バレンタインSS(のつもり)
皆さん、バレンタインが始まりましたね。終わりまであと数時間。まだ大丈夫です希望をもちましょう
「あの…先輩、これ…」
ある日のお昼休み。俺は後輩の女子から人気のない3階と4階の踊り場に呼び出されていた。そして今にいたる。状況説明とかだるいんで説明はこれでOKだね。でだ。
「うん」
「このチョコを!」
そういってその女の子は俺に懐から…じゃなくて、普通にポケットからかわいらしい包装がされた物体を取り出した。まあ、普通に考えてチョコだろう。
「うん…………
………で、誰に渡すんだい?」
「誘先輩に渡してくれませ…って、え?」
「え?」
俺の反応に驚いているみたいだ。なんだ?俺が姉妹とか以外の女子からチョコ貰えるとかいう幻想抱いてるとでも思ってたのかな?
「あ、はい。誘先輩に渡してくれませんか?この手紙もついでにお願いします」
「わかった。リン酸にばれたら怒られるのは俺なんだけどね…あ、名前教えて貰っていいかな?ついでに誘との関係も。下の名前で呼ぶって結構親しいんだよね?」
「え、あ、はい。1年9組、小石紫暗です。誘先輩には部活でお世話にってます」
「わかった。じゃあ渡してくるよ」
俺はチョコ(らしき包装された物体。ときどきクッキーとか入ってるらしいので一概にチョコと言いきれない)を受け取り、持っていた紙袋に入れる。誘用のはこの赤の袋だったなっと。よし。行くか。
俺は小石さんに別れを告げて誘と章とこうすけと疾風を待たせている場所へ向かう。
「…今年もご飯食べる暇無かったなぁ」
俺は誰にも聞こえないであろう一人言を呟いて、さらに人気のない4階へと向かった。
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コンコン
学校によくあるスライド式のドアを二回ノックする。マナー完璧父上から習ったんだけど、二回ノックするのはトイレにいる相手に対してやる行為だそうだ。なのでリア充=うんこの等式が成り立っている俺には、このドアの先は便器が待ち構えているようなものだ。リア充への怒りと嫉妬でもはや何を言っているのかわからないが、つまりそういうことだ。今なら「ジャッキーってまじナショナルな肌してるよねー」とかよくわからないことをクラスの(ギャルっぽい)女子に言われても「うん。まじでトムの富む十村を弔うよねー」と、かえせるレベルだ。
まあつまり平常運転。
それよか
「お、来たか、しょう。今年も大漁だな」
「おー、兄ちゃんよ。岩魚のチョコある?」
「リンにつけられてないよね?」
「ええ、もちろんよ。じゃあ行きましょうか誘。あ、翔くん、そのチョコ私が預かっておくわね…話しは後でゆっくり聞かせてね」
^^といったかんじで俺から赤い紙袋を引ったくって右手にもち、左手で誘を引きずっていくリン酸。気配に敏感な俺でも気づかなかったぞ、おい。まじで女子ってこYな。
誘とリン酸が付き合いは初めたのってたしか去年の…一年生の終わりらへんだったかな。去年はいなかったのに、よく去年集まったこの場所はわかったなリン酸。あ、俺がつけられてたんだっけか。まあそれはさておき。
「章は?」
「さーねー。章さんのことだから女子撒くのに手間取ってるんじゃない?ほら、なんたって皇子だし」
「そーだろーなー…あーもう、めんどいし直接渡して来るわ。あ、その前に」
とりあえず今いるメンバー(二人だけだけど)に袋の中のチョコを渡す。袋ごと渡すと回収ができなくなるからな。
「じゃあまたあとで持ってくるわ」
おう、という疾風の声を聞いて、俺はきびすを返す。このまま教室にいってもいないかもだから普通に呼び出すか。人気のないところだとまたホモ疑惑がかけられるから、教室に呼び出すかな。
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ぴろりん
お、返信きた。
なになに?
