはモンスターを見つけないとな」
「そうだね!でも突っ込んでいったら遭遇しそうだけど?」
「それだと連携の確認にならないだろ?1匹でいるやつを狙うんだ」
「了解!それじゃあ………」
そうやって俺たちが作戦会議をしている最中、なにかがフィアに向かって急降下して襲ってきた!ってやばい!?
「よけろ!フィア!!!」
「なに!?うわーっ!」
黒い影が上からフィアに突っ込んでくるが横に飛ぶことで何とかかわせたみたいだ。突っ込んできたのは全身が真っ赤なカラスくらいの大きさの鳥みたいだ。おそらくサウスバードだろう。
「大丈夫か?」
「なんとかね……で?こいつが例のサウスバードかな?」
「おそらくそうだ。よし、まずは俺が後衛でフィアが前衛のパターンでやってみるぞ」
「了解!それじゃあ行くよ!!【スターストライク】」
フィアが高速で相手に突っ込み、翼の付け根を穿つ!!槍系の武器スキル、【スターストライク】だ。フィア曰くMP消費のわりに火力がなく、リキャスト短めのスキルらしい。
サウスバードは……だいぶ弱ってるな。これなら魔法なしでも行けるっ!!
鎖を伸ばして思いっきり鉄球をたたきつけるっ!
よしっ!とりあえず1匹ならこのくらいの連携でもなんとかなるな。
「ナイス先制だったぞ!」
「お兄ちゃんこそナイス攻撃だよ!あの火力なら1人でもやれるんじゃないかな?」
「お前もな。とはいえ相手が常に1匹なわけじゃないし油断せずにいこう」
「了解!そういえば戦果はどうだった?」
そういえばこのゲーム、デフォルトだとパーティーリーダーに戦果がすべて行くんだったな。設定で変えられるとはいえ少し不便だな。今度、運営にお願いしておこう。で、戦果は……
「羽2枚と嘴1個だな」
「なかなかおいしいんじゃない?なんで人気無いんだろう?」
「そりゃあ倒すのが面倒、かつ他のクエストのほうがおいしかったらそっちに流れるだろ?俺達みたいなエンジョイ勢ならともかく」
「それもそうだね。でもせっかくこんないい景色なのにもったいないね」
「そういうもんだ。次行くぞ次」
********
次のターゲットは3匹くらいの群れのサウスバードだ。ちなみに見つけたのはフィアのほうだ。なんでも「羽が落ちてたから上向いたらいた」らしい。
見つけたのが偶然にしろ、ここでやらなくていつやる!とやる気になった俺たちは現在作戦会議中である。
「てことで、今度は俺が疑似タンクを、おまえが遊撃を担当でいいか?」
「問題ないけど……お兄ちゃんにタンクができるの?正直その武器じゃきつくない?」
「きついが今後のことを考えるとやっといて損ないだろ?それに大樹のやつが変わった戦闘スタイルらしくてタンクができないらしいんだ」
「あーね、それならしょうがない……かな?」
「ま、そういうわけだ、やるぞ!」
「おー!」
早速俺が前に出て勢いよくサウスバードにむかって鉄球を打ち付ける。
「「「PIYAUUUUUU」」」
サウスバードに当たらなかったがそれでいい。やつらが俺を警戒しだしたからな!やつらは体勢を立て直すと2匹が突っ込んでくる!
突っ込んでくるのが分かってるなら受けるのはまだ楽だ。2匹の眼前に鉄球を引き戻すっ!
