表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/38

 

 「―――――♪」


 窓から夕焼けの光が室内を照らす中、ルナは鼻歌 交じりにリズムよく包丁を動かし沢山ある野菜を切っていく。切り終わると今度は鳥を煮込んで置いた鍋へ入れ煮込み始めた。

 そしてちょうど味を見ようと思った時、玄関の方から扉が開かれる音とドタドタと家を走る音が聞こえ、何かがルナの背後から抱きしめた。

「ただいま! ルナお姉ちゃん」

「お帰りなさい ティアちゃん。もう、土だらけだよ」

「ん・・・・」

 帰ってきて土だらけのティアの顔を布で拭いてあげている。「これ見てみて」拭き終わると後から、黄色と白色の花で造られた花冠をルナに見せる。

「上手く出来ていて綺麗だね」

「うん! 頭に付けてみて」

 花の優しい甘い香りにほのかに太陽の光を吸収した草の匂いが香ってきて、目を瞑るとまるで陽が降りそそぐ中で草むらにいるように感じられた。「ねえ、ねえ頭に付けてみてよ!」とルナにせがむ。言われた通りに頭に花冠をかぶる。

「ルナお姉ちゃん綺麗!」

「そう? ありがとうティアちゃん」

「えへへ」

 ルナがお礼にティアの頭を撫でていると、玄関に同じように土だらけのソルが姿を現し「ティア、家へ入る前に蒸し風呂に入ってからでしょ? おいで」と手招きした。

「えー」

「ほら行っておいで、出たら夕食だから、ね?」

「・・・・わかった」とティアは渋々と頷き、ソルと一緒に苦手な蒸し風呂へ向かった。

 ルナは二人が出てくる前に、料理の仕上げを始めた。

「ソル姉と今日はこんなにいっぱいの馬鈴薯を収穫したの」

 夕食を食べながらティアは笑顔でルナに昼間に起こった出来事を身振り手振りで話す。

「こら、お行儀よく食べなさい」

「ごめんなさい、それでねー」

 テルースの注意にティアは悪びれずころころと笑いながら話しを続ける。「仕方ないはね」といった感じに苦笑いしながら食事を続ける。


 ティアが目を覚ましたのは運び込まれて四日後の事だった。

 今でこそ普通にルナと会話ができているが起きた当初は泣くばかりで、泣き疲れると糸の切れた人形のように気絶し、目を覚ますと再び泣き出す。これを数日繰り返した。会話もままならないので食事をするどころか水すらも口にすることもなかった。

 ヘクターはティアの両親が目の前で殺されるところを見てしまった、とテルースに伝えた。

 当然だがティアの面倒を見ることになったのはルナだ。家に一日中いる上に医学の知識があるから尚更のこと。本当ならテルースが看病をするのがベストだが、診療所や畑仕事をしなければいけない。

 ルナは最初こそ、ティアにどう接すればいいか困惑したがルナは一生懸命看病した。

 そんなルナの献身的な看病の甲斐あってか、水や食事を近づければ口にするようになり会話も少しずつ出来るようになり年を越し、春に入る頃には雪解けのように普通に会話をして動き回れる程に回復した。

 しかしヘクターがいうにはティアはもっと大人びていた、と今のティアを見て困惑していた。

 テルースは両親の死がショックではないかと目星を付けた。何はともあれ、今では血こそ繋がっていないが姉妹のように仲良くなった。

 もちろんソルとも。

 ヘクターはティアの容態が安定したと分かった次の日、手紙と袋を置いて乗ってきた馬と一緒に消えていた。

 手紙には

「しばらくの間ティアの面倒を頼む。来年の冬までには戻る」そう短く書かれていた。さらに袋の中には金貨が五枚も入っていた。当面の生活費のつもりで置いていったらしい。

「ソルとティア、今日は疲れただろうから食器を洗ったら寝なさい。ルナもよ」

「薬の調合はいいのお母さん?」

「最近は患者が少ないから薬には余裕があるから大丈夫よ。

 しっかし、いくら不作で量が少ないと言ってもティアがいなかったら明日じゃあ終わらなかったわね・・・・」

 そう愚痴を言いながらいつもパルテが座っている椅子を見た。

 急遽傭兵の仕事が舞い込み家におらず、ティアが変わりに収穫を手伝っている。

 食事の後は三人で食器を洗い普段よりも早くにベッドに横になる。

 ティアは当たり前のようにルナのベッドへ潜り込んで来た。

 ソルは余程疲れていたのかすぐに小さく寝息をたて夢の世界に行ってしまったが、ティアも同じように疲れているはずなのにも関わらず、ルナに今日あった出来事を話続けた。「さあ、そろそろ寝ようかティアちゃん・・・・」