『あと2分でつく。お前もさっさとこい』
うっわあ、だるい。でも言うこときかねえと見える所に傷つけてくるからなあいつら。俺の傷がばれると姉妹ズがうるさいしやめてほしい。ほんと。
まあ、俺はあと1分もかからずにつくんだが。つまり、教室付近まで到着したってこと。
「ミキも章くんにあげるの?」
教室が近くなってきたので人通りも当然ながら多い。そして今日はバレンタイン。こんな会話が聞こえてきてもなんら不自然ではない。ないんだけど…これフラグだよね…
「うん!ランは?」
「私は疾風くんかなー。…でも見つからないんだよねえ…あ、ちょうどいいところに!おーい、マネージャー!これ渡しといてくれない?」
フラグ回収。あー、どっかで恋愛フラグ建たないかな。俺と美少女との。
「あー、うん。富竹さんが疾風で小滝さんが章でいいんだよね?」
「うん!さすがマネージャー、話しが早いね!」
「…?ねえラン、どうして神原くんにチョコ渡すの?マネージャーって?」
うん。本当に、どうして皆さん神原くんにチョコ渡すんだろうね。マネージャーってどーゆーことなんだろーねー。
「ん?ミキの方こそ知らないの?」
知らなくていいから…本当に。まじで。
「章くん、疾風くん、こーすけくん、そして彼女もちの誘くん。我等が学園の14使徒のうち全員と親しく、そして、唯一彼等がバレンタインの日に会うのを許可している男子…それが神原くんなのよ!」
まあかなり誤解な部分もあるんだけどね…俺がそうげんなりした顔で伝えると、富竹さんは意外そうな顔をして答えてくれた。
『この学校には幽霊がいるの…』
と。って、
「唐突になに!?」
「いやなんかさ、チョコを貰えないどころか、チョコを口移ししているカップルを見て、とてつもないマイナスな感情の渦にのみこまれて自殺した少年が居たっていう噂があるんだよ…」
関係ないじゃないか…って、やばい。
「俺急いでるんだった。ごめん、もう行くね。それと、こっちが章で、こっちがこーすけ、こっちが疾風用だよ。他にも渡したい人がいたら今のうちに入れてね」
最後の台詞を周りに呼びかけるように言う。すると周囲の女子達がこっちに気づいて、どんどん紙袋に入れていく。中には『これ、給料ねー。まだまだお仕事あるんでしょ?頑張ってね!』と俺にチョコ(当然義理)をくれる者まで出てくる始末。まじであの4人を始末したいわ。
じゃあ渡しておくねー、と言い、俺は逃げるように去る。まあすぐそこの教室に入って章を待つだけなんだけど。
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素晴らしい時は、やがて、さりゆき…
「これで全部か?」
「あとは響とかが回収してくれるんじゃない?」
章が女子を連れてやってきた。いや。
やせいの アキラが あらわれた!
たたかう ミゲル
紙袋 ▷逃げる
まあ逃げたいのはやまやまなんだけど、めんどくさいからここは紙袋ごと押し付けよう。
「くらえーwwww」
いかにもふざけてますよみたいなかんじで、軽いかんじで押し付ける(紙袋を)。
「じゃあ俺は疾風達のを回収しに戻るから」
「ああ、わかった。それと…」
アキラと一言二言かわして別れる。公の場では俺と章は従兄弟どうし仲良しにしてることにしときたいらしいからな。
「じゃあな。頑張って逃げろよ章」
俺のその言葉を合図にしたかのように、章が動く。と同時に女子も動く。
「待って章くん!」「私の気持ち、受け取ってー!!!!」「私はもうすぐ卒業なんだ!受け取ってくれたっていいじゃないか!」「章先輩これ!」「まってぇー、あきらくぅ~ん、私の気持ち、受け取って~」
なんか最後の人、前の人と台詞は同じなのに、恐怖しか感じないのは何故だろう。性別が男だったからだろうか。いや、たぶん気のせいだろう。よーし、回収作業頑張っちゃうぞー。
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うちの高校は、広い。なんたって生徒900人とちょっとだ。俺だっていまだに行ったことがない特別教室があるレベルに広い。でだ。それだけの生徒がいるってことは、派閥やらなんやらができるのも時間の問題だ。どのイケメンにつくか、とか、どの美少女につくか、とか。そしてその派閥ができている人達の中で、特に大きい勢力達、14人のことを14使徒と言っている。男女別々で、合計28の派閥があるってわけだ。ちなみに俺以外の兄弟皆14使徒に入ってる。寂しい。ちなみに使徒の逆に位置する『6大列強』なんてのもある。あ、俺はそこに所属してないよ?