案の定2匹は顔を強打し一瞬の隙ができる。そしてそれを見逃さないのが1人。
「うぉぅりゃあああ!!!【強槍撃】!!」
ナイス!あのタイミングはベストだ。【チャージ】しながらすきをうかがっていたらしい。さぁ、あと1匹。隠れているつもりらしいが、最初から目を離していなければ問題ない。狙うは……
「そこだっ!!!」
「PYAUUUUUUUUUUUUU」
隠れているつもりのサウスバードに全力の叩きつけを放つ!!そいつは驚いたようだったが強烈な一撃のせいで意識を失ったらしい。
あとは消化試合だったので割愛する。
「お疲れ!お兄ちゃん」
「お疲れ。俺タンクの役目果たせてたか?」
「うん!あの動きなら大丈夫でしょ!私はどうだった?」
「完ぺきだったよ。攻撃に関しちゃ2匹ともクリティカルだったからな。あれどうやったんだ?」
「あーあれね!あれはこう、ズバーーっとやって視えたっと思ったらそこに軌道を変えた感じ?」
「すまん……お前に聞いたのが間違いだった……」
さて、3匹の群れとの戦闘も特に問題はなさそうだな。こうなってくるともう1体とも戦ってみt「お兄ちゃん!危ない!」ぅわっ!!いきなり襲ってきたのはいったいどいつだっ!?!
振り向くとそこには地獄というのも生易しい光景が待っていた。
そう、サマービーと思わしき蜂の群れ、およそ20匹がこちらをロックオンしていた。
「な、なんなんだよこれは……」
「どうしようか……お兄ちゃん……」
「とりあえず負けイベでもあがいてみるのはいつものことだよな?」
「……そうだね!ゲームは楽しんだもん勝ちだもんね!」
「よしっ!お前が遊撃で俺が後衛のパターンだ!大技も躊躇なく使わさせてもらうから気をつけろよ!」
「そっちこそ!私の攻撃に見とれて手を止めないでよね!いくよ!」
「おう!」
蜂の大群はまだ襲ってくる気配がない。ならばっ!
「少し準備するから攻撃は少し待て」
「何するかわからないけど必要なんだよね!了解!」
今のうちに、近くの地面に魔法陣を【亀裂槌】で書いておく。描くのは全て【ファイアランス】だ。
「準備はできた!今度こそ行くぞ!」
「OK!」
蜂の群れにフィアが突っ込む。蜂は連携で攻めさせないようでなかなか近づかせてはくれないらしい。
なら俺の出番だ!モーニングスターを勢いよく蜂の群れ、その真ん中に打ち付けるっ!!
蜂2、3匹の体力を4割くらい削ることはできた。でも4割か……2パンできないか……
くっ!こっちに5匹の群れで来たか!なら鉄球を引き抜いて蜂の後ろから殴りつけるっ!からの!【起動・ファイアランス】!!
地面から炎でできた槍が上へ突き抜け、鉄球に吹っ飛ばされた蜂の群れに突き刺さる。蜂は火を消そうとするも4匹が体力のほとんどを持っていかれた。
そして火を消す前に2匹がHPを全損させた。
よしっ!残りは薙ぎ払いっ!からのたたきつけ!……殲滅完了!
あっちもだいぶ削ってくれたしやりますか!あの技を!
「大技をやるから少し下がって!」
「了っ!解っ!!」
了解ももらったしやるぞ!【魔力纏い】でMP10もってけ!
「これで終われ!【フォールメテオ】!!」
纏った魔力により光り輝く鉄球が地上近くに飛んでいた蜂の群れを一匹残らず蹴散らす。
一応前回みたくクレーターを作らない方法も考えてある。地面に着弾する寸前、纏っていた魔力を鎖に移動させ、思いっきり引っ張る方法だ。
上手くいったか?
「なにこれ?!お兄ちゃんこんな奥義隠してたの!?」
「いやステータス見たろ、【フォールメテオ】ってスキルだ、1度使うと1時間は使えなくなるし、盾装備不可のデバフもあるからあながち奥義ってのは間違ってないが……」
「ほえー……すごい……」
やばい。フィアがトリップしてしまった。まぁこんな奥義使ったらそうなるか。ただなんというか、後ろの木が10本近く根元から折れてるのはそういうことなんだろう。かなしい。すごくかなしい。
何とか蜂の群れも退治できたしもう少し狩りを続けますか。
次は23日を予定しています
次回をお楽しみに!