「まくあいのこと。」について
加瀬優妃と申します。
旅人達のアレコレ~digression(よもやま話)~にお越し下さり、ありがとうございます。
今回の内容は……
「まくあいのこと。」について
でございます。
①この話の存在意義
「還る、トコロ」を書き終えて……水那が復活すると怒涛のように話が進むので、もう個々の事情にまではつっこめないだろうなぁ、と思いました。
せいぜい朝日とソータだけだろう……と。
そこで、水那が復活するまでの四年は
・トーマとシィナについて完結させる
・最終作に向けた伏線をつくる
・夜斗の心情に触れる
・暁とシャロットが思春期に入るので、その成長を追う
という4つの目的を掲げ、これらを組み合わせたお話――群像劇にしようと思いました。
ですから、この話を作る時は最終作「天上の彼方」の内容も合わせて作り、どのエピソードを前に持ってくるかを考えました。
そうして、また例によって年表の作成です。Nも言うように、1ミリも話は進みませんから、読者の方々が飽き飽きしなかっただろうかと……。
それがちょっと心配です。
②トーマとシィナについて
二人を取り巻く状況や本人達の性格を考えると、自ら動く可能性は殆どなかったので、シャロットに頑張ってもらった感じですね。
トーマはあったかい人ではありますが、動じない性格なので感情のムラがない(ヤキモチを焼くとか、会いたがるとかそういうの)ですから、普通の女の子だと「この人は私のことちゃんと好きなのかしら……」と不安になってしまうかもしれないです。
でも、その点シィナはかなり「押せ押せ」タイプなので(良く言えば真っ直ぐで一途、悪く言えば相手の事情はガン無視)あんまり気にしなさそうですよね。
また、シィナはやはりお姫様なので、普通の男の人だと振り回されて疲れてしまうかもしれませんが、トーマは細かいことはあまり気にしないし、駄目なときは駄目とちゃんと叱れる人なので、実はこの二人ってかなりいい組み合わせなのでは? と思っています。
③夜斗のこと
登場場面も多く、かなりの重要人物なのですが、彼が何を考えて動いていたのかはこれまであまり語ってきませんでした。
夜斗目線の話は今までもありましたが、彼の役目はテスラ側の説明とか朝日不在の場合の話の進行役で、彼自身の心情を吐露する場面は殆どないんですね。
「想い紡ぐ旅人」で朝日が倒れたあと、ユウと対峙して怒鳴りつけるシーンがあって……かろうじてそこぐらいなのですが、それも心情をぶちまけた、というよりは、朝日のために言ってやった、という趣旨の方が強いんです。
だから私も改めて、彼はどういう風に育ってどういう性格なのか、ということを深く考えてみました。
今まで漠然と捉えていた彼がかなりリアルになった気がして、結構、満足しています。
④暁とシャロットのこと
せっかく友達になったのでどうにか交流させたいな、と私も作中の朝日と同じように考えました。
廻龍の設定を決めた時もそうですが、もともとがすべてを決めて始めたシリーズではないので「さてどうすっかな~」みたいな局面はかなり多かったです。
今揃っているネタから、ご都合主義になることなく自然な流れでどうにかしなければいけません。
……「想い紡ぐ旅人」「あの夏の日に」は絶対に変えたくないし。
そんな中、「手紙」と暁の「掘削無限ループ」を思いついたときは、我ながら「おお!」と思いました。
さて、二人もいよいよ思春期を迎え……いつまでも子供ではいられない、ということを自覚し始めました。「大人になる」ということをどう捉えてどう動くかは……彼ら次第ですね。
⑤伏線のこと
ユウの寿命のこと、ヨハネ、ドゥンケのくだりがこれに該当しますね。
「想い紡ぐ旅人」で残された大量のディゲのフェルをどう利用するかについては、どこかで絶対に書こうと思っていました。
今回ちゃんと使用できてよかったです。
ヨハネは……前々作「異国六景」の「暁2013」が初登場ですが、このときから「もし誰かを敵側に寝返らせるとしたらこいつにしよう」と決めていました。
今回の話は、その伏線です(夜斗不在時のエルトラの混乱の様子も書きたかった)。
……なのに、Nは「まくあいのこと。」を読んだあと、「ひょっとして夜斗が闇に囚われてどうにかなるの?」と言ったので、ぶっ飛んでしまいました。
夜斗は、もし人気投票をしたとしたら必ず上位にくるキャラだと思っているので、絶対にそんなことはしません。
最後まで朝日の味方です。
……でも、Nがそう言ったということはヨハネのことは気付かれていない訳で、成功……と言えるのかな?
さて……ドゥンケですね。「天上の彼方」の流れを完全に決める過程で生まれたキャラです。
話に関わる重要人物の中で一番最後の登場となった彼ですが、それなりに存在感が出せていればいいのですが……。
そして……着々を準備を進め、いざ最終作「天上の彼方」へ……!
でも「次で最後か」というちょっぴり淋しい気持ちもありましたけどね……。
閲覧いただき、ありがとうございます。