まあそれはさておこう。もうすぐ2時だ。今からあの4人の回収(実際誘を抜いた3人)は打ち切ろう。次からは14使徒のうちまた別の4人の回収を始める。今日のために用意された連絡網にその事情を通す。俺本当、なんでこんなこと引き受けたんだろう。14使徒全員分のチョコの回収引き受けるとか馬鹿の極みだろ。いくら今日は授業がないとはいえ、これはこれでだるいぞ。
「…くん!前からずっと好きでした!付き合ってください!」
ん?先生達の隠れ家に行こうと思い廊下を移動していると、なんか耳障りなノイズが聞こえてきた。
「ありがとう。その気持ちは嬉しいよ。でも、僕には好きな人がいるんだ。ごめんね。だから、このチョコは受け取れない」
「…いえ、頑張って作ったものですから、せめて気持ちだけは受け取っていただけませんか?」
気持ちを受け取ってって台詞多いなー。はやってるのかなー。あー、まじだるし。だるさレベル4だね。てか男子のこの声絶対あの人だよな。女子は知らん。
「そう…わかった。たしかに受け取ったよ。それと、わるいんだけど、この場所は言わないでくれるかな?あとこれ、スタンプ。使徒探し頑張ってね」
「…うん、ごめんね。ありがとう」
女子は寂しそうにそういうと俺の方向に来た。いや、くんなって。柱の影に隠れる。
タッ……タッ……
うわ、すげえ。あんなに足音立てない走り方とか久しぶりに見たわ。そして、横顔だけ見た結果、かなりの美少女だった。こちらには気づいてないっぽい。セーフ。
「…で、先輩はなんでそこに隠れてるんですか?」
「いやいや、告白シーンに堂々と割り込むとか馬鹿かよ。あとなんで君は教室からでちゃうかなー。もっと隠れてようよ。今年はサービスで、14使徒固まってるじゃん。スタンプコンプも時間の問題だよ、これじゃあ」
「いやー、あれですよ。あそこ狭いんですよ。机の後ろに男子4人ってそうとう退屈ですよ。先輩もやってみればわかりますって」
やったこと、あるぜ?まあ殴られてただけなんだが。
「にしても、この高校、かなりかわってますよねえ。平日なのに授業潰すって。しかも理由がバレンタインだからって…」
そう。この高校は本当にかわっているのだ。まあ理事長が祖父の俺が言えたことじゃないけど。なんか以前、バレンタインに授業を行った結果、好きな人にチョコを渡せなかった、という文句が学校に数百件届いたのだ。怪我人まででたらしいので、『学校にチョコを持ってくるの禁止』という校則が一時的にあったらしいが、待ち伏せされて迷惑、という苦情が20数件学校に届いたらしい。結果的に、うちの高校はバレンタインに授業を潰して、部活もお休みに。隠れている14使徒を探して、それぞれが持っているスタンプを集める、というイベントができた。女子の使徒も隠れているので注意。
「あ、これ、大野くん宛のチョコ。2位は流石に多くて大変だったよ」
「あ、どもっす。じゃあ先輩、ついてきてください。案内しますんで」
俺は返事をして、男子の14使徒で2番目に人気がある大野くんについていく。
「ちなみに、今どれくらいの人に見つかったの?」
「僕は27人ですね。先生達はさっき聞いたとき67人だって言ってました」
結構みつかってるな。
「そういえば先輩。怖くて本人達に聞けなかったんですが、先輩が4人も抜けて大丈夫なんですかね?先日テストあったじゃないですか」