 ルナもさすがに喋り疲れ寝ようと言った。

「ねえ、ねえお話を聞かせて」

「おはなし・・・、明日じゃダメ?」

「ダメ!」

「それじゃあ短いやつ・・・・・ね」

 眠気と戦いながら出来るだけ短い童話を語り出した。


 むかし むかし大陸の・・・・そう、ちょうど真ん中に一つの小さな国がありました。


 小さな国は雲を貫き天高く聳える山でぐるりと囲まれた、湖の水のように真ん中にあります。

 土地が豊かで作物が沢山収穫できるわけでも、川魚が一日何百匹獲れるわけでも、山の幸が豊富に採れるわけでもありません。

 繁栄しなければ衰退することもない国。

 そんな小さな国には沢山の種族が暮らしていました。

 花びら程しかない小人。

 大木のように大きい巨人。

 全身が毛で耳や尻尾を持つ獣人。

 肌が鱗で長い尻尾を持つドラゴンンのような見た目のリザードマン。

 下半身が魚のような尾ひれで水の中に住む人魚。

 背は小さいけど腕力と体力が誰よりもあるドワーフ。

 誰よりも魔法が得意なエルフ。

 大きさや肌の色や形、住む場所などそれぞれ違いがありました。そんな暮らしでもみんな仲良く笑って暮らしていました。


 しかし、そんな幸福な時間は唐突に終わりを告げました。


 ある日、太陽がいつものように東の山から昇り、西の山へと沈みました。しかし次の日、最初は誰もがまだ外が暗いから夜だ、そう思い家から出よとはしませんでした。

 ですが、いくら経っても外は明るくなりません。

 おかしいと思った人々はランプを片手にドアを開け、暗い外へと出ました。すると太陽どころか雲がかかっている訳でもないのに月や星すらも見えず、誰も見たことのない深い夜空でした。

 一人のエルフが自分の小麦畑が心配になり見に行くと、昨日まで金色に輝いていた小麦は黒い、そう炭のようになっていて、他の畑も全て炭と化していました。

 畑だけはなく森や川、湖でも同じようなことが起こりました。

 木が枯れはて生っていた果実は黒い塊に。

 人魚たちには害はありませんでしたが川や湖にいた魚は地上と同じように水の底に黒い塊となって沈んでいました。

 言い伝えや経験、ありとあらゆる魔法を使ってもなぜ太陽が昇らないのか、なぜ畑や木の実、魚は炭になってしまったのかわかりません。

 何日も続き、徐々に食べ物も減っていき人々は焦ります。

 そんな ある日、山向こうの空が明るくなりました。

同時に、これまで何人たりとも生物を寄せ付けなかった山が突如として、轟音と共に崩れ去ります。

人々は生まれ育った土地を捨て、外の世界へ出て行きました。

 外の世界はこれまで自分たちが住んでいた場所がちっぽけに感じる世界が広がっていました。

 永遠と続く大地。

 永遠と続く海。

 そこから採れる食べきれない程に採れる山や海の幸。さらに家畜も加わり人々の生活は豊かになりました。

 巨人と小人が山とは違い横に木が生い茂る森を切り開き住む土地を作りました。

 ドワーフやエルフが伐採した木材で家を作り土地を耕し作物を育てました。

 獣人やリザードマン、人魚が家畜の肉や海魚を焼くだけではなく様々な料理を作りました。




「こうして外の世界へ出てきた小さな国の住人は、巨大で豊かな国を再建しました。めでたし、めでたし」

 語り終えたルナはすぐ隣のティアを見ると、小さな寝息を立てて眠っていた。ルナも目を瞑るとすぐに夢の世界に向かった。


 縦読み用とタイトルに入れながら読むと読みずらい・・・・すみません。PDF以外にも読む方法ってあるのかな? ずっと昔にはスクロールで見れた気がするけど。横棒とか『』はソースからいじらなきゃいけないのか。全くわからん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