「少女の味方」について
加瀬優妃と申します。
旅人達のアレコレ~digression(よもやま話)~にお越し下さり、ありがとうございます。
今回の内容は……
「少女の味方」について
でございます。
①アズマとシズルのこと
続きを書くぞー、と決めたものの、どうするかは全然決まっていませんでした。
例の殴り書きメモを見ると、「少女の味方」のネタよりも先に、ウルスラの国の様子や剣のことが書かれているので、「還る、トコロ」にあたる話を書くつもりでいたのかもしれません。
そんな時、Nが妙にアズマとシズルのことを気にしていたので、彼女たちがどうしていたのか、という「漆黒の昔方の逆サイド」から考えることになりました。
元々、アズマとシズルはカガリが死んだシーンで終わりだったのですが、Nが「あの二人ってあの後どうなった?」と聞くので、ソータがヤハトラに戻ってきたときに同じようにネイアに聞く、というシーンを追加しました。
……それで満足するかと思いきや、今度は「何で隠れてたの?」という質問……。
でもまぁ、「漆黒の昔方」ではラティブには全然行かなかったので、続編の舞台としてはちょうどいいかもしれない、と思い、双子の生い立ちを考えることになりました。
②7年後にしたこと
続きですし、トーマの父親ということも判明したので、あっちの話とリンクさせよう、という目的がありました。
トーマがユズと出会ったのは8歳の冬なのですが、トーマは1年前の時間軸に戻っているので、7年後です。
前作の最後で「ジャスラの涙の雫を集める」という目的以外に「三種の神器を集める」「浄化者を探す」というのも目的に掲げていたので、ここで1人目の浄化者を見つけた話にしよう、と決めました。
ずっと水那に会えていないソータに、ちょっとでもいいから会わせてあげたかったのです。
そうすると、「浄化者」の定義が必要になります。前三作で「浄化者」と言えるのは暁とシャロットと水那です。
暁と水那はフィラの人間(水那についてはこの時点では明らかにしていませんが、設定的には確定していました)なので女神テスラとヒコヤの子孫。シャロットはウルスラの女王の一族なので女神ウルスラの末裔であることは確定しています。
そしてウルスラの女王一族はテスラやジャスラと違い、瞳の色もさまざま、能力もさまざまな人間がいて、むしろフィラに近い……。
そう考えて、ウルスラの女王の血族にはミュービュリ(=ヒコヤ)の血が混じっている、という設定にしました(これが判明するのはもっと後の作品になりますが)。
ジャスラでその血を持つ人間がいるとしたら……ヤハトラの巫女とヒコヤの関係者でなければならない。
ネイアは前作で「そんな人間はおらん」と言い切っているので、ネイアも知らない昔に何かあった、ということになります。
この条件から、ヤハトラの巫女の妹とその娘の話、そして9代目ヒコヤとの関係が生まれました。そして、その子孫とラティブの領主の関係、その頃のソータはどうしていたか、などを詰めていきました。
この辺のくだりは自分の中でかなりややこしかったので、簡単なあらすじみたいなものを先に書きました。(今はもう消去してしまったらしく、そのメモは見つかりませんでしたが)
③レジェルのこと
今までは、割とみんなソータに快く協力してくれる人達ばっかりだったので、ちょっとソータに反抗する人も欲しいな、ということで、この頑固で生真面目なレジェルというキャラができました。
レジェルは浄化と幻覚の能力の持ち主です。
この「少女の味方」では、ソータがどれだけ水那を欲しているか、そのソータの切なさみたいなものを端々に出したかったので、この能力になりました。
④タイトルについて
「漆黒の昔方」というタイトルを決める際、これは時間軸的に前二作よりかなり前、ということは決まっていました(トーマの父親が主役なわけだから)。
なので、昔のこと、昔語り、みたいな意味の違う言葉はないかと探し、見つけたのが「昔方」という単語です。
そしてこの「方」という字は「行方」「彼方」「貴方」「味方」「夕方」など読みが違うかなりの単語があったので、ソータ関連の話はこの「方」をつけることにしました(これは今後も踏襲することになる)。
「少女の味方」の「少女」はレジェルでもあり、水那でもありますから、いずれにしても「少女の味方」はソータを指します。
⑤トーマとのこと
この時間軸――つまり、トーマとユズが出会った年に合わせたのは、勿論、ユズの存在をネイアとソータに知ってもらうためです。
「あの夏の日に」の中で二人の出会いのシーンを書いた時は、全然考えてもいなかったことですが、続きを書くと決めた後、前二作を読み返して「使える」と思いました。
続きを書くことになって、「想い紡ぐ旅人」「あの夏の日に」も少々いじりましたが、話や設定を変えることは全くしませんでした。
何の意図もなく、独立した話として書いたこの二作品は、その時の気持ちのまま大事にして、曲げたくなかったからです。
それに、後でいろいろ書き足した場合、「独立して読める」という整合性がとれなくなる可能性もありますしね。
ですので、中身はそのままの、当時は何も考えず書いていたこの二作品の文章中に、後の伏線に使えるものはないか、かなり必死に読み返しました。
それにしても……シィナもずっとトーマの姿を見ていたというし、ソータやネイアもちょこちょこトーマの様子を見ていた訳ですから……トーマはプライバシーも何もあったもんじゃないですね。
……ま、後にそれを知っても、トーマはそんなに気にしている様子ではなかったですけど。
⑥エピローグのこと
ソータが水那に会いたがっている、その切なさを作中で出していたので、最後はちょっと報われるんだよ、というのを見せたいと思い、このエピローグになりました。
ですから、エピローグというよりは次の物語の宣伝みたいになってしまいましたけど……でも、続きを書くことは確定してるんで、いいですよね?(^^;)
全8作の中で一番短い話ですが、「ソータとトーマ・ユズを結び付ける」「浄化者レジェルの登場」など、その後の展開の基礎工事をした感じだな、と思っています。
個人的には、ソータが「攻略本」と言っていた「旅の記録」をアイテムとして使えたのが嬉しいです。
閲覧いただき、ありがとうございます。