「ん?ああ、たぶん大丈夫だろ。中学生が見学に来てたりしてその案内とかでも忙しいだろうけど、過労死はしないはず」
「…」
ちなみに14使徒は1年生4人、2年生4人、3年生4人、先生2人の構図でできている。男女含めて4人の先生が抜けるわけだ。もともと教師の数が多いから、そこまできつくはならないはず、だと信じたい。
そんな雑談をかわしながら、俺は残りの3人の使徒と合流してチョコを押し付け、残りの4人と二人にチョコを渡しに行った。
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屋上にある隠し部屋にて。
「これでいいすか?」
「おー、ありがとう中西くん。これで男子のスタンプ全制覇だよ」
「…おもったんすけど、俺達にメリットないですよね、このイベント。不公平じゃないっすか?」
「いやいやそんなことないよ。一昨年いなかったからわからないかもしれないけど、カオスだったよ。学校見学に妹ときた日がたまたまバレンタインでさ。うん酷かった。玄関閉鎖されてたからね。人で。中西くんは今年入ってきて丁度よかったと思うよ。今の三年生の先輩とか、去年人間不信と女性嫌いになりかけてたから」
「そんなにっすか…あ、もちろんつけられてないっすよね?」
「うん。俺は唯一の男子の不可侵だからね」
「不可侵?あ、それより先輩、他の使徒への配達は終わったんすか?」
「ああ、うん。今トイレに行ってる金谷くんで最後だよ。じゃあ俺はそろそろ行くから」
「あ、はーい。ばれないでくださいよー」
餅ろん、和歌ってる、と答えて俺は隠し部屋をでる。鍵はこうしてこうしてこう、数字入力してっと。時刻はまだ4時。じゃあ女子の方もまわってきますかね。
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「はい、神原くん、どーぞ」
「どーも先輩。ありがとうございます。じゃあ俺は行くんで。あ、伝えといてほしい人とかいますか?」
「うんうん、もう来てくれたのー。神原くんも帰りは気をつけてね」
「はい。それでは」
俺は女子の使徒7位の超絶美人な狩野先輩と葵ねえ、先生二人がいる地下室の地下室の地下室をでる。ここでるときの隠蔽が本当にめんどいんだよねえ。見つかったのもまだ俺含めて3人だっていうし。ってことはその俺を抜いた2人のうちの誰かが狩野先輩の好きな人?やばいな裏山。朽ちろ。でもこれでスタンプ28個が集まった。こっからは俺も隠れねばな。
ちなみに女子の使徒からは、見つけるとチョコをもらえる仕組みになっている。希望者はチョコ以外にも、労いのことば、ツーショット写真、焼きがしなども。
チョコの運搬とスタンプ集め、女子からの逃走でかなり歩いたのでさすがに疲れた俺は、このまま地下室の地下室の脇部屋に隠れることにした。扉がたしか鋼鉄でできているとかなんとかで、開けるとすっごい音うるさいんだよね。窓はないので明かりをつけて、光が漏れないようにしてっと。
「これでOKかな。…ふぅ。さすがに脚が痛いや」
「大丈夫ですか?兄さん。はい、私が作ったスポーツドリンクです」
「ああ、ありがとう」
俺は返事をして、紙コップを受け取り、そのまま口に…って!
