「異国六景」について
加瀬優妃と申します。
旅人達のアレコレ~digression(よもやま話)~にお越し下さり、ありがとうございます。
今回の内容は……
「異国六景」について
でございます。
①短編集にした理由
三つの作品をまとめるためには、何か事件が起こらなければ駄目で、それは所在が判明している三種の神器の二つ目、「神剣」だろう、というのは前作のラストの時点で決めていました。
ただ、だからといって急にみんなが何の理由もなく集まるのは変ですよね。
ソータとトーマはウルスラに行く理由がありますが、朝日にはない。
Nも言っていましたが、「想い紡ぐ旅人」と「あの夏の日に」&「漆黒の昔方」の時系列はどうなっているのか、まだきちんと伝えられていない訳です。
ですので、まずここを繋ぐ話を前段階として入れないと駄目だな、と思いました。
そこで、各作品から代表を出した、短編集にすることにした訳です。
「想い紡ぐ旅人」……朝日・暁
「あの夏の日に」……シャロット・ユズ
「漆黒の昔方」……ネイア・ソータ・ケーゴ
②「想い紡ぐ旅人」との関係
何となく、ユウが目覚めるのに最低十年は必要だよな、と考えていました。
身体の復元が2、3年で済むとはとても思えなかったし、暁がある程度の年齢になってないと書けないな、と思ったからです。(小さい子は無理~)
そこでそれを基準にし、逆算して「異国六景」での暁は小学4年生・9歳、ということになりました。
シャロットと同い年になったのは偶然だったんですけど、ちょうどよかったと思います。
③短編集を書くにあたって
「あの夏の日に」で神剣に封じられた闇と、「漆黒の昔方」で悩ませているジャスラの闇は、似て非なるものである、というのは自分で読み返して感じた事でした。
ですので、まずこの闇についての設定、およびウルスラの歴史をまず書き出しました。
これはかなり長く、A4用紙4枚ほどになりました。
ここでようやく、デュークについての設定が決まりました。
それについてきちんと語られるのは「還る、トコロ」(そしてデュークの存在が明らかになるのは最終作「天上の彼方」)なんですが、ここで決めておかないと前フリの話が書けないですしね。
合わせて、テスラに眠る闇についても触れておこう、と思いました。
「想い紡ぐ旅人」を書いていた当初、ザイゼルがなぜエルトラとの戦争に至ったか、というのは「フェルティガエに対する不満」「エルトラに反旗を翻すだけのモノが東の大地にはあった」ということは決めてありました。……作品中では書かれていませんが。
なぜ書かなかったかというと、戦争が長引いて代が変わった今となっては「戦争を終わらせる」ことが重要であり、「なぜ戦争が起こったか」について考える余裕は、エルトラにはなかったからです。
④朝日2004
テスラにも闇が存在すること、朝日がかなりチートな存在であること、および暁の重要性などを書くことにしました。
つまり、このシリーズの最後に向かうために必要な情報を出した感じです。(問題提起というか……)
⑤ネイア2008
ずっと見守ってきたネイアの想いを書いてみました。フレイヤ女王、イファルナ女王と比較すると、ネイアはソータと水那にかなり親身になって接しています。その理由を書きたかったのです。
「知の女神テスラ」「美の女神ウルスラ」に対し「慈の女神ジャスラ」の末裔たる彼女に一度焦点を当てたかった、というのもありますね。
⑥シャロット2013
これは勿論、次作「還る、トコロ」の前フリです。
ウルスラ組の中で一番書きやすいのがシャロットですね。
私はやっぱり、バリバリ頑張る猪突猛進型の女の子が好きなようです。
⑦暁2013
成長した暁をどういう性格にするかはあんまり決めていなかったんですが、「模倣」という能力から、とても器用な子にしようとは思っていました(不器用な朝日に対し、ユウは器用にこなすタイプだったので)。
そうして思いつくまま書き始めた「暁2013」で、あんな感じになったと……。
つまり、書いてみて初めて性格が固まったキャラです。
「フェルティガエはそうでない人との判別がつく」というのは、「漆黒の昔方」でも水那がレッカに気づくシーンがあるように、ある程度は触れていました。
ただし、これは本人および相手の力量にもよりますがね。
本人に力量がない場合、および相手が抑えようとしている場合は気付かないです。
