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中等部へようこそ

誰しも小さいときは何かに憧れるものだ。

男の子ならヒーローになりたい、女の子なら素敵なお嫁さんになりたい、他にも沢山あるだろう。

私もそうだった。

つい1年前までは…

私はベットから起きて鏡をみる。

髪は少し長めのブラックブルー、瞳の色はそれとは違い少し明るいイメージの茶色だ。

「……」

自分を見つめ返してくる鏡の中の自分。

なのに最近は自分とは思えなくなってきた。

「…変な私」

そんな事を言って私、神野かみの 菖蒲あやめは学校の準備をする。

私の通う学校はアロマーズ学校。

初等部、中等部、高等部、そして珍しい大等部まであるのだ。

この学校が教えていること、それは簡単に言えば戦う技術だ。

一人一人に存在する能力。

制御をできるようにすることと、危険性のある能力者を監視する意味もある。

ステータス。

おもに運動性、魔力性などを計り、個人ステータスを数値化する。

しかしまたこのステータスにも難しいところがある。

まれに個人のステータスは低いのにスペックが高い人がいる。

これはその人の力ではなく体に宿しているものにある。

例えば精霊。

精霊なんて星の数ほどいると言われている。

だが、精霊に好かれる人間なんてそうそういない。

「精霊か…」

そんな事をぼやいて家を後にする。


アロマーズ学校は変わった学校だ。

初等部は12歳までで終わるのだが中等部からはその限りではない。

なんせ中等部でも凄い年上の人もいるからだ。

どのクラスになるかは年に3回ある実技大会の成績で決まる。

初等部は本当に基礎を学ぶだけだ。

そしてこの学校では…

「あっちで高等部二人が模擬バトルしてるってよ!」

「見に行こうぜ!!」

こんなのが当たり前だ。

もちろん私も見に行く。

一人は片手剣…ショートタイプを持っている。

もう一人は…ハルバードだ。

「やれやれー!」

他人が戦っているところ、楽しむだけの人もいるがこれはその人の戦い方を学ぶチャンス…と思っていたのだが、

「人が多すぎて見えないよー」

高等部の戦闘だけあって人が集っている。

諦めて菖蒲はその場を後にした。


「では本日から転入してきた新人生を紹介する」

クラスの前に何人かたち自己紹介をしていく。

そして私の番が来た。

「神野 菖蒲12歳。初等部上がりの新入生です。」

軽く挨拶をしたあとに私は普通ならしないことをあえてしてみせた。

「ステータスは運動性Aランク、魔力性は適正無しのFランク、武器は主にダガーを使います」

教室がざわめいた。

自分のステータスを公開するのは戦闘にあたって自殺行為、そして使う武器まで明かしたのだ。戦闘になれば対策をされるだろう。

「あと私、戦闘よりも武器製作の方に力をいれたいと思っています」

武器製作、ここの学校…だけでなくこの世界では武器はランクによって大幅に強くなる。

NノーマルHNハイノーマルRレアSRスーパーレアURウルトラレアに分かれる。

もちろん売店でも武器は売っている…がレア度が高い武器なんて滅多に入らない。

入ったところで高くて手が出せない例が多い。

定期的にやっている大会には報酬がでるのだが勝てる人なんて一握り、ましてはここは倍率が高い学校。

人数も多いのだ。

そんな賭けにでるなら製作プレイヤーメイドの方が確率があるのだが…これでも滅多に作れないのだ。

ある程度のスキルがあっても運がどうしても絡み付く。

だから鍛冶をする人など少なかったのだ。

「以後、お見知りおきを」

そう言って私の自己紹介は終わった。


「ねぇ、僕の武器を作ってよ」

そう話しかけてきたのは同じ初等部上がりの新入生だった。

「僕も初等部上がりでさー、武器なんてNしかないんだよー」

よくあることだ。

初等部上がりは売店のHNでも買うのが厳しい。

しかも売店のものはステータスが高くても付属効果が無いのだ。

「…で私に安い値段で交渉しに来たと」

「ま…そんなところだね」

中等部でもっていてもRが限界…SRを持っている高等部も少ないだろう。

大等部はSRがゴロゴロいるらしいが…

「いいよ、ご希望は?」

「片手剣ショート、細身で頼むよ」

「…ん、レア度は?」

相手は驚く。

「君、初等部上がりでしょ?作れたとしてもHN、運が良くてもRだけど…Rがでたら君が使うでしょ?」

そう、普通ならそうする。

でも私は違った。

インゴットのストックはあるし、それに…

「私はインゴット無駄にしないから」

そう言って私は教室を後にして家に帰った。


「さて…」

これから武器の製作に取りかかるわけだが…

こんな能力知られるわけにはいかない、知られたら平穏…とは言えないが目立ってしまうから。

「…いくよ!!」

インゴットを目の前に置き、手をかざす。

そして………


武器製作ウェポンメイク!!SR!!」


こうして能力を使うことで…インゴットはハンマーで長い時間叩かなくても一言言うだけで…作れてしまう。

そして刀身が少し赤みを帯びたショートブレードができた。

「剣名は…お客さんに任せるとしよう」

そう…これが私の能力…じゃないから困るのだ。

武器製作ウェポンメイクはあくまで能力の使い方にすぎない。

「嫌になるな…最強の能力って…」

ある人に言われた。

その力そのものを乱用するなと。

だから私はこの能力を分割使用しているのだ。

『もったいないよね…』

「勝手に出てこないで」

『あー、怖い怖い。でもどうして知らない子にSRなんて渡そうと思ったの?それに菖蒲、付属効果もいじったでしょ?芸が細かいねー。僕の力をそこまで使えるんだから』

「あんたが勝手に私の中に入ってきたんでしょ?まったく…入ってきたのが精霊だったらまだ可愛かったのに」

『失礼な、僕をあんなのと一緒にしないでよ。明らかに僕の能力の方が優秀でしょ?』

「優秀過ぎるのも傷だよ、この前なんて制御できなくて…」


「『一人…消しちゃったもんね』」


『でもちゃんと戻したじゃないか』

「私の記憶にはしっかりと刻まれたけどね」

…そう私の中には怪物、いや怪物よりも恐ろしいものが住んでいる。

こいつにかかれば大抵の事は出来てしまう。

だから私は力を使うのは小さいことにしたのだ。


次の日、私は例の子に武器を渡しに行った。

「はい…これ」

と彼に渡す。

「ありがとう!さて、ステータスは…あ!!」

一瞬で固まった。

「たまたまできたし…依頼は依頼だからね、それで料金だけど…おーい。戻ってきてー」

武器を持ったまま固まってしまっている。

「ほら!!」

頭を叩く。

「あいた!」

「依頼の報酬…」

「無理無理無理!!SRの武器なんて払えないよ!!」

と大声で叫ぶ。

…となると必然的にこうなる。

「え…SR!?」

「何かの間違いだろ!?」

「見せて見せて!!」

…知ってた、こうなることは何となく予想してた。

『ざまーみろ』

うるさいな。

さよなら私の平穏な生活。

「凄いなー!!ほんとにSRだ!」

「神野さん、私にも作って!」

「俺が先だ!!」

「私よ!!」

「あー、ごめん皆」

と私。

「そんなにいつも作れる訳じゃないし…それに私、気分で作るから次いつ作るか分からないし…次の作製の依頼はまた受けるから…予約1人までならだいじょう…」

といった瞬間、クラスでジャンケン大会が始まった。

こうして私はクラスの人達と友達ではなく敵でもなく、店主とお客さんという関係になってしまった。




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