「カレン、なんでいるんだ?」
紙コップを可憐に返す。
「?それはどのような意味でしょうか?」
いかにも『ちょっと何言ってるかわかんないですね』ぜんとして聞いてくる可憐。いやそれ普通立場逆だからね。まあいつものことだしいいかな。
「あー、気にしなくていいよ。なんでこんな地下室にいるのかなーと思って」
「さっき兄さんが来てくれたときからずっと一緒にいましたよ?」
え、まじか。気づかなんだ。
「もちろん狩野先輩や姉さん含める女性陣4人からチョコ貰ってるところも見ましたよ?」
だからなんだというんだ。
「そうか。で、戻らなくていいのか?沙奈ちゃんも心配してるんじゃない?」
「沙奈は先に生徒会室に行くらしいので、丁度そこで別れました。…二人きり、ですね。兄さん」
だからなんだ。
「だから?」
「だから…これ、受け取ってくれませんか?」
そういえば昨日…いや、結構前からなんかいろいろと奮闘してたな。
「誰にあげるんだ?」
おっと、つい癖で聞いてしまった。
「?兄さん以外にあげる気はありませんけど…あ、父さんとこーすけくんにはあげましょうかね」
そ、そうすか。
「つまり家族にあげる義理チョコか」
「いえ?本命も本命ですよ?私は兄さんを愛していますので」
……………なんでだ。本当なんでだ。いつも可憐はこうだ。なぜだかデブ(だが、ブサイクではないと信じる)でそこまで頭もよくない俺にこうやって好意?を寄せて来ている。もはやヤンデレなレベルだ。でもたぶんうっちーの従兄弟ほど病んでないよね。うっちーの従兄弟、まじでやばいからな…あれで鬱じゃないっていうんだから本当人間の精神って不思議だ。って、いつも通り思考が擦り変わったな。あれ、何考えてたっけか。まあいいや。
「兄さん?」
「あ、ごめん、ちょっと話し聞いてなかったわ」
俺がそういうと、可憐はかなり…こう、複雑な表情になる。 不安、驚愕、焦燥、困惑、責任感、恐怖、後悔、不満、無念、軽蔑、嫉妬、罪悪感、殺意(まあ殺意とか知らないけど)、劣等感、恨み、怨み、苦しみ、悲しみ、怒り、諦め、絶望、憎悪、空虚。人間のマイナスな感情を詰め合わせたみたいな、そんな…
ガタンッ!?
「誰かきたのかな?」
ひそひそ声で可憐に話しかける。今の俺は28人全員分のスタンプを持っているので、実質使徒同様に探されたり狙われたりしてもおかしくない。まあそのことが他の人にばれてたらだけど。
「そうみたいですね。私、怖いです」
そういって可憐がくっついてくる。いや、何が怖いんだよ。てか胸当たってるぞ。まあ本人が気にしないならいいんだが。いや、でも俺以外の人とかに普通にやってたらなんかいやだな。てかお前さっきからずっと紙コップ持ったままだよな。そしてそれを俺に飲ませようとさっきからずっと喋りながらなんかやってくる。こぼれてる、こぼれてるから!これ絶対なんか入ってるだろ。あー、まちがえちゃったー、てへぺろ(棒)とか言って紙コップの中のものをぶちまけようかなーと、そろそろ考え始めたころ。
チュドオオオオオオオオオン!!!