ですから、「想い紡ぐ旅人」でユウが夜斗と理央に気づかなかったのは、夜斗が巧妙に隠していたことと、ユウはヤジュ(=ヒール)以外の人間と接したことがなく、フェルティガエの性質についても詳しくはなかったため、その辺の違いまではわからなかったからです。
……さて、内容についてですが、ここでは暁がフェルティガエとして相当飛び抜けていること、そして夜斗にかなり懐いているということを書きました。
生意気なことばかり言うキャラになったので、ちょっと可愛さを見せたかったんですね。
暁は今後の作品で出番も多く、かなり重要な位置にいます。
読者の方(この時点ではNしかいませんが)に応援してもらえるキャラになってほしかったので、私が応援したくなるキャラにした、という訳です。
ここで押さえたかったことは、朝日と暁のフィラでの位置と、次元の穴の存在、および掘削というフェルティガの存在です。
次作「還る、トコロ」でソータがミュービュリに行くためには次元の穴が必要だったので、テスラにもあるよ、というのを示したかったんですね。
それと、トーマの能力は掘削にしよう、と既に決めていたので、その紹介も兼ねてのことでした。
⑧ケーゴとユズル2013-2014
じいちゃん(=ケーゴ)の想い、トーマのその後、そして三作品を結び付ける話、として位置づけました。
じいちゃんは「あの夏の日に」では話題に上っただけ、実際に登場したのは「漆黒の昔方」だけなんですが、赤ん坊のトーマを連れて帰った後、どんな想いで過ごしていたかを書きたかったのです。
ソータと同じく、じいちゃんの想いが報われる日が近いことを示唆したかった、というのもあります。
次作で朝日とソータを出会わせる、ということは決めていたので、ここで朝日とじいちゃんを繋ぐ必要があったのです。
後半はユズ視点ですが、ここではすべてを知るユズが記憶を失ったトーマを見守る様子を書きました。
「あの夏の日に」を書いた時点ではトーマは普通の人間だったのですが、「漆黒の昔方」でヒコヤ(=ソータ)とフェルティガエ(=水那)の子供、ということになり、またパラリュスで神器にも関わっている以上、全然普通ではないんですね。
ですから、「あの夏の日に」の事件でフェルティガの干渉を強く受けたことで普通ではなくなっていく様子を、ユズの視点から書きました。
⑨ソータ2013-2014
「少女の味方」のエピローグから直接繋がる話です。前作のエピローグの続きから書く、ということは決めていました。(そのための宣伝ですから……(^^;))
今回一番書きたかったのは、これですね。
「あの夏の日に」で剣から聞こえてきた呪文は、実はソータだった。両親は死んでいると思っているトーマだけど、実はその両親がトーマを助けてくれた。……これが私的にはツボでした。
完全に後付けですが、実はこれも、後で加えた部分ではなく「あの夏の日に」に元からあった描写です。
トーマが剣を支えきれずに苦しんでいると、剣が自ら唸り、光を放ち、闇を封じ込めた……とあったので、「使えるな」と思い今回こんな形で利用しました。これはもう、続きを書くべくして書いてるんだなぁ、と一人で勝手に納得していました。(まぁ、要は思い込み)
さて、ソータはどうやってウルスラに行けばいいんかね、と作中のネイアと同じく私も考え込みました。
ここで思いついたのが「想い紡ぐ旅人」で登場していた「飛龍」ですね。それと、亡くなった人を海に流すという儀式(「想い紡ぐ旅人」でのヒール、「少女の味方」でのベラ)。
ここから「飛龍」と「廻龍」の設定を作りました。
続編を書くからと言って、独立した話「想い紡ぐ旅人」を大幅に変えることはしたくない。だけどまるで最初から決めてあったかのような自然な伏線にしたい。
……いやはや、よくわからない自分の意地が炸裂しています。
さて、それはさておき……飛龍と廻龍の設定は、私としては会心の出来です。
だってこれが、最後までずっと使えることになりますからね(自画自賛)。
あと、ずっと独りで旅をしていたソータに、旅のお供をつけてあげたかった、というのもあります。
それに、ソータはとにかく素直じゃないので、子供のように純真で素直なコに癒しとして傍にいてほしかったのです。
――さぁ、これですべての準備は整ったぞ。いよいよだー!
と意気込んで、私は次作「還る、トコロ」に向かうのでした。(笑)
閲覧いただき、ありがとうございます。