「っはぁっはぁ、ハァー…ん!?誰だ!?誰かいるのか!?」「チッ」
なんかすっごい効果音とともに男子が…誘が鋼鉄製の扉を開けて飛び込んできた。そして可憐。今舌打ちしただろ。
「俺だよ。で、誘はなにをしてるんだ?リン酸は?」
「そうか、翔か…ふう。なあ、ここは安全か?」
いやなんだよその台詞。危ないところとか逆にそんなにないだろ。俺がしってるこの学校の危ないところとか、清水先生が実験やってるときの理科室くらいだぞ。
ということを伝える。
「違う、そうじゃない。今さ。凛が暴走しててな。ていうかなんか校内の人がみんな「誘くん、これ飲みますか?」ってて…あ、うん。ありがとう可憐ちゃん。いただくよ」
「それとさっきここにくるとき、凛先輩を見かけましたよ」
「まじで!?まあ二人とも、なんか今校内の様子がおかしいから気をつけてくれ。じゃあの!」
そういうと誘は去っていった。何がしたかったんだあいつ。てか生徒の様子がおかしいっていつものことじゃねえか。まじでなにを言ってるんだ。
「ふふっ」
「?どうしたんだ可憐」
なんか可憐まで急に笑い出したのでそっちの方を向いて尋ねる。てかすっごい上品な笑い方だな。えみと比べたら本当に兄弟かどうか怪しいレベルに上品な笑い方だ。
「ウワアアアアアアアアアアアア!!!!」
これは…誘の声?なんだ?外で何が起こってるんだ?今日はバレンタインイベントのルールで(トイレ以外)鍵を閉めてはいけないので、こう、なんか、不安がある。どうしたのかなーと思い、扉を少しだけ開けて外の様子を見てみる。…あれは、誘?なんでまだこんなところにいるんだ?この地下室の地下室はなんだかよくわからない掃除用らしき道具やよくわからない文化祭の飾り付け用らしい道具、演劇とかで使いそうなよくわからない道具がわんさかとしている、通常の教室くらいある部屋だ。正直言って一人で来るのはかなり勇気がいるだろう。暗いし怖い。俺達がいる地下室の地下室の脇部屋は、17個あるロッカーの真ん中にある3つのロッカーをどかしたらわかる位置に扉があるという、意味不な部屋だ。まじ意味不。なのでこっからだと扉をちょっとあけてもロッカーが邪魔で地下室の地下室内の様子がわからない。てか俺するの忘れてたけど、誘ちゃんと隠蔽しといてくれたんだな。ありがとう、誘。本当にそれしか言う言葉が見つからない。なんか誘が死んだみたいな言い方だが、あながち間違ってもないかも。なんか誘、様子がおかしいぞ。こう、進化する前みたいな。おや…?イザナのようすが…?おめでとう!イザナはイザナは…ん?ちょ、まじでなんか進化したみたいになってるぞ!?そして可憐。まじでそのスポドリ押し付けるのやめてくれ。てかもうお前飲めよ。
「なあ可憐」
「なんですか?兄さん」
誘が進化したのはたぶん、このスポドリ原因だよな。『可憐:作』って言ってたし。ためしに可憐に飲んでもらおう。そのスポドリ、ちょっと口移しでくれないか?と言おうと思ったが、これちょっとまずいよな。と思ったが、たぶん大丈夫だよな。
「なあ可憐、そのスポドリ、ちょっと口移しでくれないか?」
すると、パァッと顔を明るくした可憐が、俺に告げた。
「口移しはキスに入りますよね?」
「あー、入るはいる。だからはやくそれを口に含んでくれ」
可憐が水筒から直で飲む。うわあ、上品な飲み方。おいえみ。お前も見習えよこれ。そして俺にこう。んーっと顔を近づけて来る。ので、顔を少し上にあげ、強引に飲ませる。
「あー、ごめん。飲んじゃったか」
「…」
「…?可憐?」
「兄さん…私にこれを飲ませましたね?ふひ、ふひひひひひひひひひ」
やっべえ、全然上品じゃねえわ。えみ。絶対こんなの見習うなよ。
ってかなんだそのラスボスぜんとした台詞は。
「さっき誘くんが言ってましたよね。校内の様子がおかぢい…と。それは、わわわわわ、私がつくった、たた、お香の力です。そしえ、このスポドリにはわはははわわ、特別濃い濃度で入れた、私作の薬品が…はいっててですね…ぐひ、ぐひひひひ」
うっわあ、ねえわー。スポドリとか上品さのかけらもねえわー。
「効果は…び、や、く!」
は?え?蠅?
「ふっふっふ!アリュコールはいってないけど酔っ払うようにもしましちゃー。うへーん。私は今酔っ払ってまーす」
そこは酔っ払ってないって言うところだろ。
「兄しゃーん。えへへー」
「酔っ払ってたら媚薬意味ないんじゃないか?」
「そーれすねー。あー、わはひなんらか眠くなってきわしひゃー。にいひゃーん、膝枕しれくらはーい。うえまくられもいいれすよ?」
上?ああ、腕か。
「ああ、いいよ。膝だけど」
「あいやひょーごやいやーひゅ。やっはいいーひゃんはやはひーれふねー。わらひのふぁーふとひふをあげららけはあいやす」
「もはや何言ってるかわかんないぞ、妹よ」
まだ2月だから一応寒い。そしてここは地下だ。余計に寒く感じる。
「ここで寝たら風邪ひくぞー」
「いいんれふー。にいひゃんにかんびょーしてもらうんれす。えへへー」
あーこれ、飲ませたらダメなやつだ。そういえば義母…いや、母さんもめったに飲まないけど、酔っ払ったらやばいよな。お父上がいないときだと俺かこーすけにセクハラかましてくるし。
「すー、すー」
「寝たか。おやすみ、可憐」
・・・・・・・・・・・・・・・
「はれ?」
「お、起きたか?」
今は午後5時。5時半がイベントの終わりだから、そろそろ終わりの時間だ。可憐が寝てる間にちょっと地上の様子を見てきたが、かなり阿鼻叫喚だった。
「もうイベントも終わるし、生徒会室に行こう」
「え?あ、はい」
なんか記憶にないって顔してるな。酔っ払うのってそんなにやばいのかな?
そのまま地下室の地下室の地下室にいる年上のお姉さんズの様子を見に行ったがいなかった。たぶんもう行ったんだろう。
そのまま他の使徒達の隠れ家を回りつつ、生徒会室へいく。ちなみに誰もいなかった。
ガララ
木製の扉はやっぱり簡単に開くな。
そして到着と同時に、皆にこう言われた。
「「「「「「あれはなんだ!絶対翔の仕業だろ!」」」」」」
うるさ。うっるっさ。
「俺じゃないよ。俺ならもっと基地なことするし。犯人はヤスだよ」
まあそのあと誤解を解いて、真実を伝える。
これで我が高校名物、『バレンタインの隠恋慕』は終了だ。スタンプを全部集めた人、隠れきった使徒にそれぞれ景品が当たる。ちなみに全部集めたのは案の定、俺を含めた3人だけだった。『探偵』『真犯人』の二つ名をもつ秋沢くん、『ラッキー』『裏山』の二つ名をもつ中武くんが全て集めていた。
帰宅して。
「づーかれーどぅわー」
使徒達への配達とかやるもんじゃねえわ。
「カレンちゃん、もうあんなことしないって誓える?」
「もちのろんです。さすがにやりすぎました(棒)」
「はい、二人とも」
「母さんありがとう」
「ありがとう、お母さん」
「お父上は?」
「さあ?いつも通りチョコでも貰ってるんじゃないの?」
「だねー」
イケメンなパパ上、まじきめえ。俺のクラスにも父のファンがいるんだよな、そういえば。まじきめえ。
「そういえば兄さん。私のチョコってもう食べたんですか?」
「ん?ああ。さっき食べたよ」
「さっきっていつですか?」
「自転車を片付けてすぐだったから、10分くらい前かな」
「あれにも私作のお薬入ってるんですよ」
「え?あれ、そういえばなんか暑い…」
「「「…」」」
「「「二人を取り押さえろー!!」」」
首筋をトン、とされて意識を失う。うっ…こうしてひっでえバレンタインが終わった。晩御飯を食べ損ねた。悔しい。
この小説って更新する度にブックマーク減るんですよね。なぜでしょうか。不思議ですね。それと可憐ちゃんの「私作」は、わたしさく、と読みます。あと、精神破壊の方でキャラ名募集してるので、誰かまじでお願いします。




